第2話 おかしい
突然意識がはっきりとして俺は飛び起きた。
いや、飛び起きようとした。体に力がうまく入らない。
目を開けると茶色い木の天井が見える。
息を吸う、肺が空気を取り込んでいる。
死んでない。
息を吐いてみる。それと同時に涙が頬を伝った。
生きている。俺は生きてる。
俺は生まれて初めて神様に感謝した。
しかし、いったい誰なのだろう。
殺されそうになった。
思い出すだけでもあの水の容赦ない冷たさ、あの息苦しさを思い出す。そして頭を押さえつけていたあの殺意のこもった力・・・・・・。
そういえば意識を失う直前、声が______
「ぼうや!起きたのね!!」
突然耳横で大きな声がして俺は跳ね上がった。声の方向を向くと、目の前に女の人の顔があった。日本人ではない。やけに古風なワンピースを来て、そして耳がとんがっている。コスプレイヤーなのかもしれない。
「あ、助けていただいてありがとうございます・・・・・・?」
言いながらもとてつもない違和感を覚えた。病院ではなかったのか、というのはどうでもいい。きっと山の中のロッジなんだろう。
そんなことではなくて、俺の声が、やけに高い。
高校の時の合唱で俺のパートはバスだったのだが、今はソプラノぐらいの高さがあるように耳から聞こえた。
ヘリウムガスを吸った時とは違う、綺麗に澄んだ高い声だ。まるで子どものような・・・・・・。
俺の様子などお構いなしに女性は話しかけてきた。
「ぼうや、あなた危なかったのよ。3日も昏睡状態でママとても心配したんだからね」
「え?」
女性は俺を抱きしめた。ちょうど女性の胸の高さに俺の顔があったので豊満な胸に圧迫されて窒息しそうになる。
こいつヤバいやつだ、と俺は息苦しい中思う。胸を他人に押し当ててくるし、自分のことをママと言い、俺のことを坊や呼ぶ。親子プレイ変態コスプレイヤーだ。
もしかしてこいつが俺のことを殺そうとしたのかも。こういう行為の相手を探しているときにちょうど俺を見つけて気絶させ、今に至るってことなのかもしれない。
背筋にぞわぞわと寒気がはしる。
「触るな!」
「きゃっ!どうしたのぼうや?!」
俺は力いっぱい胸を押しのけ、ベッドからまだふらふらとした足で降りる。床に足をついて、
変だ。
女は尻餅を着いた状態で困惑した表情で俺を見ている。普通なら女が俺を見上げる形になるはずだ。しかし、今の俺はまっすぐ両足で立っているはずなのに尻餅をついている女の目の高さとあまり変わらない。
俺は訳がわからなくなって悲鳴をあげた。
「・・・・・・おかしい!おかしい!!」
「かわいそうなぼうや。きっと熱でまだ頭が混乱しているのね。」
憐れむようにそういうと女は近づいてきて俺を抱き上げた。そして俺はベッドに寝かされる。
「きっと全部夢だ。バーベキューをみんなでしたのも川で殺されかけたのも今こんなことになってるのも、きっと夢なんだ」
「川で殺されかけたですって?誰にそんなことされたの!!」
ぶつぶつとつぶやく俺の言葉に女は急に食らいついてきた。その顔は怒っている。
「あぁ、やっぱりおかしいと思ったのよ。いい子のあなたが夜に居なくなるなんて!きっとお友達に誘われて優しいから行ってしまったのね。ああ、恐ろしい!!犯人はこの村から追放よ。あとその親も。それと______」
女が急に早口で独り言のようなものを言い始め、俺は逆に冷静さを取り戻していく。
そして女を睨みながらも脱出を考え始めた。
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