第6話 ダブルベッド

僕を待っていたのは、ダブルベッドのある部屋だった。というか、部屋の方が待っていたというべきか。

目が覚めた僕は、部屋着に着替えたデイビッドにココアを飲ませてもらった。甘さが薄くてすっきりしたその味は、僕の脳みそをはっきりとさせた。

「どうしたんだろう、僕、急に眠くなって、それで」

「おそらく誰かが混ぜた睡眠薬でしょうね、たちの悪い悪戯をするものだ」

デイビッドが僕の隣に座る。ベッドに大男が二人、距離が近い。

僕が離れようとすると、デイビッドもついてくる。僕はそんな彼を邪険に扱った。

「あの、僕ノンケなんで。あなたとは、そういうことをするつもりはありませんので」

「そういうことって? 僕は何もあなたに要求しませんよ」

なんでこんなに日本語が上手いんだろう。イントネーションも抜群だ。まるで昔から日本に住んでいたみたいだ。

「ねえ、そういうことって、どういうことです?」

思わず顔が赤くなって、僕は怒鳴っていた。

「どうもこうもあるもんか!」

デイビッドはくすくす笑って僕を揶揄った。

「可愛い、怒ってるんですか」

「か、可愛い? 僕が?」

やはりデイビッドという男はわからない。僕が睡眠剤を投入された飲み物を飲んだからって、ここまで面倒を見てくれることもないだろうに。

と思ってから僕は気づく。

絶対この男、見返りに僕の体を差し出せと要求してくるぞ。

そうだ、そうに決まってる。

そうと決まればここから逃げなくては。僕が出口を探していると、なんと、あろうことか!

デイビッドが慣れた手つきで僕のベルトを引き抜いた!

「なっ」

「ふうむ、性不全ですね」

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