第56話(最終話) 「夢か現実かなんかどっちでも良い!」
第56話 「夢か現実かなんかどっちでも良い!」
そして時間は過ぎて、季節は春になった。
川原知人(かわはら かずひと)と今井昭(いまい あきら)は結局、結婚する事はやめて、同じ家で住む事にした。元は女性と男性だったけど、この地球では、同じ男性なのだ。さすがに、男性同士で結婚するのには抵抗があった。でも、アース星にいた時は結婚していたので、別々の家に住むのも寂しい感じがしたので、妥協案として同じ家に住む事にした。食事を作るのは交互にした。例えば月曜日は知人が作り、火曜日は昭が作るというふうにした。掃除も掃除する場所を決めて行い、ごみ出しも担当を決めて、家事を分担した。
「今さらだけど、アース星に戻りたいと思った事はないの?」
昭は知人に言った。
「私はないかな。ちょっと科学技術の発達した未来の世界って憧れるところはあるけど、私にとっては夢の世界って感じで、現実って感じがしないから」知人はこたえた。
「確かに君の場合は、1回、記憶が消されてるからそんなふうに感じるんだろうな。実は私も最近、記憶が曖昧になってきてアース星にいたのは本当に現実だったのか疑いたくなる時が増えてきたんだ」昭は真剣な顔をして言った。
「私はどっちでも良いかな。本当は全部、昭さんの妄想でアース星なんて存在しなくても」知人は明るくこたえた。
「そんないい加減な・・・」
「アース星の事が現実でも夢でもどっちでも良いじゃない。仮にこの現実だと思っている地球での出来事が夢で、アース星での事が現実で、実は今もアース星にずっといて長い夢をみているだけかもしれない」知人はとんでもない事を言い出した。
「その考え方だとアイデンティティが喪失しそうだな」昭はぽつりと言った。
「私は夢を見て起きた直後はいつもそんな感じだよ。あれ、今さっきみていたのは夢だったんだ。現実だと思っていたって毎回、思うもん」知人は言った。
「確かに夢を見た時はそんな感じだな。そう考えると、夢と現実の区別が曖昧に感じだとしても特に何の問題もないのかもしれないな」昭はしばらく真剣に考え始めたのだった。
私達が現実だと思っている事は、実は長い夢を見ているだけかもしれない。夢の中でいろいろ考えて、やっぱりこれは夢でないと確信した後に、目が覚めてやっぱり夢だと気付くことは、わりとよくある。ほっぺをつねって痛みを感じて夢じゃないって確信してから目が覚める事もよくある。夢の中でも普通に痛みは感じるのだ。私達はこの世界が夢か現実か考える事に何か意味があるのだろうか。もしかしたらないかもしれない。それでも、私達は考え続けるしかないのだ。
(おわり)
夢の世界 AI かじ(Kazi) @tosi145
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