第7話
第2話
7
一週間後、社長はクリステルと山口美江を社長室に呼び出した。
「クリステルさん、準備はいいですね」
「はい。だいじょうぶです」
「ではこれから相手の事務所に行きます。できるだけこちらに条件がよくなるように売買交渉してください」
「もちろんそのつもりですが、相手の事務所の顧問弁護士、かなり優秀な人です。ですからどうなるかわかりません」
「そんなことはわかっています。相手の事務所はモンパルナスタワーの中に事務所を構えているくらいですから。そういう事務所の顧問弁護士ですから、それなりの人であることぐらいはわかります」
「私たちの事務所は倉庫のような小さいビルにある事務所ですからね」
「山口美江さん、少し言いすぎですよ」
「すいません、社長」
「では山口美江さん、車お願いします」
山口美江はさっそく自動車を事務所が入っている雑居ビルの前に運転してきた。社長とクリステルは車の後部座席に乗り込んだ。
「山口美江さん、行ってください」
「はい、社長」
山口美江が自動車を走りださせると、社長とクリステルの二人の会話が始まった。
「この前にも言ったように、私たちの事務所、今度は音楽の分野にも進出したいのです。クリステルさん」
「はい、わかりました」
「そのためにどうしてもシャンソンが必要なのです」
「フランスはシャンソンの国ですからね」
「フランスでは、日本人やアジア人が活躍できる場所には制限があります。フランス人にとって興味のある国はやはりアメリカ、イギリスで、日本そしてアジアに興味を持っている人はほとんどいません。ですから何としてもフランスの人たちになじみのある曲が必要なのです」
「それを足掛かりにしたいのですね」
「そうです。それがうまくいきフランスの人たちに受け入れられたら、次は日本の曲を積極的に売り込むつもりです。日本にもいい曲がたくさんあります。それなのに日本一国の国内だけで埋もれさせてしまうのはもったいないと思います。もっと積極的に売り込むべきです」
「社長もうすぐです。モンパルナスタワーが見えてきました」
山口美江が、運転しながら言った。 つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます