三章
何だこの話は……?
要するに、主人公は少女と見せかけた妊婦だったのだろうか?若しくは恋人を想っている妊婦なのか、想像妊娠と呼ばれるものなのか。或いは少女が妄想で友人の子を妊娠しているという可能性もある。曖昧な文の書き方をしていて俺には考えるより感じて答えを自分で見つけ出すしかないようなものだ。
それにしても、この本のタイトルの意味は何だろう
考えると、やはり妊娠であるような気がしたがその為の行為的な描写もある訳も無い子供向けの本だ。曖昧な文の書き方なのでこれは想像力を膨らませる目的であるのは確かだ。ただそのような意図のための本なのかもしれない。これはこれで感性が動かされるのでいいのかもしれない。
それで気になった
事件は自殺では無いだろう。何者かによる意図的な犯行だ。怨恨からチップや小型刃物やらを身体に入れ込んだ本人は既に考えてない。気が誰かの身体の中にそのようなものを入れる人間などそうそう居ない。
それを考えることが出来た。それが救われた。この本の曖昧な表現の仕方の文章が凝り固まった考えを柔軟にさせる事が出来た。
少なくとも安心感を得られたことは確かだ。
何となく、スバルに相談したくなった。スバルのサイバーページを調べ、スバルへ通信をする。
-はいこんにちは。霊術師のスバルです。-
-こんにちは。俺だ。フリー。-
-おうフリー。どうした?もしかして、また何かあったのか?-
-…っ!よく、分かったな…-
-これ程も悪祭続きじゃあな。嫌でも分かってしまうよ。何か、良くない事でもあったか?-
-事件だ。殺人事件をこの目で見た。-
-ほー?誰かが誰かを殺したのか。-
-いいや、犯人事態は見ていないがな、マアサが取り扱ったあの無人の事件と一緒なんだ。被害者の身体の中から殺害された。-
-まじか。その場を見たんだな?また、殺人…… その妙な殺人事件が、また…。犯人は、見つかってないんだな?-
-ああ。分からない。まさかまた前みたいにあの女性のようにエネルギーで身体にという可能性はあるか-
-分からないな…。手掛かりがゼロだ。この感覚、久しいな。八方塞がりなこの感覚…。どうする事も出来ない。今居る場がそもそも安全なのかも分からないこの感覚…。-
-ああ。それだよ。もしかしたらその状況に今、またなっているかもしれない。-
-だよな…。……。よし。フリー、こっちに来い。何か出来るかは分からないが、君を守りたい。-
礼を言ってスバルの屋敷へ向かう。今回は飛空で向かった。何者かに尾けられる可能性を避けたかったからだ。
スバルは何かの事件の時は九州に居たような気がしたが、あれは偶々実家帰りをしていたらしい。普段は関東に住んでいるのだ。
お茶を持って来てくれた。お菓子も付いてる。美味そうで少し楽しい気持ちになれた。黒が後ろで野球のバッターの振りをする遊びをしていて愛らしい。スバル曰く「君を守る為だよ」と言った。心強い。僕も出来る事を何かしたいが何が出来るのか分からない。スバル曰く何も今は感知をしていないそうだ。その時マアサから返事が来た。やはり同じような心境らしく戸惑っているそうだ。しかし出来る事しかし出来る事しか出来なくて対処の仕方が分からないそうだ。スバルが居てくれたら心強いそうだが
彼に伝えたら「マアサ達自体がこっち来れるか?悪いが俺も気を張っている。」と言ったメッセージをそのままマアサへ送信する。すると直ぐに皆でこちらに来るそうだ。それで先ずはいいのだろうとだ。
全員着くと屋敷に突然人が現れた。いや、人の形をした霊体のようだ。スバルの命令で彼ら全員を養う部屋へ擁護をした。マアサが大変有り難がっていた。その顔は熱っていた。「礼はいい。ゆっくり休めよ。皆。」とスバルは言うが、こういう彼を呈してよく見るととても大人びている。女性とは言えかなり年上のマアサに対しても呼び捨てで対等の身分のような目線から会話をしている。彼もやはり世の中で活躍をしているのだ。結界を張った。一応の為だそうだ。
全員が休んでいる部屋へ行き、皆で話をした。
今回の事件の凶器はまた小型の刃物だが、誰でも誰かの体の中に挿入できる物らしい。つまり、気によって挿入された可能性は低そうだ。それだけでも何やら安心感がある。
そして、自殺の可能性はゼロとの事だ。身体からも経歴やメンタリティからもそのような可能性は確認されていない、との事だ。小型の刃物は何かプラスチックのような物で掴まれているのが確認された。それによって身体の中に挿入されたものだろうという推測だ。つまり、入れたのは眼で確認出来る存在である可能性は高い。人なのかもしれないし、機械なのかもしれない。このような事をするのは人のような気もする。殺人など、機械に定着されているような物は今時でも考えられない。土竜のような闇犯罪人ならともかく……と考えるとまた全方塞がりになり何も考えられなくなってしまう。恐らくという確定でしかない。それでいい。少しでも安心が欲しい。
皆も同じような事を考えていた。人がやった事である可能性が高い、というものでも安心感が得られる。が、可能性だ。このスバルの家からは出ては行けない。今はこうして様子見だ。
「警察仕事……」と言う者が居たがそれは異なる警察署へ任せておけとスバルは言った。これはスバルの社会上の身分の上での判断だとの事だ。暫くの間の休暇を提起させるとの事だ。彼も相当身分の高い者であるのがよく分かる。
「それに、お前達はよく頑張ったしな。あれこれ仕事を。」と言う。彼の優しさに感激をしている場になる。確かに同感で、このような恐らくだがただの単なる殺人の調査は別の署に任せるべきだ。
行き詰まりなのが何とも苦しい。何かはっきりとした手掛かりではないものか
当分の間はこの屋敷からも出ては行けないので、スバルが様々に娯楽を提供するとの事だ。その間の休みは悠々と過ごせていたように思う。スバルの力のお陰で安心できるというものもあったが何も起こらなかったし、寝室も心地が良かったのだ。そのような生活をして精神も充実感が得られた。稽古もスバルは共にしてくれた。
その少しの日数の間のある日、空から何かが落ちてくる光景を僕は目の当たりにした。その時、スバルが偶々居た。彼もそれを目の当たりにし、両手を合わせて何かを唱えた。すると落下物は床に落ちる前に何かのバリアで落ちずに止まった。そしてゆっくりと下に置かれた。
調べてみると銀色で、片方が丸い棒状の物だ。丸の周りに馬の毛のようなものが巻き付かれている。
スバル「これは恐らく昔にマイクと呼ばれた物だな。この丸い部分に声を掛けると声量が膨張をして響かせて聞かせる事が出来る。」
やはり、それか。何故このような物が落ちてきたのだろう。この馬の毛のようなものはこれとは同一体では無い筈だ。物音から気になったのか、部屋の中から皆も出てくる。
スバル「でもまあ、これは邪念物じゃ無い。何で落ちてきたのかは気になるがな。黒。調査出来るか?」
黒「はーい!ちょっと、お空へ行ってきまーす!」
黒が調査に入って皆は警戒をする。何かやって来るかもしれない、そのような危機感からなるものだ。俺も辺りを見回していた。スバルは感知力を上げたらしい。暫くすると黒が帰ってきて「お空にこんなものが!」と何かをスバルに渡した。見てみたい。
「これは……」と彼は言って俺達にも見せてきた。それはどうも何かをよく見る為の小物のようだ。投げられていたのか落とされていたのか何なのかの物らしい。「まさかがらくたを適当に持ってきたんじゃないだろうな?」とスバルが念を押したが黒は「配達員さんが落として行ったという事はそうそう考えられないし、飛び具達も特に異常は無かったよー。」と否定をした。
という事は、これは何者かによって落とされたか投げられた可能性がやはり高い。
「黒!この辺りの空の下を確認してこい!」とスバルが言う。
はーい!と返事をして黒は空へ再び舞っていく。俺達はこのマイクを調べる事にした。
つい最近作られた物のようだ。馬の毛は、雄の馬の毛である事がマアサの知識の為か確認出来た。更に調べると、馬の毛は先が接着剤で固められており、針状にしたようなものだと確認する事が出来た。要するに何者かを刺す為の凶器としていた可能性が有る。マイクは内部が破損していた。意図的に声を響かせる部分が引き千切られていて、後から上部を重ねて蓋をしたような感じだった。何者かに失敗をさせたかったのだろうか?それ以外にこのような事をするのは考えの線としては薄いような。そのように悶々と考えても結論はこれであるような気がする。それはそうとして、念のものでは無い事は確かなのだ。そろそろ帰っても良さそうなのではないか……?
殺人は、まだ油断は出来ない。が、いつまでもこうしてもいられない。スバルには感謝をしているが、何か出来る事を探したい。
皆はスバルの家の中で様子を見ながら休んでいたらいい。俺は何かあったらその時にまた考えよう。彼に願い出たが「却下」だった。
「お前は俺達を舐めてんのか?別に悠々と何もせずに過ごしていたらいいじゃないか。そういう暮らしも贅沢でいいものだぞ。外に出たら何があるか分からないんだぞ?それなのにお前一人だけがそういう我儘をするとな、皆に迷惑が掛かる。お前なら考えられるだろ?」と言われた。そして俺の顔をじっと見る。
スバル「……もしかして君…… 憑かれているのか?」
憑かれている?俺が?自分では至って平然な…… そう言われてみれば確かに何やら頭がじんわりと霧がかかったようになっている気がする。今の俺はおかしいのか……?
スバル「……間違い無いな。今の君は、取り憑かれているんだよ。」
その場が一斉に緊張の場へと化した
マアサ「フ、フリー君が……遂に!?」
スバル「いやいや皆。大丈夫だ。フリーの場合のはまああれだ。彼の元がその、な。あれだからな。普通と違う、と言っておこうか。それだからな。問題ない。気にしなくていい。」
何が何だか分からないような感じで場が妙に静まった。
しかし彼のその言葉は確かに言えている気がする。仕方が無いのかもしれない。俺の元は何せ……
そういう妙なやり取りの後に、空から黒が「スバルさまー!」と戻ってきた。
スバル「おおー!黒!何かあったか?」
黒「これ…!」
黒が巨大にした手の中に絡んでいたものをスバルの目の前に見せた。
生首だった
スバル「! これは一度でも間を置いて言ってから見せて欲しいものだな」
黒「ふええー!いきなりごめんなさい!」
場が騒然としている。
スバル「落ち着け。マアサ、調べられるか?Tにも頼んでおこう。」
マアサ「ええ。引き受けさせて。こちらで調べるわ。」
生首の調査の結果、男性のもので切られたものではなく、千切られたものである事が判明した。それは見ると何となくそう判断出来るような気はした。そして死後数日は経っている……予測通りだ。Tから今メッセージが来た。その生首を送ってくれとの事だ。マアサが生首を飛び具を使用して(スバルの家の)Tの病院に送った。
「あの首からは、何も感じなかったんだよな……」とスバルがぼやく。「何か、変じゃな〜い?スバルさま…」「ああ…。こうも何も感じないとは、唐突に殺害されたのかもしれないよな。そして元々あんまり自己反省をした事の無い者だったのかもな。」
つまりあの人は殺害された事に対して怨念自体を感じてない、という事なのだろうか?殺した者の痕跡などは辿れないのだろうか
スバル「……恐らく、殺害をした側も何も思っていなくて殺したのかもしれない。」
だから何も感じなかったのだろうか?
何となく、今回の海での事件と似ているような気がしたという。何も念を感じないからだというのだが…
スバル「何となく、あの海の事件の犯人とこの生首の殺人犯は同一人物だったりしてな。」
彼の独自の推理だが、彼なりの視点からなっているので甘くは見ていない。
ちなみに生首はこの家の割と近辺であったものらしい。閉鎖された公園で、首のみがあったらしかったが周りに流血が見当たらなかった辺りで殺害はその公園で行われていなかったのが理解できそうだ。何者かが首と身体を切断した後、その公園に置いたのだろうか。何の為に……?
俺はある可能性を思い付いた。
が、それはまだ確定では無い。どの道は、この家からはまだ出てはいけなさそうだという事だろうか。しかし可能性の一線として、スバルには「レーダーを貼っておいてくれ。ひょっとしたら、スバルと黒を狙う者が居るのかもしれない」と言った。
その一言で彼は理解してくれたようだ。気とレーダーを張っていたのだが、その時間中にまた、空から……
オイル缶のようなものが降ってきた。しかも4つ。それらを全て蹴りで跳ね返す姿は見物だった。
やはり、予感は当たってしまったようだ。スバル達を狙う何者かが居るのだ。若しくはこの家までをも狙っているのかもしれない。心当たりは無いか?スバル。黒。
しかし二人は何も心当たりに無いそうだ。
黒はもう一度空へ調査をしに行った。屋敷の中に使用人達が現れて、撒かれてしまったオイルを少量だったのが幸いだったが掃除をしている。「うーぅ。このオイル、ベッタベタ!」「このようなものがお庭に撒かれたら植物達に悪いわ。」「しかもこのオイル、よく見ると微生物が練り込まれているよ!」
!
微生物……
それはどのようなか気になる。見せて貰う。丸が集まって出来たような生物だ。このようなのは見た事が無い。いや、ある。何処かでだが忘れてしまった。確かこれは自然発火をする生物だった筈だ。やはり、この家を燃やすのが目的だったようだ。スバルは凛としている。黒が空から降りてきた。身体が一層膨らんでいて、口の中に何かを詰め込んでいるようだ。地面に着き、口を開けてそれを出す。少年だ。まだ10才も行かないくらいの少年だ。黒の液で絡まれていて、身動きを取れない。
「離してよー!」と叫ぶ。この子がスバル達を狙う犯人か?
純粋さがよく理解できる少年だ。聞くと、オイル缶を投げたり公園に首を置いたのも彼らしい。マイクを投げたのも彼だと言った。「お母さんを殺したから」と言うのだ。
しかし、スバル達は殺人を「少なくとも今の所は一度も人を殺した事ないんだよな」と言った。「硬い物で全身を打撲して殺したろ!」と少年は言う。「知らねえよ。誰かと勘違いしてるんじゃないか?」「いや確かにお前なんだ!」
スバルは黙る。マアサが話に入った。「お兄ちゃん。私がその話を聞くよ。このおじさんが、君のお母さんを殺したの?」
「うん。そうだよ。」「私は警察官なの。そういう事があったなら、事件として証拠にあるわ。調べるから、具体的な事を教えて。」少年は頷く。事件発生の日付や時刻などを検索しているみたいだ。状況はこの子が説明をしたようなものだ。
「あ!多分これかしら?」
昼間に起こったもので、買い物中の親子が襲われた事件だ。母親は練り上げられた鉄のような物で打撲を複数回受け、ショックにより死亡をした。少年は殺人犯から逃避が成功。犯人はその場で取り押さえられた。動機は「蝶の写真を奪ったから」だった。犯人は運転手を仕事としている。昆虫集めを趣味としているが、蝶の死骸人形だけが無くなっており、それを被害者が盗んだ為なのだと言ったが被害者にそのような事をした形跡は無いとの事だ。尚、被害者の名前はトガリ アンナ。絵を描く事を趣味としている専業主婦だ。加害者の名前はスバル(苗字不明)だ。
そもそも写真と死骸の人形は異なるのだが。絵を描くのが趣味、か。その人はもしかして、かなりリアリティの高い絵を描くのだろうか。例えばこの場合なら、本物の蝶がそこに居るみたいな絵を描けるのだろうか。
マアサ「あのね、お兄ちゃん。このおじさんは確かに名前をスバルと言うのだけれど、見た目もよく似ていた?」
「うん。デカかったし。」
マアサ「せかっこうだけでは判断するのは難しいのよねえ。」
スバル「背丈や名前が同じだったからって犯人がその人とは限らないんだぞ。と、おじさんが教えてやる。」
マアサ「この事件の犯人はね、今は牢屋の中に入っているのよ。」
「牢屋の中……。それは教えられた。けど、名前とせがおんなじとか!」
マアサ「世の中は君が思っている以上に広いのよ?ユウマ君。」
「! おれの名前」
マアサ「そういう訳だからね。このおじさん……本当は君と5つ位しか違わないのだけど、ううん君からしたら結構な歳の差だろうけど、君のお母さんを殺した犯人じゃ無いのよ。」
「………ほんとう?」
マアサ「本当よ。信じていいわ。スバル君ったら有名人だし、縦に長いから同一人物だと認識をしてしまった訳ね。」
たったそれだけの事で殺人犯扱いをされてしまうのは子供なので仕方が無いのだろうか
僕なら「もう少し冷静になれよ」と言いたくなってしまう
首は何処から見つけたのかを訊いたらマアサが「あっ!そうか!」と思い出したように言った。
何でも廃棄工場で見つかったらしい。そこには身体と首が分離されていた死体が横たわっていたのだとか。首だけを持って行って、この家の近くの公園に置いておけば黒が来るかと思っていたのだそうだ。先にマイクを投げ込んだそうだ。スバルの霊体の黒の動向を伺う為らしい。ここ最近で何日も家から出ていないから霊体で飛空も出来る黒を動かさせるのでは無いかと思ったらしい。案の定、空を飛空する黒を見つけた。マイクは公園で見つけた物らしい。二つ共投げ方は玩具の砲による発射投げだ。首を投げたのはスバルを家の外に出せそうだと思ったり威嚇を与えたかったからだそうだ。次にオイルを数個投げたのは、いっその事、この家を燃やしてしまおうと思ったかららしい。少年の考える事にしては凄惨さが働いている。微生物は自然発火のするオイル生存性のものを入手した。仕入れ先は……
…………
とんでもない事だ。仕入れ先は、火星だ。この微生物は、恐らく火星の微生物だ。地球にはこのような者は見た事が無かった。通常、そのように危ない微生物は安全考慮の為仕入れる者の年齢や身分などを確認する筈なのだか
父親の名義でやっていたそうだ。内緒で父親のアカウントから仕入れていたらしい。「りれきで分かっちゃうわよ。そういう危ないものを送ってもらうと、この家の人がこういうものを貰ったっていうのが分かっちゃうの。」とマアサは言う。少年は謝った。今回は勘違いだったのだから、お父さんには内緒にしておいてあげるとマアサは言った。これで事態は解決をしたが、そもそもこの子は犯人が捕まったのを知らなかったのだろうか?何やら引っ掛かる気がした。
スバル「勉強不足だぞ、お前。背格好だけで決め付けるな。」
悪いが確かだ。
その瞬間、この少年は「危ない」と直感をした。この家の中に入ってきてしまった。俺達は、足元を掬われたのだ。いいや、この少年自体は純粋なのかもしれない。ただ、何かを命令されているのだ。
「なあ少年。誰に命令をされてる?」と問うてみた。「命令?」と周りがぼやく場になっている。少年は顔を直ぐに上に上げた。何かを訴えるような目で俺を見ている。「そう言われてみれば確かになあ。何もそういうのを感じなかったし。」マアサはよく分からないという顔をしている。
少年は左右や前後を確認している。「君以外に誰も居ないよ。」とスバルは言う。少年は安心したような感じで言った。
「お父さんがお母さんを殺したんだよ。」
「僕も殺すって言ってた」
「助けて欲しかったらスバルさんの事を事件の殺人犯人しろって」
何だと?
つまり、牢屋の中の犯人はこの子の父という事か?
マアサがアイコンタクトを送る。
「多分そういうことだと思うわ。犯人は名前を言わなかった。スバル君に擦りつける為かしらね。」
この子の父とスバルに何の因縁関係があるのだろうか?
「まさかの調査ミスが発生するなんて…!私達とした事が…!」
フリー「お父さんがお母さんの事を買い物の時に殺したというのは本当なんだな?」
少年「そうだよ。殺し方も本当の事。家はもう一つ別の家があったの。そこが虫のコレクションになっているよ。」
スバルに殺人の罪を擦り付ける為に自らが犯行を起こし、牢屋の中に入ったという事か…。犯行動悸はそれのようだ。スバルも直接犯人に会いに行きたいと言った。マアサと警察官達もスバルの家を一旦抜けるとの事だ。調査で見逃してしまった所をもう一度調査をし直す為だそうだ。犯人の事をもう一度調べるのだとか。
俺はここで何かが来ないか見張っていようか。それでいいとスバルに言われた。マアサや警官、スバル達はこの家を一旦出た。黒も同行をした。俺が一人居ればこの家のセキュリティは安全だと見做したとの事だ。しかも、話を聞いたりするだけだから少しだけの外出だとの事だ。
この家には使用人が居たのだ。
前は何者かがいるような気がすると言ったが、それはこの事だったのだろう。しかも、かなりの人数が居る。何かあったら彼らに申し出ろとの事だ。
家の中は今はその人達以外は誰も居なくて平和そのものだった。何者かが襲う可能性を考えると本当に俺一人でいいのかと思ったが、使用人達もかなり強いのを見せて貰ったので安心する所はある。
のんびりと休めるといいな。またあの海の件があってからはどうも気が抜けない。
そこに家に何者かの襲撃、か。その発端となる事件も最近に起こった事だったらしいし。
生首に関しては本当に何も知らないらしかった。ただ父からその遺体のある所を教えられて取ってきただけの事だった。
よりにもよって、生首を投げる所がまた物騒だ。そのような事をして何の意味があったのかもマアサ達が問うそうだ。その廃棄工場も警官達の半人が向かった。
俺も現在の世間の動向が気になってアプリを開いて調べてみる。
すると何も変わったような動向は無いように伺えた。……それはつまり俺が遭遇した事は仕向けられた可能性があると考えたくなる。偶然では無いという事だ。このたった今発生したスバルの家への襲撃も何かの偶然だろうか。その廃棄工場の遺体というのも気になる。少年の父が犯人だろうか?
この家に居るのも何やらもどかしい気がしてくるが、うっかりそれで外に出たらスバル達に迷惑が掛かる。じっとしているしか無い。その時Tからメッセージが来た。
-この生首、何かの強い圧で引き千切られているな…。これがあった所は公園だって言ってたか?どうもそれ以前に頭部が潰れているから何かの鉄などか硬いもので押されたように考えているんだよな。その後に公園に頭部だけ置かれたように俺は思うんだ。-
Tの医者としての観察は凄まじい。確かにそれが考えられる。廃棄工場での遺体だったのでその中の何かに打ち付けられたのだろうか。
Tへ今の近況を報告した。するとTから直ぐ返信が。
-確かに今は安全では無いのかもしれないな。俺にもどうしようも無い。ずっとしんどいだろうが、休めているなどを思って対策だろうな。-
Tはまた何かあったら聞くと言った。
礼を言って交わした。その時使用人の一人がやってきた。「申し訳ございません!私はスバル様からフリーさんへ伝言を頂いていました。「あんまりにも外に出たいようだったら」との事です。」
!
スバルは考えていてくれたのか。
すると使用人は頷いて俺を案内してくれた。床下の蓋を開けると、通路があった。「どうぞこちらへ」との事だ。通路の中は補填されている細めの通路だ。潜り抜けると先にまた上へ上がる斜めの道のようなものを見つけた。上がっていくと蓋のようなものが見え、開けると関東の街だった。しかもよく見知った所だ。
俺は外に出たのだ。確かにスバルの家は居心地が良かったし、妄想としても出来ればこれからはあそこを移住の家に出来たらいいななど思っていたくらいだ。しかし、俺は俺で出来ることを探したい気はある。スバルからこういう気が湧くのは俺の元が…と言っていたが俺はそもそもそれでも俺だし、何かあったは対応をする。確かにそれで迷惑を被る事になったら申し訳無いが。その時は俺が責任を持つ。出来る限りのことをする。出来る事を探してしたい。そういう自分は子供なのかもしれないが。少年の言っていた廃棄工場とやらを探したい。この辺りで廃棄工場を検索する。幾つか出てきた。ふとある所に目が止まった。その工場は周りが緑で覆われており、かなり前にもぬけの殻となったようだ。10年以上も前だ。
何故この工場が気になってしまったのか、俺には分からない。何と無く、この工場へ向かった。遺体がかなり見つかっていなかったからだろうか?こういった、誰にも見つからなさそうな感じの工場なら殺人をし易そうだ。工場が見えてくると、その周りは一斉が緑だらけだ。
その瞬間、俺はここが前の事件の時にレイと皆で敵を倒す仕事で行った廃工場とよく似ているような気がした
あの時は砂埃が多くてよく見えなかったし今は晴れていてよく見えるが雰囲気はよく似ている。
目の前に着き、扉を開けてみる。
暗い。そして埃っぽい。機械も何もかもが作動をしていない。この中の何処かに、流血のような跡など無いか……?
この工場を回っていくと遠くに水分が流れたような跡を発見した。近付いて見てみる。
……赤色だろう。暗がりでよくは見えないが、血で確定だろう。しかもよく見てみると、乾いてから割と最近のものだ。
確定だ。この工場の中で、事件が起こったのだろう。しかし違和感に気付いた。何かが足りない。
……首から下の身体と思われるものが無い。
それはおかしい。
ここには誰も干渉をしようとは大抵は思えないだろうし 少年の父も以前から捕まっているので有り得ない筈だし
少し、この場は危険であるように思った。直ぐに出た方がいいのかもしれない。
誰が首から下の遺体を持ち去ったのか……?
それを考えると此処に居るのは不味い気がした
数日は経っているだろうが、割と来ているかもしれない。工場を後にし、結構走って行って街並みへ戻ると機器にメッセージが来ていたようだった。実は工場探索の途中で無音で無光にしていたのだ。「何者かに見つかったら不味い」……そう思ったからだ。
メッセージを見てみる。皆からだ。
先ずマアサは「この子のお父さんがお母さんを殺害した犯人で間違い無かったわ。調査の結果、全てが一致をした。「お父さん」の事は調べられなかったのよね。名義では離婚となっていたから。それは本当の事らしいんだけど、よくお家に遊びに来ていたらしいわ。妻の殺害の犯行動機はスバル君で確定のようなのよねえ。ただ、それが……」
マアサからはここで止まっていた。スバルは「単なる妬みっぽかったぜ。金や女が欲しいからっていう理由だよ。そのどちらもあると言われる俺への何か敵対心だか嫉妬だかだよ。参るよな。犯人はこの子供の父親で間違い無かったようだ。会った事も無い人だったし、そろそろ帰る所だがお前は外へ出たのだろ?何かないか?」
Tからは外へ出たんなら気を付けてはおけよとの事だった。
スバル達に関してはご苦労だったとしか申し様がない。急いで帰っているとの事だ。返事は淡々とした。やはりマアサ達も一緒らしい。まだ気が抜ける訳では無いからだ。俺もスバルの家に帰る事にした。謎の生首の出所の正体を掴めたかもしれないからだ。
この事はメッセージで先に皆に伝えておいた。その工場をまだ発見していなかったらしく、場所を教えた。別の廃棄工場を探していたらしかった。そこに捜査員が向かう事になったが俺の証言上で気を付けて行くとの事だ。
スバルの家に帰ると皆居た。しかし窶れているような感じだ。かなり疲弊をしたらしい。それは分かる気がした。
「何の為にリスクを犯しながら署へ足を運んだと思ってやがる」とスバルが愚痴っている。「少年もがっかりしていたわよ。捜査は訂正されたけど、こうもみっともない結末はある。けど、足を運んだリスクというものがねえ……」とマアサが言う。
「こうも投げ込まれたり、火事にさせられそうになったり、ユウマは冤罪にさせられていたり、殺されそうに脅かされていたりで、それに対する容疑も有罪なのだそうだ。」
「にしても、こうも見誤っていたのが情けないのよね。」
あの少年、ユウマへ脅迫のメッセージを送ったのは母親の殺害後直ぐらしい。紙にする事を書いて渡したようだ。口外したら殺す……と言われたそうだ。
虫のコレクションでというのも偽物の言動だ。全てはユウマへスバルを殺害させる為にわざわざ犯行を犯してまでもさせる為の行動だったのだ。ユウマは今、児童療養施設へ養われるとの事だ。彼にとってこの件はトラウマになっているだろう。それはやはり皆も同じ意見のようだ。施設もそれを考えているそうだ。施設での平和な日常を提供をして、彼の根深いトラウマを解決させていくそうだ。
これで件は解決だ。
……この件は。
工場での殺人は犯していなかった。
遺体の身体は何処へ消えてしまったのだろう
あのような殺伐とした所にある廃工場に訪れる者はそうそう居ない筈だ。父親はその遺体を発見したのは妻を殺害する前に死体を何処へ埋めようかを考えていたらあの工場を見つけたようだ。その為に中を見調べていたら遺体を見つけたという。「首と身体」が切断された状態で。首はユウマが持ち去り、身体は……?
これが分からないのだ。俺が見た限りでは、何者かの痕跡のようなものは無かった。消されてしまったのかもしれないが。
Tが仕事を終えたらしく「俺もそちらに行ってもいいか?」との事だ。遺体の事で話を交えたいそうだ。Tも含めたい。話しはTによると生首はその工場のプレス機か何かで破損されたのではないかとの事だ。それが頭部の破損か。犯人の父によると、自分が散策をしていた時は遺体の血はまだ鮮血だったそうだ。焦ったが無事に逃げて来れたという。
ここも調査の域に入れるそうだ。すると間も無く調査に入っていた警官達も戻ってきた。彼らの話によると、何者かの形跡も無く、何かしらで流血をしたと思われる乾いた血があったとのこと。警戒を厳重にしていたが結局は最後まで何者も現れる事無かったという。工場内部は廃れていて、何も作動をする事も無さそうだという見解だ。それなので、そこのプレス機で押し潰されたなどは有り得ないだろうという見解だ。
自殺の可能性は無いか?それも不明だ。
ユウマの父親では無いのか?どうも本当に違うらしい。痕跡自体が無いからなのだが。判定をするなら「自殺」だ。それにしても身体が無いというのはおかしい。
警察官達は監視カメラを付けてきたみたいだった。今の所はこれで様子見だそうだ。その時何となく、土竜の首を切って殺害をした中東人イザヤを思い出した。彼はその後に土竜の遺体を首と身体を異空間を作って自分毎括ったのだ。そういう仕方なら痕跡が残らない気がした。工場に入らなくても自分が穴を作って身体を持っていけばいい。
考えられるとしたら、その可能性だ。又はほのような事が出来る者だ。しかしそのような事が出来る者はそうそう居ない。やはり未だ分からないばかりだ。心の何処かでキリサナを殺害したあの男の存在を思い出したり彼である可能性を考えたりなどして混乱をしている。
そもそもあの工場は、街から離れた植物だらけの所にある人目に付く事のない所だ。そこをそもそも知っている人間はこの辺りの人なのだろうか?
考えれば考えるほど謎に思う。流石に不明なので、一旦考えるのを辞める事にした。すると或いは単純にそういう事だったのではないかとも考えられる。監視カメラの映像が気になる。中継は今は出来ないそうだ。電波の状況がすっかりと人目の付かない所に繋げているのでそもそも届かないかもしれないのだとか。そもそも、この時代に幾ら人目に付かなくても何処かには電波が繋げないなどがあるものか?まさかあそこはただの廃墟などでは無いのだろうか
暫く電波の位置を回していたら繋がったようだ。あの廃工場が映る。外側の外観が映った。
おかしいな
何故外側の外観が映るのだろう
中に設置した筈だ
しかも、カメラが地に着いた状態で外観が映っている。
有り得ない。何者かが取り外しをしたのだろうか
「な、ど、どうして……!」
「誰かがあの工場の中に入って行ったんだ!」
警察官達も驚いている。
警官達も帰った後に何者かがあの工場の中に入ったのだ。それは確実だろう。
「という事は……?今なら、痕跡が見つかるかもしれないわ!」
マアサが支度をしている。待て!何も痕跡が無かったんだ。そもそも足跡を残すような人間とは思えない。それを言うと落ち着いてくれた。「ひょっとしたら誰かが出てくるかもしれないわよね。」
そのとうりだし、出て来なかったら工場の裏側かに痕跡が残ってるかもしれない。或いは中に居るかもしれない。出てきたら発見だ。それも無かったら、相手はイザヤのように位置と位置をワープできるか浮遊が出来るか何かだ。何にせよ、こういう観察的な証拠があった。かなりの発見だ。焦らなくても良さそうだ。落ち着いてまた考えればいい。
暫くカメラを見てたら、工場の中が光るのを確認した
中に誰かがいるのか?!
中は遠くてカメラからでは見えない。
マアサが支度をしているようだ。待て!そもそも何も痕跡が無かったのだ。痕跡を残すような存在とは思えない。
このまま見ていて、何者かが現れれば発見だ。何も現れなければそもそも足跡なとを残さない存在だ。イザヤのように位置と位置を転移する者か、浮遊をして痕跡を残さない存在か何かだ。
いずれにせよ、このカメラが発見をした。もう暫く見てみよう。
また暫くカメラを見ていると、光が消えた
そしてそのまま何事も無くなった
「署長!これは行くべきでしょうか?」
俺の場合は、もう少し様子を見ていたいな。しかも今は夜だし、ライトもこちらに気付かれる為付けれないし、中に入ってよくものも見えないのもリスクが高い。空中飛行物をこのように何処かの内部を個人の意志だけで使用するのは法で禁止をされている。
こうしてカメラを置かれているのも何か気になる。
明日の昼頃になったらもう一度調査をしよう。
今日はカメラを付けたまま就寝をした。
翌朝、カメラの画面が消されていた事から壊されているのを理解した。何もつかない。
「……行くか?」とマアサが問う
警官達は頷いた。彼らで調査をするそうだ。俺達はここに居て様子を見てとの事だ。
彼らはあの廃工場へ向かった。彼らから着いた後に連絡があった。カメラは何かで潰されていたそうだ。工場の中は相変わらずも何もなく誰の痕跡も無かったそうだ。
何かがおかしい
確実に痕跡が確認されたというのに、何もおかしな所が無いという事があるものか?浮遊にしようが転移にしようが、何かの痕跡がある筈だ。何をしに昨日の者はこの工場に来たのだろうか?血の跡なども特に変わった所は無いらしい。何も拭き取られてもいないのだそうだ。
……人では無かったのだろうか?
壊されたカメラは聞くだけでも人為的な気がするが
恐らくだが、これもまた俺達に何かが降りかかるかもしれない事並みの謎だ。どうしようも無い。
皆の意見の交わしでこの件もどうにもする事も出来ないものだとし、手を引く事にした。警官達は戻る事しかなかった。が、警官達はそのまま消息が不明となってしまった。幾ら連絡を取っても何も無い。
暫く待っても誰も来ない。結局、二度と帰って来ることは無かった。この件について話し合おうとしたその時に帰ってきた。が、彼らは驚いたような顔をしている。
驚きたいのはこちらだが、彼らは何処で何をしていたのだろうか。それを問うと「分からない」と答えるばかりだった。しかし、ともあれは帰って来れた、と言うべきなのだろうか。一日は何も音沙汰も無かったのだ。何やら安心した。しかしこれは何かしらの意志を感じる。スバルは考え込んでいる。何も感知はしていないようだ。
すると部屋の奥から寝起きの黒が現れた。
「やっほー!おはようーっ!……?!き、君達……どうしたの……?それ……」
黒が帰ってきた彼らを見て驚いている。
俺達は彼らを見ても何も無いんだが……黒は何を見て驚いているのだろう?
「スバルさまー!こ、この人たち……服の裏に何か持ってるよ……!」
スバルは彼らの服の裏を見せてもらう。すると小型の監視カメラが入っていた。黒はスバルから生み出された霊体なので何かと感性が鋭いのだろうか?「ちょっと、何かの念を感じたような気がしたんだよねえ…」と言う。
この監視カメラを急いでマアサに全て渡した。警官達それぞれが一個ずつ持っていた。マアサはカメラを急いで無効にした。よくやったぞ黒とスバルは黒の丸い頭を撫でながら褒める。
彼らが帰ってくる時に何があったのだろうか
意識が曖昧になったりしたらしい。何処かへ連れて行かれる感覚が無かったかを聞くと、分からないと言った。つまり可能性としてはあると思う。景色が暗くなったりしたかを問うと暗くなったというので恐らく可能性は有りだ。その時に仕込まれた可能性はありそうだ。
……と、仮にそのような憶測を立ててもそもそもが憶測だ。それでは物事は語れない。しかしあの工場に行った後のこれだ。何かあるのは間違い無さそうだ。
どうもこちらが監視カメラを設置をしたから相手も同じくこちらに入れたという意図が感じられるような気がする。
もしかしたら、彼らがこちらに帰って来るまでの道のりやこの中のこの会話も聞かれてしまっていたか……?
とするとやはり人為的な気もする。あの工場に光が付いていたのだ。工場の中に……
………
すると僕はとんでもない可能性に行き着いた
そもそもあの工場の中は窓が至る所にあった
そこからある可能性を導き出された
僕はマアサやスバルに願って行かせて貰った。
この件は恐らく何かを見間違えていたのだ。
それによる推理や探索をしていたのだろうか。発見はあったのにあまりにも何も見えてこないのは最初から捉え間違えていたからだ。工場に着き、正面からは入らずその裏側へ回った。
そう。工場の裏、だ。
するとそこにあった。
地下への道の蓋だ。
開けて中に入る
道は一本道だった。
突き当たりまで来る。
どうも後ろから何かが追いかけてきているような気がする。
突き当たりはこの扉だ。
意を決して開ける
するとそこは何かの建物の地下のようだった。
何かしらの遊具などがある。
先に上へ上がる段がある。脚立と呼ばれたものだろうか。このようなものを使用しているとはここは物置としてあれこれ、これから詰め込む予定なのだろうか。
脚立を上り、上の蓋を開ける。少し重いな。防音やらセンサーやら何やらが詰め込まれているもののようか?
という事はここから上がるのは不味いか?
しかしここまで来て、後には引けない。
俺は気を集めて細い板状にし、口から俺の凡ゆるものを圧を加えて潰す効能もある胃液を吹き付けて気を凝固させ、刃物状にした。
この蓋の隣に刃物の先を突き立てるとスルリと切り込みが入った。これを蓋と同じように四角形に切り込みを入れ、完璧に一つの出入り口を作る事ができた。
その瞬間、何やら子供達の声が聞こえてきた。
その際に出来た四角いタイルは下にそっと置いた。
そして脚立をそちらに立て直し、上へ上がる。
すると沢山の子供達が居て遊んでいた。
ここは児童養護施設だ
その瞬間、俺の中で色々繋がったような気がした
突然床下から現れた俺を見て子供達は驚いている。大人達も同じだ。
大人が駆け寄ってきた。
「ど、どうして?ここは…」
「急に下からすみません。驚かせてしまった。事情は後でお話しします。最近保護に入ったユウマ君はいらっしゃいますか?」
「あ、ああ。彼なら今、お父さんとお話を……あっ!」
「大丈夫です。俺は分かっています。」
施設員を押し除けてユウマの元に会った
「あ!お兄ちゃん。フリーさん。」
彼は壁の小窓の外の殺人犯である我が父と話をしていた。
しかし、俺に気が付いたら直ぐに話を辞めてさよならをして小窓を閉鎖して俺に近付いた。父親の顔は見れなくても別に問題は無さそうだろうか。
「ユウマ。あのさ、俺も自分がここに偶然に来たので驚いてるんだけど、君と少しだけ話をしたいんだけどいいか?」
「うん。いいよ。アンネさん。ちょっとこのお兄ちゃんとはなしてもいい?いま、だれもいないおへやをかして。少しだけ。」
「え、ええ。いいわよ。おかしいる?ジュースでも……」
「ううん。いいよ。ね?フリーさん。」
「ああ。突然出てきてしまったし、お気持ちだけで充分です。有難う。では、少しだけお邪魔します。」
俺もまさかこのような場に出るとは予想を上回っていたので動揺をしているのだ。
しかし直ぐに気を取り戻した。部屋に入り次第、先ずメッセージでスバル達にメッセージを送った。-工場の裏に地下道があったんだ。そこを通り抜けたら、ユウマの居る児童養護施設に出た。-とだけ今は送った。
ユウマは既に椅子に座っていた。が、俺には小さかったのでしゃがんで彼と同じ目線になった。
「それ、むしろつかれない?だいじょうぶ?たってはなすのはだめなんだよね。かなりおっきなこえでいわないとならなくなってしまう。ごめんねフリーさん。」
「いいさ。話してもいいんだな?……君が行った工場、偶に君は行ってるのか?」
「ううん。行っていないよ。」
「そうか…。とすると、気を付けた方がいいな。最近、誰かに見られているような感じはしていないか?」
「うん。……ううん?そういえばなんか……そういうときがあるような……」
「聞きたい。それは君のお父さんだとは思わないか?」
「うん。ちがうとおもうよ。あれはなんか、おひめさま……?」
「おひめさま?それはどんな感じの見た目なのかを、絵で簡単に描けるか?」
うん、いいよー。とユウマは「おひめさま」と絵を描いた。見ると真ん中に大きな満月。その真ん中に全身黒色で両手を広げた髪の毛の長いドレスを着ているような女性のようなものが描かれていた。
「これが、おひめさまの絵か?上手く描けているな。」
「でしょー?この人が夜ねるときにあの窓の外に立ってるんだよ。」
そう言ってユウマが指刺したのはこの部屋の窓から見える少し高い建物の上だった。
「その人が、君を見ているような気がするんだな?」
「うん。そうだよー。」
このおひめさまとやらがさっき俺の後を追ってきていた何者かではなかろうか…?
これがこの子の父では無く、工場に行った事も生首を持っていく以降無いのなら、ある種で説明がつくような気がする。
そして、俺の跡を追って来ていた人間の正体。
工場の裏の地下道の先はまさかのユウマの居る児童養護施設。
……あの廃工場で何者かの身体を引き千切って殺害をし、工場裏から出入りをしていた人間。
……………
…………………………
遺体の身体は今、どこにある?
「ユウマ。有難う。おはなしは終わった。」
「うん。絵をみてくれてありがとう。またね。」
「上手な絵だよ。また見せてくれよな。」
俺は施設員に礼を言って正面から出た。
関東の街並みだった。そこから伸びていた道があったのでマップを見ながらあの廃工場へ回り道をしながら戻った。
あの施設人達は下が何処に繋がっているのかを知らないのだろうか?
帰りに自分が開けた穴を謝罪をしながら接着をして元に戻したが、それまではその下がどうなっているのかを知らなかったような感じだった。施設長が正体も有り得ない。あの施設が設立する前からあった枠のようだった。まるで四角い模様がある、みたいな。それも考えると尚更繋がってくるような気はする。少なくとも、あの工場で殺人を犯した犯人だ。
俺はその人物像が視えてきた気がする。カメラを壊し、警官達の服の裏に監視カメラを忍ばせた。
工場に着くと皆が居た。
俺のメッセージを見て自分達も行動をしようと思ったみたいだ。後からメッセージを送る前に既に皆が来ていた。
Tは「今日は休暇なんだ。君がどうなるかと心配だったから様子を見に来たんだ。」と言う。「工場裏があの子供のって… 父親もこの工場に来ていたし、何かあるのか偶然か。いずれにせよと思って、調べに来たんだ。今からお前にメッセージを送ろうと思っていたのだがな。丁度合ったな。そしてな、フリー……」
「あのねフリー君。実は、既に、居るのよね。」
「? 既に居る、とは?」
「私達の探している人。」
既に捕えてあるというのだ。やはり、この工場の中に既に戻っていたのか
皆が工場の中へ俺を連れて行く。
中に入ってある機械まで案内をされると、そこに寄り掛かるようにしてその犯人がいた
…………予想通りだ
兄さん。
この男は、俺がかなり前の事件の時に一緒の仕事をしていた時に重要な情報をくれた人当たりの良さそうな青年だ。
あの後はある外星人の元で働いていると言っていた筈だが……
「この人が事件の犯人よ。偶々ここに血を拭き取ろうとして来たのですって。」
兄さんは俺を見て俯いた。
「フリー君。久し振りだね。」と言った。
「兄さん。どうして貴方は、殺人を犯しましたか?そもそもあの人は何者なのです?今身体は何処に?痕跡はどのようにして……」
「うん。……話す。あのさ、家の為。」
「家?」
「そう。家が貧相になったから、ちょっとあの人 近所の裕福な人を殺したんだ。何と無く八つ当たりしたかったらあの人の頭をこの辺の機械でこう、挟んで…… 手で押したら動くんだよこれ。そしたらガッチリ挟まって抜けなくなったから、思い切り足を持ってこうやって引っ張ったんだ。そしたら、もげたよ。首から上が。元の殺人は薬を仕込んだ。」
「その遺体の生首は無くて、身体は今どこに?」
「臓器提供をしたよ。偉い所へ送っちゃったからどこにも無いよ。」
「痕跡は」
「ガクルスを覚えてるかい?」
「なるほど。要するに、彼の羽で飛んで足跡も何も付けなかったのですね。」
「そうだよ。しかし彼も「お前のした事は生涯を掛けても逃避の出来無い事なのだ。私は見守ってやる。が、冥福というのを祈れ。」と言っていたよ。叱られたよ。こってりと。」
「やはり、彼は悪者では無いのですね。そのとうりです。」
「ガクルスに関しては私達で問うわ。」
「彼も犯罪人だよな。……これで、この件は解決、か?」
「多分な。」とスバルは言う。遺体の提出先も調べる予定だそうだ。「無理だと思うよ。」と兄さんは言うがその言葉でマアサは顔色を青くした。それで俺も察しが付いた。
スバルやTも同じのようだ。この辺は触れないで置いた方がいいのかもしれない。
殺して直ぐは、遺体をそのままにしておいたらしい。どうしたらいいのか分からなかったそうだ。殺害はガクルスの居ない間に行ったが帰ってから「お前は何をした!」と何かを勘付かれたそうだ。
工場裏の光。これは「ああ。酒飲みだよ。」と言う。監視カメラは見つけたから仕事の時のよく壊せる武器で壊した。警官達へは変わり物のあるサイバー上での店から、意識が朦朧とする程強い脳神経麻痺を一時的に起こさせる粉を購入したのだそうだ。それを予め、工場内に撒いた。警官達の意識が薄れている所をこの工場から少しだけ離れた建物、あの児童施設の屋上から小型の玩具発砲具で小型の監視カメラをそれぞれ一人ずつに狙いを定めて撃ったそうだ。
警官達はその後ものの一日程、工場の周りの木々を回っていたという。
用事は、何かある度にガクルスにお願いをしていたそうだ。
彼も然るべき報いを受けなければならない。今回は本当に悪事に手を伸ばしてしまった。発覚をした時点で素直に警察へ告白すべきだというのに。
この最高の謎の廃工場の事件はこのような真相だったのだ。
事態はこれで解決をしたものだと思われる。
これ自体は。
地下道を通っている時の俺の後を尾けてきた人間や「おひめさま」の正体がこの兄さんとは思えなかった
この工場自体は謎だ
マアサ達は兄さんを拘束したまま署へ気を付けながら向かうそうだ。監視カメラを入れてきた理由なども単に仕返しの為というものだった。こちらの様子を伺ってはいなかった。
Tは俺達との行動に参加をしたいとの事で、仕事を不定期に休む事にした。医者なのにそのような事をしても許されるとは流石名医だ。代わりの医者が居るのだそうだ。Tに感謝をしなきゃと思ったが彼は自ら調べてみたいのだろう。元々よく考えられるので自分でもそうしてみたいのだろうか。医者の腕だけではなく、それ以外の日常的な事でも難なく出来そうだ。警察事も出来るのだろう…。
恐らく、女性が居たら彼に対して好意を寄せていた筈だ。Tの行動がとても有難く、心強い。お陰で安心出来そうだ。
そう。まだそもそも外に出る事自体が良い訳では無い。
その時、スバルがピクリとした
彼の眉間に皺が寄っているのがよく分かる
黒も何やら一緒に感じているようだ
彼はゆっくりと顔を後ろに振り向かせている
黒も同じくゆっくりと回る
そしてある視線で止まった
俺も見てみる
すると後にした工場の向こうの崖の上に何かが居る
この夜の空、自然が多い為か星達がよく見える
その下に、髪の長くてロングドレスを着た者が居た
こちらを見ているようにも見えた
その瞬間俺は恐ろしいような美しいような感覚になった
「気に囚われるなフリー」
そう言われてスバルから視覚を手で奪われた。
「あれは禍々しいものだ」
その時何やら気を取り戻した
そしてあれをもう一度よく見ようとスバルの手を退けようとしたが「見ない方がいい」と鷹を括られた。
あれが俺の後を尾けてきていたかもしれないのだと言ったら「あれは不味い」と言う
正体を問うと「昆虫の集まりだ」と言われた
そういうスバルの目線は何やら左右を交互に見返している。
俺も見てみるとドレスの者の少し向かい隣の木の側に何者かが居る気がした
その者がドレスの者を釣り糸か何かで操っているように見えた気がした
その者の事もよく見てみたかったがスバルから「見るな。急ぐぞ」と言われ、無理矢理正面に向き直された。そのままスバルの家へと戻る。
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