第3話
それから桜來は、
湊の部屋に遊びに来た後は必ず、
中等部のラウンジに寄るようになった。
「ルイルイ、
今日の体育サッカーだったでしょ。」
「あー見えました?笑」
「運動苦手なんだね。」
「はい。全然出来ません笑」
「お友達に囲まれて楽しそうだった。」
「いつも、からかわれてるんですよ!
下手くそ!ちゃんとやれ!って笑」
「ルイルイは、
そういうかっこつけない所が、
かっこいいよね。」
「いや!かっこつけたいですよ!
俺だって!笑」
「私は、どんなルイルイも、
かっこいいと思ってるけど?」
「先輩はまた…そんな恥ずかしいことを。
それより…彼氏さんは?今更だけど、
俺と二人でって、怒らないんですか?」
「彼氏?いないけど。」
「…へっ?じゃあなんで毎回
男子寮にいるんですか?」
「友達に会いに来てるの。
湊って知ってる?」
「はい!湊先輩は有名ですよね。
クラスの女子達からも大人気です!
それに、湊先輩って基本、
来るもの拒まずで、特定の誰かを作らずに、
いつも違う人といますよね?
そこがかっこいい!って、
今時のモテ男像だー!なんて笑
男子からもすごい人気なんですよ!
湊先輩って…えっ、もしかして先輩も…」
「うん。セフレ。」
ボトッ
琉生は、持っていたペットボトルを
床に落としてしまった。
「あっす、すみません!
てか!そんなサラッと…!
俺なんかに話しちゃっていいんですか!?」
「うん。別に隠してない。」
「そ、うなんですねー…
でも…なんか意外ですね!
先輩はなんとなく…そういう感じでは
ないかと、勝手に思ってました!」
「私、今まで彼氏とか、いたことがないの。
だけど仕事上、経験が成長に繋がるなら、
私は、これからも色んなことを経験してみたい。
それに、もともと興味もあったから。
それで湊とは、価値観が合って、
今も続いてるって感じ。
だから好きでもなければ、彼氏でもない。」
「あー…俺にはそういうの
よく分からないですけど…
先輩は、仕事人間なんですね!」
「ルイルイは、彼女はいないの?」
「いませんよ!」
「意外だね。」
「俺、こんなんだからモテないんですよ笑
一緒にいて楽しい友達タイプです!
男としては見られない。ってやつです笑」
「確かに。一緒にいて楽しい。」
「はい笑」
「でも、私にはちゃんと男として見えてるけど?」
サァー…ッ
窓の隙間からふんわりと、風が入りこんでくる。
先輩からはいつも、男物の香水の香りがする。
本当のこの人は…
一体どんな香りがするのだろうか。
所詮俺は、ここでの先輩しか知らない。
【男として見えてるけど】
琉生にとってそれは、
なかなかのパワーワードだった。
「ルイルイ?」
「あっ!すみません!飛んでました!」
「もうこんな時間だね。私も帰るよ。」
「そうですね!ではまた!」
「うん。ばいばい。」
―――――――……
チャリーンー…
廊下の方で何かが落ちるような音が聞こえた。
「あっ先輩!何か落ち…っていないか。
部屋の…鍵?これは届けなきゃダメだよな。
エレベーターはー…先輩が乗ってったから、
階段から追いかけるか。」
・
・
・
エレベーターを降りてすぐ、湊と会った。
「あれ?桜來?なにしてんの?
とっくに帰ったはずだろ?」
「ちょっと喋ってた。」
「へっ?誰と?てかせっかくだから、
泊まっていき~♪戻ろっ♪戻ろっ♪」
抱きついてくる湊。
「今日は帰るよ。てか2回は無理。」
「本当正直だな~笑
じゃあ~おやすみのキッス♪」
「はいはい。おやすみなさい。」
「おやすみ~明日ね~♪」
「…っ」
琉生はとっさに、自販機の横へと隠れた。
タイミング悪く、
一部始終を見てしまったのだ。
「やっぱり本当だったんだ…」
"ズキッ"
琉生は少しだけ胸に違和感を感じた。
「…………ん?
鍵っ…は、寮長に渡せば大丈夫だよな。」
琉生は、桜來を追いかけるのをやめ、
そのまま寮長室へと向かった。
・
・
・
「桜來ちゃん~!鍵~!」
「寮長さん。鍵?
ありがとうございます。」
「中等部の子が届けてくれたよ!」
「中等部?あ。ルイルイ」
「ルイルイ?それって3年の北瀬琉生?」
「はい。」
「じゃあその、
ルイルイが届けてくれたんだよ!
てか琉生と桜來ちゃんが知り合いだなんて。
ルイルイか~いいあだ名だね~
流行りそう~!」
「寮長さんダメですよ。ルイルイは。
そう呼んでいいのは、私だけなので。
鍵、ありがとうございました。
おやすみなさい。」
「はい〜おやすみ〜!
…って、あの桜來ちゃんが?私だけ…って?」
・
・
・
・
部屋に戻った桜來。
「ルイルイが今日歌ってた歌なんだろ。
てかお礼…」
と、携帯に手をかけるも、
「…連絡先知らなかった。
ルイルイ次いつ会えるかな。あ、そうだ」
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