第40話 猫に転生?最大の危機

 「今までのあらすじ」

 鈴木愛衣(あい)は大学生で、科学技術が発達した惑星(アース星)に住んでいた。愛衣の心(魂)は、大統領の計画で邪魔者を排除するために他の宇宙の惑星(地球)の川原知人(かずひと)という名前の胎児の中に送りこまれた。愛衣は今、川原知人として生活している。愛衣は昔の記憶は覚えていなくて、最初から川原として生まれたと思っている。川原は現在、大学院へ通っている。(啓太は川原の友人である。)


「第40話 猫に転生?最大の危機」

 場面は再び私の所に戻る。私が啓太と約束したカフェに到着すると、彼は既に窓際の席に座ってコーヒーを飲んでいた。「お疲れ」と軽く手を振って合図する笑顔の啓太に、私も笑顔でこたえて席についた。「それで、話っていうのは何なの?」私が聞くと、啓太は少し真剣な表情になった。「実はさ、最近、変な夢を見たんだ。俺が動物になるって夢。具体的には猫なんだけど、妙にリアルな夢で何か意味があるのかなと思っていろいろ考えてたんだ」

自分の夢の話をするなんて啓太にしては珍しい話題だったので、私は意外な感じがした。だって、自分の夢の話をするなんてよっぽど話題に困った時にする話題だ。私は基本的に夢の話は時間の無駄だと思っているのでしない事にしている。でも、啓太がわざわざ私を呼び出して夢の話をするのを見ていると意外と意味のある事なのかなと考えをあらためる必要があるのかなと思ったのだった。

 私は一瞬ドキッとした。何か嫌な予感がする。「夢って不思議だよね。研究のせいで動物の寿命の事ばっかり考えてるよ」啓太は言った。

 「でもさ、もし本当に転生できるなら猫も悪くないかもね。猫なら自由に生きられそう。面倒臭い人間関係もないし、シンプルに生きられそう」啓太は言った。

 その言葉に私は何とも言えない違和感を覚えた。なぜか胸の奥がざわつき、昔の記憶・・・。いや、自分が「川原知人」として生きる前の何かが一瞬だけよみがえった気がした。でも、それはすぐに霧のように消えてしまった。


 同じ頃、違う宇宙の惑星、アース星では大統領は執務室で新たな決定を下していた。「猫だ。次は猫に転生させる。対象は啓太だ。川原知人の近くにいる人間なら、実験の効果も観察しやすいだろう」補佐官は息を飲んだ。「まさか、そんな急に決めなくても・・」「時間は有限ではない。できる限り急ぐ必要がある。時間は我々に味方してくれないからな」大統領の声は冷たく、揺るぎなかった。


 カフェで冗談交じり啓太と話していた私にはその恐ろしい計画が迫っている事など想像もできなかった。

 (続く)

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