その後
1
第1話
冨永梨華、現在23歳。
若い女性を中心に売れている化粧品の会社に勤めている。
2年前はあの頭の薄い課長に怒られていたが、今じゃ下の者を叱る立場となった。
苦手だった漢字もどうにか自力で読み書きできるようになった。
「葵、これ終わったらどっか食べに行こうよ」
私は向かいのデスクにいる葵を誘う。
すると葵は「ごめん!」と片手を顔の前に出した。
「今日は彼と会う約束してるんだ」
「最近バタバタしてるね」
「うん…今日は彼の両親と食事なの」
「うわぁ」
「なにその“うわぁ”って」
「嫁と姑が仲悪いってよくある話じゃん」
「向こうのお母さんそんな感じじゃなかったわよ?」
「へぇ」
葵は2か月後ぐらいに、ずっと付き合ってた彼氏と結婚する。
今は両方の親に挨拶や、式場を決めたり、色々と大変そうだ。
「結婚って大変だねー」
ぼんやりと思ったことがつい口から漏れる。
「なに言ってんの」
葵は即座に返した。
「梨華もするでしょ」
「え?」
“何を?”と聞く前に「結婚」と葵が答えた。
「結婚!!?」
半ば叫ぶような勢いで言った。
葵は慌てて「シー…ッ!」と唇の手前に人さし指を突き出した。
周りの人達がジロジロと怪訝そうに見てきたがすぐに自分達の仕事に取り掛かった。
「ったく…課長がいたら確実に怒られてたわよ」
息を吐き、胸を撫で下ろす。
そこでハッと気付き、「あ、もういないんだっけ」と葵は零した。
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