第3話
一週間たった。
分かったことがある。
俺が俺ではなかったということだ。そして女は親子プレイ変態コスプレイヤーではなく、本当にママだったということだ。つまり俺はぼうやだったのだ。
鏡を見たとき、衝撃を受けた。あの後病み上がりということもありベッドで寝てしまった。そして目覚めたとき女の姿、気配を感じなかったので逃げようと思ったのだ。
山小屋だと思っていたここは街中にある二階建ての家だった。廊下に鏡が飾ってあってそこを見ると耳の尖った知らない少年が写っていた。はじめは女の子かと思ったが、トイレにいったときは男の子だったので男の子だ。とにかく俺が俺以外の誰かになっている意味が分からなくてその場で気絶してしまった。
俺は「ママ」に実は記憶喪失になってるんだと嘘をついて、この少年について教えてもらった。
名前はノーエン。
現在10才。
好物はマッシュルーム、趣味は魔術の練習ということらしい。
ママいわく「優しくて穏やかでみんなの人気者」らしいが絶対これは嘘だ。
思い出話を聞く限りノーエンはよく病気をしていたようなので一年の半分以上は部屋に篭りきり。だから友達も少ないようだった(っていうかいない?)
とにかく病弱儚げボーイだったのだ。
ちなみに俺は
名前 西原光太郎
年齢 23歳の大学生
好物 焼肉、だ。
この世界についても教えてもらった。
この世界は現在の地球とはまるで違う場所だ。人間は魔法が使え、そこらへんに魔物がいるらしい。
そういう世界だそうだ。
ノーエンパパは魔王討伐に行っているようで討伐が終わったら帰ってくるらしい。
魔王が最悪を広げていっている割には外の景色を窓から見る限りすごく平和そうに見えた。
俺は元の体が恋しい。ていうか元の世界が恋しい。
魔法が使えたらそりゃうれしい。魔物とかギルドとかわくわくするけど、俺は自分の体で自分の生きた世界で生きていたい。
両親に会いたいし、陽介たちにも会いたい。
あーまだ見てない映画とかあったのにな、あの漫画最後どうなるんだろう、あのアーティストの新曲もっと聞いたけばよかったという考えが頭を支配する。
そしてなによりも元の世界に帰りたい一番の理由は
飯が不味すぎる、ということにある。
この1週間で食べたものといえばマッシュルームをなんかしたものだけだ。ママは好物を与えることによってノーエンの記憶が戻ってくると思っているのだ。
実はというと俺はキノコ類が苦手だ。
あのブヨブヨとした食感、なんともいえない味が嫌いでどうにも受け付けない。椎茸などは悲鳴をあげそうになる。
マッシュルームならまだギリいけると思っていた。ビジュアルを見るまでは。
この世界でマッシュルームと呼ばれているキノコは俺の世界のマッシュルームとはかなり違っていた。
まず、デカい。俺の手のひらぐらいのサイズがある。さらに色と模様がカラフルだ。
ほんまにこれマッシュルームなんか?ノーエンの好物がこれってマジか・・・とドン引きした。
ママはステーキのように切ったそのキノコを出してくる。まったく美味しそうな見た目じゃないし、食べなくてもぶよぶよしてそうなことがわかるくらいの弾力が見た目にあった。恐る恐る食べてみると今まで食べた物の中で一番まずい!後味も3時間ぐらい残るわ、謎に舌がピリピリするわで毎食一口だけで俺は逃げている。
何か別のものをこっそり食べようと思っても、食べ物が手に届くところに置かれていなくて困った。
この短い期間でもともと細かったノーエンの体は小枝レベルにがりがりになってしまっていた。
ムカつくのは目の前でママはうまそうなパンとスープを食べて、ときどき肉まで食べているということだ。
「ぼくもそれ食べたーい。マッシュルーム飽きた!味覚変わった!!」
とアピールしても
「あぁ、ぼうや。マッシュルームが大好きだったのに可哀想な子。じゃあママがあーんしてあげましょう」
とあしらわれた。
ママはノーエンの食事を変えようとは思わないのだろうか。いつもほぼ口をつけず、誰が見ても分かるほど息子は痩せ細っているのに。
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