第6話
6
パリ控訴裁判所での新人弁護士の宣誓式が終わった。山口美江は、自動車でクリステルを送っていった。
「クリステルさん、これからどうするのですか」
「どうするとは」
「これから弁護士として働いていくのかどうかということです」
「そうですねえ、まだはっきり決めていません」
「決まったらすぐに教えてください」
二人は事務所についた。二人が事務所の中に入ると、社長が出迎えた。
「お帰りなさい。クリステルさんおめでとうございます」
「ありがとうございます」
「二人に話があります」
社長は、二人を社長室に連れて行った。
「今度私たちの事務所は音楽の分野にも進出することにしました」
「新しい事業展開ですね」
山口美江が言った。
「そうです。私たちの事務所は日本人中心の日系の事務所です。そこでこの国フランスにもっと溶け込むため、フランス人にもっと受け入れてもらうためにフランス人にとってなじみのあるシャンソンの曲の権利を買おうと思うのです」
「フランスの音楽といえばやはりシャンソンですからね」
と、山口美江。
「このパリ市内に、同じく日系の芸能事務所があります。そこに所属しているフランス人歌手の持ち歌を買おうと考えています」
「その買った歌を私たちの事務所の曲にしたいということですね」
と、山口美江が言うと、社長が答えた。
「そうです。それでクリステルさん」
社長はクリステルの方を向いた。
「あなたにその曲の売買交渉をしてもらいたいのです」
「私にですか」
クリステルは突然のことだったため少し驚いた。
「そうです、これはいわばあなたにとって弁護士としての初めての仕事かもしれません。あなたにはこれからここの事務所の経営の方もお願いしたいのです」
「事務所の経営ですか」
「そうです。特に法律的なことでです」
「わかりました。わたしにはどこまでできるのかはわかりませんが、できるだけのことはさせていただきたいと思います」
「これが相手先の事務所の資料です。そしてこれが買いたい権利のシャンソンのCDです。よく法的立場で検討しておいてください」
「わかりました」
クリステルはそれら資料とCDを社長から受け取った。 つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます