第34話 卒業研究のテーマ
「今までのあらすじ」
ここは地球の日本。私の名前は川原知人(かずひと)(男性)。40歳の大学教授で哲学の研究をしている。川原の中の人は、鈴木愛衣(あい)という名前の大学生で、科学技術が発達した別の宇宙の惑星に住んでいた人間である。愛衣の心は、地球の川原知人という名前の胎児の中に送りこまれ、今は川原知人として生活している。愛衣は昔の記憶は覚えていなくて、最初から川原として生まれたと思っている。これは川原が大学での話である。啓太は私の親友である。
「第34話 卒業研究のテーマ」
私達は、遂に大学を卒業する時期がきた。私は大学で何も成果を出せずにいた。ただ4年間、モラトリアムな時間を無駄に過ごしただけかもしれない。もちろん、大学で多くの事を学んだし、仲間もできていろいろ議論をして、そこそこ充実した時間を過ごしたとは思うけど、何か物足りなさも感じた。もっと、大きな何か具体的にはイメージできないけど、やりたかったというおもいが、どうしてもあった。何かやり残した事が多い学生生活だったなと漠然と思うのであった。
卒業研究も、教授に言われたテーマをやっただけだ。個人的には、自分で一から考えて研究したかった。自分でしっかり考えたものなら、たとえ、うまくいかなくてもそれなりに自分を納得させる事ができたと思う。しかし、実際は教授に言われた内容をそのままやっただけなので、卒業研究をちゃんとした感じはしなかった。
「啓太は卒業研究はちゃんと自分でテーマを決めてやったの?」私は啓太にきいた。
「うん。前から考えていた事があってそれをやったよ」私はこたえた。
「そうなんだ。やっぱり、啓太はすごいな。卒業研究のテーマってどんなふうに考えたの?」
「それはね。自分の興味関心がある事を紙に書きだして考えるんだ」
「なるほどね。自分の興味関心がないのに何か壮大で、すごそうな世紀の大発見をしようとか、そんな事を考える必要はないんだね」
「そうだよ。卒業研究のテーマは意外に身近なところにあるものなんだ」啓太は言った。
「身近なところかあ・・」私は何かあるかなと考えた。
「そういや、話が変わるけど、知人(かずひと)は進路は決めたの?」啓太はいきなり私に質問してきた。
「決めたよ」私は、すぐにこたえた。
「どこに行くの?」
「大学院だよ」
「えっ!大学院なんだ。今の話の流れだったら、絶対、就職とか進学以外だと思っていたよ」
「やっぱり、だいぶやり残した事があると思ったんだよ。それで教授とも相談して大学で哲学の研究をしっかりする事に決めたんだ。世紀の大発見をするよ」私はきっぱりと啓太に言った。
「まだ、世紀の大発見をあきらめてないんだ。大学院には合格したんだよね」
「合格したよ。4月から大学院で頑張るよ」
「お互い、違う道を進む事になるけど、頑張っていこう」啓太は右腕を上にあげて言った。
(続く)
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