第4話
昼休み~中等部~
ざわざわざわざわ
「きゃー!桜來ちゃんだー!」
「綺麗!やばいっ!」
「細っ!顔小さっ!」
「えっ!?待って!!こっちくる!!」
「あの、ル…北瀬琉生くん。
ってどこにいるか知ってる?」
「えっ!?琉生ですか?!
琉生なら教室にいます!案内します!」
「ありがとう。」
"3ーD"
クラスの後ろの方に、
やたらと、人だかりが見える。
「あーっと…いた!琉生ー!!!
ちょっと!早く!来て!」
「は?何だよ。今から昼飯食うーの」
人だかりの中心にいたのは、琉生だった。
「なんだ~亜美~琉生に告んのか?♪」
「琉生ちゃんにもやっと春が~」
「イヤイヤ、ないでしょ~」
「てかさっきから廊下騒がしくね?」
「もう!いいから!早く早く!」
「はあ~…お前ら、
俺の昼飯食うんじゃねぇぞ!」
琉生は、立ち際に、
近くにいた女の子の頭をポンッと叩いた。
女の子の顔が、少しだけ赤く染まった。
"チクッ"
「…?」
桜來は痛みを感じた場所に軽く手を当てた。
「…気のせいかな」
「なんだよ~亜美~
俺の貴重な昼休みをっ…先輩!?
なんでここに?!」
「突然ごめんなさい。
鍵のお礼が言いたくて。」
「えっ!!樫木桜來?!なんで?!」
「馬鹿っ!同じ学校なんだから、
先輩呼びでしょ!!」
「てかなんで琉生ちゃん?」
琉生の声に反応した友達が、
次々と顔を出してくる。
「あー…ちょっと場所移動しましょう!
てかお前は俺のパン返せよ!
先輩行きましょう。」
「うん。お邪魔しました。」
・
・
・
「先輩。こっち来ちゃ
まずかったんじゃないですか?」
「どうして?」
「だって、先輩有名人だし!」
「迷惑だったかな?」
「いえ!それは全然!」
「良かった。ルイルイ、昨日は、
鍵を届けてくれてありがとう。」
「こちらこそ!中等部まで来ていただき、
ありがとうございます!」
いつもの様に、はにかむように笑う琉生。
「なんか、いつもは夜に会ってるからか、
日中に会うと、変な感じがするね。」
「あ〜確かに!いつもは…」
いつもは…
"湊先輩に会いに来ている先輩"
でも今日は…
"俺に会いに来ている先輩"
そう思うと、顔が自然と
ニヤけてしまいそうになる。
「…初めてですね。
明るい時にこーやって会うの!」
「髪、ふわふわしてる。」
「へっ?あー!
いつもは、風呂入った後だから、
髪、ペタってますもんね!」
「いつものサラサラもいいけど、
ふわふわもいいね。かっこいい。」
そういって、
琉生の頭を、撫でるように触った。
その時先輩からは、
いつもとは違う香りがした。
"甘すぎない上品な香り"
琉生は、胸の高鳴りを感じた。
これが先輩の本当の香り
新しい桜來を知れて嬉しいと思う反面、
それと同時に、昨晩の湊とのキスが蘇った。
当たり前のように交わされたキス。
「先輩は…」
「ん?」
"先輩は本当に湊先輩のこと
何とも思ってないんですか?"
なんて聞けるわけがない。
「あーっと鍵…
直接渡せなくてごめんなさい。」
「全然。助かった。」
「今日…来てくれて嬉しかったです。」
「逆に、迷惑かけちゃったけど。」
「全然!!!
でも、こういうことされると…俺…」
「恥ずかしいよね?」
「え?!あっ、…はい」
違う。
俺は…
勘違いしそうになるんだ。
「先輩…俺、頭…眠くなっちゃいます笑」
「ごめん。触りすぎたね。」
「いえ。
それより先輩、時間大丈夫なんですか?」
「午後から撮影だから、今日はもう早退。
ルイルイ、お昼まだだったね。ごめん。帰るね。」
「あー、先輩が平気なら、
ここで食べてもいいですか?」
「私は大丈夫だけど。」
「じゃあいただきまーす!」
・
・
・
・
「ルイルイって、身長いくつあるの?」
「今175です!先輩は?」
「168」
「じゃあ今7cm差か!
俺、親どっちもでかいんで、
多分まだまだ伸びますよ!」
「ルイルイまだ中学生だもんね。
育ち盛りだよね。」
「はい!すぐ腹空きます!
先輩はちゃんと食べてますか?
めっちゃ細いですよね。」
「食べてるよ。朝ご飯3杯食べた。」
「意外ですね!!それでその体型って!」
「でもジムに通ってるよ。筋力つけたくて、
最近お腹、少し割れてきたの。ほら。」
そういって、自ら服をめくろうとする桜來。
「ちょっちょっちょ!!
先輩!何してるんですか!!」
「お腹見ない?」
「見ないですよ!!しまってください!」
「ごめん。仕事柄、あまり抵抗がなくて。」
「先輩はそうですよね!」
「ルイルイ顔赤いね。」
「なっ!ビックリしたんですよ!」
「可愛い。」
「からかわないでください!」
「からかってないよ。
ルイルイはいつだって可愛いし、
かっこいいよ。」
「またそういうこと言う…」
先輩といると、感情のコントロールが忙しい
ピロン♪
「あ。羽野さん着くみたい。
私、もう行くね。」
「あ、はい。じゃあ、俺も戻ります。」
「あ、ルイルイ良かったら連絡先教えて。」
「えっ?!あ、はい!是非!」
「たまに電話とかしてもいい?」
「電話?いいですよ!」
「ありがとう。私ルイルイの声好きだから。
ルイルイの声聞くと、
頑張れる気がするんだよね。」
そうやって、先輩はいつも、
嬉しい言葉をくれる。
「ありがとうございます。
俺で良かったらいつでも!」
「じゃあまた連絡するね。
付き合ってくれてありがとう。ばいばい。」
「お仕事頑張ってください!また!」
琉生は、頭を軽く下げ、桜來の後ろ姿を見送る。
すると、ドアに向って歩いていた桜來が、
突然足を止め、こちらに引き返してきた。
「先輩?どうかしましたか?何か忘れもの…」
ふわっ
桜來は、琉生の頭に優しく触れた。
「うん。やっぱりふわふわも好き。
ぢゃあ、お仕事いってきます。」
ガラガラガラッー…バタン
「…ーッ」
座り込む琉生。
「…あれは反則すぎ」
・
・
・
・
きゃー!きゃー!きゃー!
「羽野さんお疲れ様です。」
「桜來遅れてごめんね!
それよりすごい悲鳴~
また知名度あがったね。良き良き♪
今日は14時からAスタで撮影ね!」
「はい。よろしくお願いします。」
車に乗り、先程交換したばかりの、
琉生の連絡先を、眺める桜來。
「桜來が携帯見てるの珍しいね。
何かあった?」
「今日、連絡先教えてもらえたんです。」
「連絡先?」
「はい。ルイルイの。」
「ルイルイ?新しいお友達?」
「お友達…ルイルイはルイルイです。」
「…桜來それって男の子?
そんでもって好きな人とか?」
「はい。男の子です。
でも好きな人ではないです。
ただ声が、すごく好きで。
一緒にいると落ち着くんです。」
「それって…
まあ~…学校内での交遊関係であれば、
外部に漏れることはないから、
俺達も、安心してられるんだけどさ!
くれぐれも!仕事に支障の出るような、
恋愛だけはダメだからな!!!
…で、そのルイルイは何年生なの?」
「3年生です。」
「年上か~」
「いえ、年下です。」
「年下?…って中3?!?!?!
桜來、それは気をつけろよ!
中学男子ってのはな、そりやあもう!
エロいことで、頭がいっぱいの時期で…!」
「ルイルイは大丈夫ですよ。
それに、本当にそういうのじゃないです。」
そう言いながらも、
ずっと携帯を眺めている桜來。
「…いやいやいや、
それはもう、そうでしょーよ、桜來さん。」
と、あえて小声で突っ込みを入れる、
マネージャー、羽野であった。
はじめからずっと。 玉木葵 @amori1417
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