第44話 手帳の語る秘密

 「今までのあらすじ」

 鈴木愛衣(あい)(女性)は大学生で、科学技術が発達した惑星(アース星)に住んでいた。今井昭(あきら)(男性)は鈴木愛衣の結婚相手である。

 

 愛衣の心(魂)は、大統領の計画で邪魔者を排除するために他の宇宙の惑星(地球)の川原知人(かずひと)(男性)という名前の胎児の中に送りこまれた。

 大統領の次の計画は川原の友人、啓太を猫に転生させる事である。

 

 愛衣は今、川原知人として生活している。愛衣は昔の記憶は覚えていなくて、最初から川原として生まれたと思っている。川原は現在、大学院で哲学の研究をしている。


 第44話「手帳の語る秘密」

 私と啓太は手帳をくわえた小さな黒い猫を見つめた。猫が口にくわえている手帳をが街灯の薄暗い光に照らされて、少し古びた革の表紙がぼんやりと見えた。私は一瞬戸惑ったが、好奇心が勝り、手を伸ばした。すると猫は立ち上がり、さらに近付いてきて、そっと猫のくわえている手帳を受け取った。猫は抵抗せず、まるでこちらにそれを渡す事が目的だったかのようだった。猫は、手帳を渡した後、一歩下がり座り込んだ。


 「何だろう?」と啓太が私の肩越しから覗き込んできた。私は表紙をそっと開いてみた。中には手書きの文字がぎっしり書いてあった。ところどころインクが滲んでいるページもあった。中の文字は日本語ではなかった。どこかの国の言葉だった。私にはそれは読めなかった。「啓太、この文字読める?」私は後ろを振り向き言った。「いや、読めない。たぶん、地球にある言葉ではなさそうだ」啓太はかなり真剣な顔をして言った。「えええ、宇宙人の言葉って事か」私はびっくりした。「その可能性は高そうだ」啓太は言った。

「猫が持ってきたって事は私にこの手帳の内容を私達に伝えたいって事なのかな」私は啓太に言った。

 「どうなんだろう・・・。誰かが猫に私達にメッセージを送ろうとして猫に手帳を持ってこさせたのかもしれないけど・・・」啓太はしゃべっている途中で手帳に読める文字を見つけた。「あっ・・・。読める文字も書いてあった。これだけ違う人が書いたのかな。名前だ。今井昭(あきら)と書いてあった。そしてその後に矢印みたいなものが書いてあり、「今の名前は不明」と書いてあった。

 「どういうことだろう?」私は言った。

 「詳しくは分からないけど、これだけだと、ほとんど何も分からないね。ちょっとこの手帳を持ち帰って良いかな。解読をできるならしてみて、その後、落とし物を警察に届けようと思う」啓太は言った。

 「そうしよう。今日は遅いし、家に帰るね。何か分かったらまた連絡して」私は啓太にそう言って家に帰る事にした。猫は満足した顔でどこかへ行ってしまった。


 数日経ち、啓太が解読できなかったという連絡がきた。手帳は警察に届けられた。その後、手帳がどうなったかは知らない。

(続く)

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