第32話 夢の意外な役割。夢は何のためにみるのか?

「今までのあらすじ」

 ここは地球の日本。川原知人(かずひと)(男性)は、40歳の大学教授で哲学の研究をしている。川原の中の人は、鈴木愛衣(あい)という名前の大学生で、科学技術が発達した別の宇宙の惑星に住んでいた人間である。愛衣の心は、地球の川原知人という名前の胎児の中に送りこまれ、今は川原知人として生活している。愛衣は昔の記憶は覚えていなくて、最初から川原として生まれたと思っている。

 これは川原が大学に入学した時の話である。

 

 「第32話 夢の意外な役割。夢は何のためにみるのか?」

 川原知人は大学入試に合格して、無事、文学部哲学科に合格した。哲学科の男女比は大学によってかなり差があるが私のいる大学では男性6割、女性4割だった。入学して思ったより女性が多い事に驚いた。私の想像では100人くらい学生がいたら女性は数人くらいだろうと思っていたが、女性が40人くらいいたのだ。女性は読書が好きな人が多いから、哲学科にも女性がたくさんいてもおかしくないのかもしれない。

 

 今日の授業は分析哲学だった。

 哲学の問題を考える時に言語の働きに注目し言語の分析を通じて哲学の問題を解決しようとするのが分析哲学である。


 大学に入学してから知り合って、仲良くなった人は何人かいるけど、特に仲良くなったのが啓太(けいた)である。啓太は、親切で非常に良い奴だ。啓太とは哲学科の授業の時に隣の席になり、その時に仲良くなった。哲学科には女性はわりといるけど、高校の時の失恋の影響で女性とはわりと距離を置いている。向こうから話しかけてこられたら、少し話すくらいで女性とは、あまりしゃべってはいない。そのかわり啓太とか男性と話す事が多くなった。


 「なぜ人は夜、寝るのかな?」私は、ふとした疑問を啓太にきいてみた。

 「睡眠中に重要な事を記憶して、その後、保管して分析するためだよ」啓太は答えた。

 「なるほど、睡眠にはそういう効果があるんだ。体を休めるとかそういう事が先に思い浮かんだけど、そういう事も睡眠中にしてるんだね」私は答えた。人と話すと自分が詳しく知らない事が知れる時がある。

 「体を休めるだけなら、ただじっとしていれば良いだけだし、眠る必要はないね」啓太は言った。

 「なるほどね。眠る事は体を休めるより、記憶とかそういう事の方が役割が大きいわけだ。」

 「そうだね。眠らないでずっと起きていると頭の中が混乱するんだよ。ずっと、起きているとしっかり思考したりする事ができなくなる」啓太は説明した。

 「確かにそういう経験はした事ある。徹夜で勉強していても効率が上がらず、数学の難問とか考えていても全然理解できないし、問題も解けない。あきらめて、眠ってから、朝になった時に問題を見ると、一瞬で問題が解けるとかそういう事があるね」私は受験勉強の事を思い出しなが言った。

 「起きている時に脳の海馬に情報を記憶して、その後ノンレム睡眠中に記憶の分類して、憶えなくても良いどうでも良い情報を忘れるようになっているんだ。そして重要な情報を長期記憶にするんだ。」

 「睡眠ってあらためて考えるとけっこう人間にとって重要な役割があるんだな。そういやノンレム睡眠中に夢をみるんだっけ?」私はいつも質問ばかりしている。

 「睡眠の25%くらいががレム睡眠で75%がノンレム睡眠で、夢は両方みるけど、主にみるのは、レム睡眠の時なんだ。レム睡眠の時は眠りが浅いんだ。」

 「最近、夢をよく見るけど眠りが浅いのかな。しっかり眠りたいな」

 「レム睡眠の時は非現実的な夢をみるんだ。これは脳の前頭葉の働きが低下しているからなんだ。一方、ノンレム睡眠の時は、シンプルで平坦なストーリーの夢をみるんだ」

 「夢の内容でどっちの睡眠の時か分かるんだ。あんまり意味不明な夢をみると、目が覚めた時に嫌な気分になるから、あまりそういう夢はみたくないな」私は心からそう思うのだった。

(続く)

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