第31話 初めての失恋
「今までのあらすじ」
ここは地球の日本。川原知人(かずひと)(男性)は、40歳の大学教授で哲学の研究をしている。川原の中の人は、鈴木愛衣(あい)という名前の大学生で、科学技術が発達した別の宇宙の惑星に住んでいた人間である。愛衣の心は、地球の川原知人という名前の胎児の中に送りこまれ、今は川原知人として生活している。愛衣は昔の記憶は覚えていなくて、最初から川原として生まれたと思っている。
これは川原が高校の時の話である。
川原は南川(女性)さんの事が好きで、2人はよく話をしている。
「第31話 初めての失恋」
私達は高校生活を3年間無事に終えて今日は高校の卒業式である。
3月中旬。温度は14℃。寒くもなく暑くもないちょうど良い温度だ。実際の温度と体感温度には差があり、気温が低いからといって寒く感じない時もあるし、気温が高くても暑く感じない時もある。
卒業式は無事終わり、私と南川さんはいつものようにしゃべっている。
「高校生活あっというまだったね」私は南川さんに言った。
「そうだね。終わってみればわりと早く感じた。でもそれは、昔の出来事をしっかり憶えているからよ。忘れていたら長く感じるものよ」南川さんはいつものように、かしこそうな事を言った。
「へぇ、そういうものなんだ。自分は逆かと思っていた。昔の事を忘れているから早く感じるのかなと思っていた。でも、しっかり憶えているなら良かった。でも、昔しゃべった内容とかで出来事をあまり覚えてないんだよな・・」私の記憶力はあまりよくないという自覚がある。昔の事をあまり憶えていのだ。
「そうなの。私はしっかり憶えているよ」南川さんはこたえた。私はその返事を私としゃべった事をしっかり憶えているよと言ったように感じた。
「えっ」私は思わず、大きな声を出してしまった。これはもしかして脈ありなのかもしれない。
「連絡先交換しようよ」私は思いきって言ってみた。しかし、あの後の返事は予想外のものだった。
「なんで?」南川さんは不思議そうな顔をして言った。
「だって、高校を卒業したら違う大学に行くからこうして放課後、会えなくなるし・・」私は自分がおかしな事を言ってないよなと自分で確認するようにゆっくり言った。
「私、スマホを持ってないのよね」南川さんはこたえた。そう言えば、南川さんがスマホを持っている所を見たことがなかった。
「そういえば、スマホを持っているところ見た事なかった。それじゃあ、仕方ないね。卒業後に自分と連絡を取り合いたくないのかと思ったよ」私はほっとしながら言った。
「卒業後に連絡を取り合う必要があるの?」南川さんはまたしても予想外の事を言った。今日の南川さんはいつもと何か違う。
「別に特に仲が良い友達というわけでもないし、連絡を取り合う必要はないよね」
私は南川さんのその発言にかなりショックを受けて、返す言葉もなくなった。
自分は今後、本格的に付き合おうかと思っていたのに、友達とすら思われてなかったのだ。私は、その後、何も言わずにそのまま、家に帰宅したのだった。
(続く)
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