第37話 大統領の機嫌は絶対に損ねるな!
「今までのあらすじ」
鈴木愛衣(あい)は大学生で、科学技術が発達した惑星(アース星)に住んでいた。愛衣の心(魂)は、他の宇宙の惑星(地球)の川原知人(かずひと)という名前の胎児の中に送りこまれ、今は川原知人として生活している。愛衣は昔の記憶は覚えていなくて、最初から川原として生まれたと思っている。
「第37話 大統領の機嫌は絶対に損ねるな!」
ここはアース星。地球より科学技術の発達した地球のある宇宙とは別の宇宙にある惑星である。この星は、火星とよく似た環境の星だ。この星の大統領は、鈴木愛衣の魂みたいなものを地球の人間の胎児の体の送り込むことを計画した人物である。大統領の目的は、自分と同じくらい優秀な人間をこのアース星から排除する事だった。自分に、歯向かってきそうな人間はこの星から退場させる。そのためなら、手段は選ばないのだ。そして、この計画には、もう1つの目的があり、魂を他の人間に安全に移す事ができるかという実験でもあった。
「大統領。なぜ、魂の移動させる事に積極的に取り組んでいるのですか」大統領首席補佐官は大統領に質問した。
「それは、この体が老化しても、他の若い人間の中に魂を入れて、若者として生活できるからだ」大統領はきっぱりと補佐官に言った。
「なるほど。それを続ければ、不老不死になるわけですね」補佐官は感心して言った。
「そうだな。不老不死。良い言葉だ。この世界は、私の思い描く理想の世界に徐々に近付く。理想の世界のために多少の犠牲は仕様がない。鈴木愛衣と今井昭(あきら)のような人間は不要なんだ。特に私のZ(SNS)にわざわざ意見をポストしてくるような鈴木愛衣という人間は危険だ。そっこう、この星から排除した」大統領は力強く言い放った。それを聞いた補佐官は少しぞっとした。自分もいつ排除されるか分からない。大統領の機嫌を損ねないために、じゅうぶんに注意する必要があると思ったのだった。
「大統領。素晴らしいですね」補佐官は言った。
「それで、今、地球の鈴木愛衣はどんな感じなんだ?」大統領は補佐官に訊いた。
「それがですね。宇宙に興味をもっているらしく、火星について話したり、調べたりしているようです」補佐官には鈴木愛衣の情報は常に入ってくるようになっている。
「それは少し、まずいな。向こうでもそれなりに知能を高めてきているのかもしれない。何か対策する必要がありそうだな」大統領は言った。
「まあ、大丈夫だとは思いますが、念のために何かする必要がありそうですね」補佐官は大統領は心配症だなと思ったが、直接口には出さなかった。
「また、違う人間の胎児の中に魂を送り込むか、それとも・・・・」大統領は言った。「そうだ。今度は人間以外の動物の中に送りこんでしまおうかな。猫か、犬とか、それともカエルとか・・・」大統領は続けて言った。
それを聞いて、補佐官は「それはさすがに、かわいそうではないですか」と思わず言ってしまった。大統領はこちらをじろりと見て言った。
「何か言ったか」大統領の機嫌を損ねたかもしれない。補佐官は冷や汗をかいたのだった。
(続く)
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