第3話
「そうじゃないけど…」
口をモゴモゴさせて答える。
強くもないし、弱くもない。
普通…だと思う。
「順調?」
「へ?」
「矢吹さんと」
私達の会話の中心となっている人物。
矢吹宗甫、28歳。
半年前に課長に昇進した。
その彼とは2年前から付き合っている。
うちの会社は社内恋愛禁止などは全くなく、私達はよく一緒に帰ったりしている。
だから社内では私と矢吹が付き合っていることは知れ渡っている。
まだ入社したばかりの新入社員はどうかわからないけど。
あれから2年。
私と矢吹は特に変化もなく過ごしている。
「順調…って言うのかな」
つい不安が零れてしまう。
でも片思いのときと比べたら、今は十分幸せである。
と、葵と会話をしている内に、取り掛かっていた仕事が終わった。
「よし、終わった」
書類を持ってイスから立ち上がる。
「…はい、その方面でご検討よろしくお願いします」と、電話で話している矢吹の元へ向かう。
そこで電話を切った矢吹へ「課長」と呼ぶ。
私の声で矢吹は目線を上にあげた。
「新商品の広告の件なんですが…」
そう言って出来上がった書類をデスクに置いた。
「いくつか訂正はしてみたんですが…」
矢吹は書類を手にし、「どこだ?」と尋ねる。
「ここに少し一言添えてみたんですけど」
「あぁ」
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