第8話 本当に、できるんですか?

デイビッドとテラスでぼんやりしていると、彼が連絡先を聞いてきた。僕はうっかりそれに応えてしまった。

やっちゃった。初対面の男に連絡先を教えるなんて。しかも相手はゲイだ。

「ねえ、その、あなたはゲイなんでしょ」

と囁くように言うと、デイビッドは少し傷ついたような顔になった。その顔を見て、僕は後悔した。言い方が、不味かったのだろうか。少し直接的に言いすぎただろうか。

「ごめんなさいあなたを傷つけるわけじゃなかったんです、ただ、僕はノンケで、ゲイではない。だから、僕はあなたの恋人にはなれないってことで」

「大丈夫ですよ。あなたは僕のタイプでは全くないですから」

今うっすら失礼なこと言われたような気がする、と思いながらも僕は安心していた。

デイビッドは僕をそう言う目では見ていないらしい。

「と、ところでその」

僕には聞きたいことがあった。

「あの、僕、イケナイんです、その」

急に顔が赤くなってきた。僕は一体なんてことを言ってるんだ。

「その。さっき、慰めてあげられるって言いましたよね」

夜空が美しい。そんな時にこんな話をするのはなんだか情けないけれど。僕としては立派な悩みなのだ。

「本当に、できるんですか?」

どうしてこんなことを、僕はノンケなのに、いったい何を言おうとしてるんだろう。ただ、デイビッドの金色の瞳に吸い込まれるで、なんでだか心臓がどくどくと動くのを感じているのだった。

どうしてしまったんだろう。

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一日二回は聞いてない! 緋奈 椋 @omotimotiti

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