第2話
頭が薄くて、半年前まではよく怒られていた課長は、今はこの部署にいない。
半年前に別の会社へ異動してしまったのだ。
課長がいなくなって嬉しいのか、寂しいのか、どちらとも言える感情だった。
部署内は静かになって、寂しい気持ちが大きいのかもしれない。
「新しい課長ももう見慣れたね」
そう言って葵はチラリと前方のデスクに視線を向けた。
「前の課長には悪いけど、前の課長よりもしっくりとくるよね」
私もそこへ視線を向けた。
入社1年目の女性社員が、課長に淹れたてのコーヒーを渡している。
それを受け取った課長が「ありがとう」と掛けていた眼鏡を少しズラして言うと、その女性社員は頬を赤くして嬉しそうに自分のデスクに戻って行った。
「あの子、絶対狙ってるよ」
その様子を見ていた葵が「てか、今年の新入社員ほとんど課長のこと狙ってんじゃない?」と続けた。
「まさかー」
冗談ぽく笑って返す。
「だってかっこいーじゃん」
葵は昔の呼び方で、「…矢吹さん」と久しぶりに呼んだ。
「私気になってたんだけどさー」
周りにいる人達に聞こえないくらいの声量で、葵は続けた。
「課長…じゃなくて矢吹さん」
ここ最近は課長と呼び慣れているから、つい課長と呼んでしまうらしい。
「2人のときってどんな感じなの?」
「え?別に普通だよ?」
「甘えてきたりしないの?」
「んー」
「え!!甘えてくんの!?」
「や、そーじゃないんだけど…」
「性欲強い?」
「もう!今仕事中!」
とか言いながら私の頬は真っ赤になっていた。
相槌をうちながら葵は「ハハーン。てことは性欲強いんだー」と返した。
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