第7話性不全

なんてことを! この男は! 言うんだーーーー!

僕の頭は怒りで煮えくりかえった。人が気にしていることを、こんなにペラりと口に出せてしまうなんて! こいつに良心というものはないのか!

「やめろ、離せ!!!」

「おっと、危ないですよ。あまり動くとまだ心臓に負担が」

「うるせえ! 人の気も知らないで!」

デイビッドは、クスリと笑って僕の手の甲にキスをした。僕は一瞬何をされたのか分からなくて、言葉を失う。しかし、デイビッドの揶揄っているような表情に、自分の顔が赤くなってきているのがわかった。

僕は怒りが収まらなくて、そっぽをむいていた。すると、デイビッドが横から僕に言う。

「私なら、慰めてあげられるかもしれませんよ」

へ、と聞き返そうとする前に、デイビッドが僕の腰のあたりに座り込む。勝手にズボンを下ろされる。思わず悲鳴を上げようとして、唇を塞がれた。唇で。

僕の体に雷のような衝撃が走って、声が出なくなる。

ああ、僕って今本当にそう言うことをしてるんだ、

そう言うことをする空気なんだここは、変な思考はぐるぐるこんがらがってきて、僕はパンツを脱がされたことにも気づかなかった。

「あ、ちょ!」

「オー、これは」

完全にだらけきった息子がそこにいた。顔が真っ赤になってきて、僕は立ち上がった。パンツを無理やりひったくって履くと、デイビッドは同情するように僕に近寄ってきた。そんな顔したって今更無駄だ。こんな空気にしたのはお前なんだからな、と言って、僕はデイビッドをジロリと睨んだ。

「お詫び、させてください」

デイビッドは出ていこうとする僕に、そう言った。正直そんなものもらいたくないほど機嫌が悪かった僕だったけれど、物欲には弱い。デイビッドの顔をチラリと見ると、彼は天使のように笑って僕をとある場所に連れてきた。


それは、星が見える綺麗なテラスだった。夜空に満天の星が広がっていて、まるで宇宙で、それは、骨の髄が痺れるほどロマンチックで、夜のかげがデイビッドの横顔に降りてきていて、何て美しいんだろう、僕は少しだけクラクラしながら彼の煌めく金色の瞳を見つめた。

この瞳に見つめられたいと思った。この瞳が欲しいと思った。

僕にとってそんな人間は初めてだった。なんだか心臓が高鳴ってきているのを感じた。

その時僕は知らなかった。それが恋という感情なのだと言うことを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る