第55話 「今後への展望」
「今までのあらすじ」
鈴木愛衣(あい)は大学生で、科学技術が発達した惑星(アース星)に住んでいた。愛衣の心(魂)は、大統領の計画で邪魔者を排除するために他の宇宙の惑星(地球)の川原知人(かずひと)という名前の胎児の中に送りこまれた。愛衣は今、川原知人として生活している。
結婚相手の今井昭(いまいあきら)も同様に地球に送りこまれた。
アース星の大統領の首席補佐官は、違う宇宙の地球の川原の友人の啓太が猫に転生するという大統領の計画を阻止する事に成功した。しかし、補佐官は猫に転生してしまった。
地球の川原知人と今井昭は、どうにかして、首席補佐官を猫から人間に戻そうとしていた。
しばらくして、首席補佐官は無事に人間に戻る事に成功したのだった。
第55話 「今後への展望」
ここはいつものカフェ。川原知人と今井昭は重要な話をするためにまたこのカフェに来たのだった。
「今後の事を決めていこう」今井昭は真剣な顔をして言った。
「現状、何か問題があるのかな」川原知人は言った。
「猫に転生していた首席補佐官は大統領に人間に戻してもらっていた。そして、何も不満がないらしい」
「この星に住むことに何の抵抗もないなら、私達が元の星に戻れなくて可哀想とか思う必要もなさそうだね。仮に可哀そうだと思ったとしても、私達がどうにかできる問題でもない」知人は素直な気持ちを伝えた。
「人の心配より自分達がどうしたいかも考えていきたいね」
「どうしたいんだろう?」知人は自分でもよく分からなかった。
「私も今の生活に不満がないな。結婚相手にもこの星で再会できたし、わりと快適なこの星で暮らす事に何も不満はない。性別の問題はどうする?」
「そうか。この星では私は男性で、前の星では女性だった・・。別に性別が男性でも女性でも人間の本質は変わらないと思う。私であることに何も変わらない」知人はきっぱり言った。
「でも、私も男性だし、男性同士で結婚するのは、抵抗あるな・・」昭はそこは抵抗があるようだ。
「今は多様性の時代だよ。気にする事ないよ。性別を変える事もできるのかもしれないけど、この体の元の人に悪い気がする」知人はこたえた。知人は自分が転生して来た事を知ってから元の星にいた時の性格に少し戻ったようが気がする。だいぶ明るくなったと昭は思った。
「そういや、記憶は元に戻ってないんだよね」昭は知人に訊いた。
「戻ってはないけど、昭の話を聞いたらなんとなく前の自分を思い出しつつあるかな。元から忘れっぽい性格だったから、記憶があってもなくてもたいして変わらないかもしれない。昔から記憶の断片が残っているから、夢でアース星の出来事っぽいものを見る事も多かった」
「なんかだいぶアース星の記憶を消去する科学技術も不完全な所があるっぽいな」
昭は言った。
(続く)
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