第4話


 「ノギ偏にロドンの魯か…そういえば、この字はどういう意味なんだっけ? 三国志だったかに魯粛という、軍師がいたし、そういう中国の名字やら、それに魯の国というのもあったよな~」

 電子辞書をちょっと引いてみると、詳しい語義や由来の説明があったが、けっきょく、単なる「愚か者。ばか。まぬけ」の意味でしかないという結果で、ロマン派のごとくになにごとにも夢物語やら面白い来歴を見つけようとするいつもの蛇蝎氏の性癖は、いつものごとくにみごとに裏切られてしまった。


 「つまりもとは山東省にある地名で、”魯”自体はいけにえに供された魚?で、”朴魯”という熟語から転用されたわけか…

 まあ、きりがないな。漢字は深いわ…」


 しばし、顎にナックルをくっつけてロダンの彫刻よろしく沈思黙考していた蛇蝎の脇を、野良犬が通り過ぎた。

 野良犬のあしのうらの泥がついた、踏みしめたひこばえに、西陽が差している。

 YMという作家が、「死んでも描写するもんか」と誓ったという、「西陽の差している畳の毛羽けば」を、連想させた。


 で、こう詠んだ。


<踏みしめた穭の田んぼ犬の糞>蛇蝎


…「蛇蝎のごとくにオンナに嫌われる」いつもの蛇蝎のシニシズムの真骨頂だった。






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蛇蝎 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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