第35話 悪の組織って何?

(今まであらすじ)

ここは地球の日本。私の名前は川原知人(かずひと)(男性)。40歳の大学教授で哲学の研究をしている。川原の中の人は、鈴木愛衣(あい)という名前の大学生で、科学技術が発達した別の宇宙の惑星に住んでいた人間である。愛衣の心は、地球の川原知人という名前の胎児の中に送りこまれ、今は川原知人として生活している。愛衣は昔の記憶は覚えていなくて、最初から川原として生まれたと思っている。これは川原が大学院へ進学してからの話である。


 「第35話 悪の組織って何?」

 私は今年の4月から大学院へ進学した。大学4年の時に研究計画書を書き、それがある程度認められて、大学院に合格した。こう書くと、大学院へ進学した事がない人は何かすごい優秀な学生なんだなと勘違いされるかもしれないが、そんな事はない。研究計画書の出来はひどいもので、正直、大学院へ入学するレベルのものではなかったと思う。では、なぜ合格したのだろうか。正直に言って私には分からない。もしかしたら、他の受験生の研究計画書や試験、面接が私よりひどいものだったからかもしれない。それとも私が単純に教授に気に入られていたからかもしれない。理由は分からないけど、とにかく合格して、今、私は大学院で哲学の研究をしている。その事は素直に誇らしい。合格させてもらったからには、とにかく頑張って素晴らしい研究をしようと思う。私は今、かなり頑張って研究をしているのだった。


 話は変わるが、私は自分が何者なのか分からなくなる時がたまにある。自分の性別について疑問を持ったり、ぼんやりと自分が体験した事のないような記憶が突然、想起することがあるのだ。でも、過去の記憶は夢の世界と現実がごっちゃになっているだけなのかもしれないと、しばらく考えた後、考え直すのだった。実際、他の人に「自分が体験した事がないような記憶を思い出す事がありますか」ときいたら、「たまにあるよ。デジャヴ(既視感)というらしい」と言われた。私はデジャヴという言葉は前にきいたことがあり知っているけど、実際にデジャヴになった人は私の周りにも人はいるようだ。やはり、私もただのデジャヴなのだろうか。それとも、誰かが何らかの目的に私の記憶を消したのかもしれないと冗談で思った。その事を他人に話すと、

「面白い事を言うね。もしかしたら、悪の組織の重要な秘密の情報を君が知ってしまい、その情報を他人に知られないように消したのかもしれないね」とたぶん相手も冗談だと思うけど笑って言われた。それだったら面白いなと私は思ったのだった。

「悪の組織って何だよ」とその後、思った。悪の組織は世界征服のために私の知った情報を絶対に他人に知られたら駄目だったのだろう。私がその情報を思い出さなければ、この世界は悪の組織に世界征服されてしまうかもしれない。私はそのような妄想をしたのだった。「そんなわけないけどね」私はすぐにそう思ったのだった。

(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る