第8話
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モンパルナス駅の近くにモンパルナスタワーがあった。この超高層ビルの中に、クリステル、山口美江、社長の三人が入っていった。三人はエレベーターに乗って、相手方の事務所がある階に向かった。
「それにしてもすごいエレベーターですね、社長。私たちの事務所のあるビルにはエレベーターはありませんからね」
「階段を使用することはいい運動になりますよ、山口美江さん」
エレベーターが目的の階に着き停止した。ドアが開いた。三人は相手先事務所に向かって廊下を歩いて行った。事務所に着くと職員が三人を出迎えた。
「お待ちしておりました。ではこちらにどうぞ」
三人は、応接室に連れていかれた。
「ここで少しお待ちください。もうすぐ社長が参りますので」
事務所職員が応接室を出ていくと、山口美江がさっそくその部屋の窓から見える景色を見ながら言った。
「社長、すごい景色ですね、パリの街が永遠と見渡せます。いったいこの部屋、どのくらいの高さがあるのでしょうかね」
すると部屋のドアが開いた。二人の男性が入ってきた。一人は、日本人で、もう一人はフランス人であった。
「お待たせしました。私がこの事務所の社長をしております。そしてこの方はここの事務所の顧問をしていただいているフランス弁護士の先生です」
二人が席に着いた。すると山口美江がさっそく尋ねた。
「このモンパルナスタワーってどのくらいの高さがあるのですか。すごく眺めがいいですね」
「210メートルあります。56階あります。後でその56階にある展望デッキにご案内しましょう」
「本当ですか、それはありがたいです」
「さらにその56階からは階段で59階の屋上テラスに行きますよ」
「56階まではエレベーターがあり、そこから59階までは階段ということですね」
「そうです」
これを聞くと山口美江は隣に座っている自分の事務所の社長にささやいた。
「私たちの事務所は56階から59階までに相当しますね、社長」
これを聞いた相手先事務所の社長がほめた。
「では、あなたたちの事務所は一番いいところにあるのですね、すばらしいことです」
これを聞くとクリステルと山口美江の事務所の社長がすぐ言った。
「さっそく売買交渉を始めましょう」 つづく
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