二章
二章
身体中から力が抜けた。ここなら落ち着ける。俺の表情に出てたみたいで飲み物や食べ物などを持って来てくれた。そういえばまた暫く食ってない。優しい言葉もかけてくれた。どうして僕はこれ程までも追われているのか
調査でも未だ分かっていないみたいでどの道僕を擁護しようとしていたみたいだった
マアサは別の場所を調査すると言っていた。暫くするとTもやってきた。「仕事ちょっと一瞬抜けて来た!あの映像がレイを攫った本人か…!」と気が上がっていた。俺の様子を見に来たみたいだった。特にいつも通りでおかしくはなさそうな顔色をしているな、との事。Tも気にしてくれているみたいだ。暇があったら俺も調査をすると言っていた。俺も俺で何かをしたかったので、署の機器を借りて調べ物をする事にした。
最近の世間の動向について
最近は妙な殺人事件は発生していなくて平和だ。が「死亡した同僚を見かけた」「偽物の地上波番組多発。乗っ取りか?」「海上の「船の中」で人が水没」などなど妙な事件のトピックばかりだ
これはこれで気になるものはある。もしかしたらあの本体がやっている事なのか、そもそも世界は今もどうも混乱している。この原因はあの本体ただ一人で合っているのだろうか。
ふと何者かの視線を感じる。振り向いて見るとあの警察官だった。俺の事を見ていたあの警察官だ。そういえばこうやって俺の事を見ていた警官が前に居た。それと同一人物のようだ。顔立ちは……
夢の中の人物にソックリだった
寒気のようなものが走った
やはり、ここにも逃げ場など無いのだな
思わず「貴方は何者ですか?」と言ってしまった。すると警官は顔が別人に変わった。元の顔立ちじゃなくなった。人当たりの良さそうな顔立ちに変わった。骨格丸ごと変わったのだ。誰から見てもおかしくないような感じの表情で「はい!フリーさん。如何なされましたか?」と明るい声色で言った。少し怯えを感じた。
マアサは気が付いて居ないのだろうか
「どうして俺の事を監視していましたか?」と問うと「え?僕が?うーん。覚えはないですけどねえ…。今はこうしてフリーさんを見守っていますけどね!」と返ってきた
署内の誰もがこの人を疑っていないのだろうか
今目の前に居るのは「本体」本人の筈だ
俺は何処に居ても追われるんだ。
署内の人も「その人はよくやるやり手だよー!」みたいな事を言うばかりだ
何か打つ手はないか
この署からは出られないだろう。安堵をした筈の場が一気に危険地帯に足を踏み入れているような感覚だが何となく、本当に何となくだが内の何処かではそのような予感をしていたものはあったので動揺の振り幅自体は広くない。俺は「そうですか。応援してますね。」と言った。一旦これで凌ごう。目の前に居るのに何とも惜しい気もするが致し方無い。椅子に座り直し、機器を触る。その時の彼の動作を確認してみるが何も感じなかった。機器でメッセージを書く。
-今署に居るんだが、ここに俺を尾け回していた存在の本体みたいな雰囲気の人が居る。警官の格好をしているが本人だ-
マアサと少し前に仕事に戻ったTだ。
返事がマアサから直ぐに来た。
-承知した-
それはまるで彼女も最初から何かを分かっていたかのようだ
本当に安心をしていいのかそれともまだ油断ならないのか、それさえも分からない。
-少し待って-と来た。僕には何も出来なくてただ待つしかないように思う
署内の人間も全員ほぼ敵にしか見えない
優しくしてくれるが、それに縋るしか無い
こうして見守られている間は少なくとも俺を攻撃する事はできない筈だ。本来このように汚れた考え方は好まないのだが、こういう状況の場合は致し方が無い。本人は至って普通の表情をして立っている。周りの警官達と談笑のようなものをして和みを取る。成る可く気を安らげる事にした。思い浮かんだ言葉で和みを取り、和みを取り、時に笑いを取ったりして気を安らげるように努めていたら「ただいまー!」と活気な女性の声が聞こえてきて俺の元に現れた。マアサだ。
何気に安心をした。俺の元に駆け寄り「あの一人で立ってる警官の事よね?」と言ってきた。頷く。マアサがあの人の元へ行く。そして「貴方はうちの者じゃないわね?」と言った。「派遣されてきました。」と返した。
「派遣を受け入れた覚えは無いわよ。あんただあれ?」「僕はこのとうり…」「そういうネームを見せられても分からないわよ。いいわ。こっちへおいで。」
その人はマアサに連れられて行く。部屋の外へと出るようだ。辺りは平穏に戻った。
「なあ、あの人さ、うちに居たか…?」
「いや覚えがないんだが…」
妙な会話だ。さっきまであの人を称賛していた筈だったのだが。今度こそ俺は助かっただろうか。妙な確信があったが今までの事があった所為か気が全て抜けない。それでいいのかも知れないが。
署内のある人が「こんなの見つけました!」とやってきた。俺の家の捜索のようだった。袋に入れられて何かを持っている。見せて貰う。黒色だ。何かねっとりと… 大便のようだ。前にもこのようなことがあった。「俺のかも知れないだろ?」と問うてみた。「いいえ。それは無いです。検査の結果、小動物のものである事が確認されています。」何かが繋がった。
「何処にありましたか?」「君の家の物置場の裏からですよ。」恐らく、本体の足跡だろうか。「辺りを全て探し尽くしたと思っていましたが、このとうりに有りました!何かの痕跡!」「そこから持ち主の追跡は」「不可能でした…。これが一つだけのように落ちていたのでどうにもならず… 不思議ですねえ。どうやってこの一つだけを落としてきたのでしょうかねえ。他の跡なんて一切残さずに。」
不明だ。とにかくは帰れない。ふと、後ろに視線を感じた。霊体の黒だった。スバルの霊力で作られたペットのようなものだ。つぶらな目と口元が愛らしい。この茫然とした場に癒しを与えてくれた。黒は「ちわーっす!お邪魔しま〜す。フリーさんのご友人で〜す!」と言ってこちらにやってきた。その高い声はほんの少しだけ、癒しを与えてくれた。
「こんにちは。フリーさん。あのね、僕知ってるんだ。君を追いかけてきた者の正体さんの住んでる所」
これは良縁か?教えて欲しいと頼んだ。「いいよ。けど、ある程度は気を付けた方がいい所だよ?」黒は「これは極秘情報なのでフリーさんだけに今は!」と言い俺の耳に口を当ててきた。
「意外かも知れないけど、この署の裏側近辺なんだ」
その瞬間、僕の心臓は高鳴った。
この署の、裏側……?
この署の裏側は、自然があって簡素としていた筈だ
この署の裏側とは……?
黒「そのままの意味だよ〜」
純粋な子のように言う。
俺は「ちょっと、この子から教えて貰った所に行きたいのでこれで失礼します。皆さん今まで有難うございました。」と言って取り敢えずは出入り口から署を出る。「あ、待って!僕達も行こうか?危険だよ!」と言われたが「いいえ。大丈夫です。鍛えているんで。それに、多分見知った人なので。マアサなら大丈夫ですよ。俺には何とも無いと分かっている。」と言ってみると「君がそう言うなら…」と許してくれた。黒と一緒に署を出て、そのまま裏側へ回った。「一応気を引き締めておいてね。」と黒。
やはり、緑があって簡素としているのだが……
自然の音や生き物の鳴き声などで全くそれが居る様子は無い。平和そのものなのだが……
… ……
その瞬間、ふと後ろに居た黒が居なくなっている事に気が付いた。騙されたか?
「いいや、正解。」
俺の直ぐ後ろから何者かが降り立つ音と共にそう聞こえてきた
その声は見知った男性の声だった
振り向いてみるとそこには誰も居なくて… というより黒が居た。
「騙していたのか?」と問うと「ううん。僕はさっきからここに居たよ?」と言う。俺は見えていなかったんだが。黒は俺に何回か声掛けをしていたらしい。が、全くとして耳にも留めていなかったとの事。あった事を話した。「え!」と両手を頬に当てて青くなりながら驚いたような顔をした。「ちょっと、予想以上に危険な人だったなあ〜… ここもまずいかも。直ぐにスバルさまの所へ行こうか!あ、でもその前に…」黒はこの裏側の中央辺りを指差した。「あそこに普段は居るからね?」と言った。目を細めて見てみると月の首飾りのような物が緑の枝に吊り下がっていた。「さ、行こう!また君がどこかへ連れて行かれてしまったらたいへんだー!」
黒と共に駆ける。走ってスバルの元へ行きながら気になって考える。もしや、普段はあそこに気が付かれないように住んでいて警察署で仕事をしているのだろうか?すると俺の事を目視していた警官も納得が出来る。警察官達も動かされていたのだろうか…?マアサはそもそも今の件においては信用をしても良いのだろうか?
そのような事を考えながらスバルの元に向かった。少し乗り物も利用した。そこもかなり広い和式の家だった。九州の家もかなり広い和屋敷だったがこちらのもなかなか。
呼び出しを押すと家の大きめな扉が簡素な音を立てて開き、スバルが現れた。
「よおフリー。おおー黒、おかえり。やっぱしフリーは危なかったんだな?本体が居たんだな?」「そうなのー!フリーさん、取り憑かれちゃって僕が消えちゃったって言ってたんだよー!僕からはフリーさんが何も聞こえていないように見えていたのにー。」「やっぱりあれは居なくなったような感じだったがその根源みたいなのが居たんだな?」「そうだよー。それが何とね、マアサさんの警察署の裏側みたいな所から感じたんだよ〜!」「……マアサが危なくね」
二人は会話をしながら俺を居間へと連れて行ってくれる。マアサの務める警察署の裏側が「本体」の本拠地だった。マアサは残念ながら周りの警官達と同じく気が付いていない、との事だった。しかし場所を突き止める事が出来た限りは安心感がある。死亡していなければの話だが
居間に通され「寛いでくれ」と言われる。スバルは何かを取りに行った。黒が残って話を聞いてくれた。
本体は生きている者らしい。そして纏っている怨念のようなものが強いらしい。それは俺に対して向けられたものであるらしい。俺が体で感じたあの声は「本体」のもので間違い無いそうだ。怨念というものが作り出した場所に「連れて行かれた」らしい。黒が見えなかったのもそれが原因だ。あの時は外出中…というか署の中に居た。俺の事を見ていた。その後にマアサに連れて行かれ、で以上だ。
ふと気になってメッセージを見るとマアサからかなり前に返事が来ていた。
-フリー君。この人の事を疑っているの?何か、言っている事がしどろもどろで辻褄が合っているようなないような、よく分からない言動をするのよね。-
マアサから来たメッセージを黒にも見せた。
多分マアサも騙されている、との事だ。
そのように思わせられているのは彼の言葉か怨念による目眩しであるという推測。
-その言動は覚えは無いか?-と聞いてみた
俺達も見知っている人物であったらこの答えに有りだと言ったらほぼ確定的に誰なのか想像できる。
直ぐに返事は返ってきた。-ええ…。なんか、馬鹿にされているような感覚になるのよね…。-
ほぼ確定か。
スバルもお茶や和菓子を揃えてやって来た。「意識を操作されているみたいだぞ」とハッキリと言った。
-意識を操作されているんだ。そいつが本体だぞ。署の外へ出させるんだ- と送る。直ぐに-なるほど。この私でさえも何か分からないと思ったら、そういうことね……と断定出来る訳は無いわ。が、このように曖昧では確かに仕事上に不必要な存在だわ。フリー君の言う事を信じてみましょう。この人を一度署から出て行かせるわ。-
信用してくれたようだ。スバルが「そう簡単にいくかな」と言った
今の所はこれで打つ手は終わった。やはりまだ帰られないと思うがスバルの家は気を抜けられる気がした。
くれたお茶やお菓子が署のより味が生身でしっとりとした味だ。美味い。すると腹も鳴った。「何か食うか?腹減ってるんだろ。」少し巫山戯た笑みを浮かべてスバルが言ってきた。そういえばまた暫く食べていない。
この状況でやっと安堵をしたのか、言葉に甘える事にした。スバルの料理は懐石料理だった。スバル曰く、本当は客人が数人来る予定だったが急遽別の所へ行ってしまってどうしようかと思っていた所だったと。また豪勢な見た目で鳴る腹も治らずについ食ってしまった。彼の料理は一流並みに美味くて結構な量があったのにまだ入るような気がした!
黒が「スバル様のお料理、美味しいんだよ〜。」と愛らしい笑顔を浮かべて言う。実に満足で満腹で、眠気のようなものも襲ってきた。「おお寝るのか?なら寝室へ行け。俺はちょっとこれ、借りるぜ。」
俺の腕の機器を何気に取られた。
「何に使うつもりだ?」とだけ眠気の中から振り絞って言えたが返ってきた返事は「お前に来たメッセージ達に俺が対応をしてやるよ。マアサとかTとかのな。」俺は彼に礼を言う前に意識を手放してしまった。
目が覚めると太陽が柔らかな赤色の空に染めていた。方向的に、恐らく夕方だ…。スバルの懐石料理を食べた時はすっかり夜だった。また暫くしたらもう夜が来るのか。余程疲れていたのだろうか。寝室で寝かされていた。襖を開けて部屋の外に出ると綺麗な和式の庭園で見蕩れた。これだけ広いのに誰も居ないのか…。しかし誰かが居るような気がするが。
取り敢えずはスバルに会いたい。黒でもいい。何処だ。この屋敷の中を赴くままに歩いて詮索をする。
「ここだよ〜。フリーさ〜ん。」
後ろから聞こえてきた。愛らしい声だ。
振り向くと黒だった。いつの間に突き当たりに居たんだ?
その丸い体を前後にくねらせながらこちらにやってきた。
黒「おはよう!疲れは取れたー?」
疲れは取れた。スバルは今、あの警察署の裏側に居るそうだ。
全ての原因である「本体」を懲らしめる為に向かったそうだ。マアサやTも既に居るとの事。マアサ曰く「まさかこんな直ぐ近くに居たなんて!」と驚いていたような馬鹿にされたような気持ちになったそうだ。署から出させた後は署の扉を閉めたそうだ。その後は「マアサさん!?マアサさーん!?」と声を出して戸を叩いたが、暫くしたら静まって何も動作が無かったそうで帰ったものだと思っていたらしかったが。その後に不思議な事に内に渦巻いていた妙な意識がハッキリと戻ったらしかった。その時にケダモノだと確定をしたらしい。署内にあのような者は居なかったとの事だった。
Tも一連の事を知って騙されたような気になったという。スバルに匿われている俺を知って安堵をしていた様子だったそうだ。その人物も人物かも知れないからという理由で対抗の薬物は持ってきたようだった。
今の状況は本人は見つかって居ない… とのことだ。見張りを裏側に付けてセキュリティも本体に反応するように仕向けたらしいが潜り抜けられる可能性の方が高いのではというスバルやマアサの予測だそうだ。
本体の居場所はスバルが怨念を感じて足取りを追っているとの事だ。詳細はどうも近くや遠くを行ったり来たりのようだが
逃げているのではないか?
黒はメッセージを送信してくれた
黒「どうかなあ〜。その他にも考えられるかも?」
フリー「その他とは?」
黒「例えば、あちこち逃げているように見えて実は何かを「描いている」とか。メッセージを送っている、合図をしている、とかかな?考え過ぎかも知れないけどね。」
その線は無い事は無さそうだ。案外にそうなのかも知れない。
スバルにその案は言っていないのか。言ったらいい。可能性の一つとして。「考え過ぎだと思うから〜」と言って聞かない。「何かする〜?」と催促してくる。娯楽がいくつかあるみたいだ。今はここに居て様子を見るしか無さそうだ。それか黒という真っ黒で丸いのを触る事しか浮かばなかった。
紙重なりの読み物や囲碁や将棋や剣道のようなものまである。
読み物をして気を落ち着けようか。こうして紙媒体を直接手に持つ読み物は大分昔のイメージがある。開いてみてみると文字の全てが昔の言葉で全く読めない。諦めるしか無かった。スバルはかなり和事に長けているようだ。和事に関してのみならず、優秀な人間なのだというのがよく分かる。
俺にこの本達は読めない。囲碁でもやってみようか?以前に何かの情報でやり方を見てみた事があるのだ。黒が対戦相手になってくれた。駒を手に取り、盤に打とうとしたその時。黒の機器に通信が来た。
「ちょっと待っててね〜。」と言い通信をする。するとスバルの声が聞こえてきた。
「黒!今何やってんだよ?!こっち来いよ!」「え!?スバルさまどうしたのー?何があったの?」「追う序でに途中で店行って差し入れ手に入れてくるって言ったろ?玄関に着いたから開けろよ。今回は鍵を頑丈にしておいたから俺でも開けるのしんどいんだよ。黒、開けてくれー。」
直感で、この通信は危ないような気がした。黒の顔も引き攣ったようだ。
黒は無言で通信を切った。
黒「こんな事が起こるなんて……」
フリー「機器にまで… 干渉を……?」
黒は無言で頷いた。
黒「こうやって干渉をしてきたという事は、まずいのかもしれない」「スバルさまの結界も……破られるのかもしれない」
結界が破られる…?
それはどういう意味だ。
黒「そうだよー。その人がこのお家の所にも来ちゃうかもしれない。」
「本体」か!
思考が停止する。とにかくまた何処かへ避難するしか無いのか
しかしこれ以上何処がある?
今この家の外に出ても鉢合わせするかもしれない。
直接待遇するしか無いか?
黒「……フリーさん………直接対面、出来る……?」
やはりそれしか策が無かったようだ。
直接対面。
「本体」と直接対面をして、話すのか交戦をするのか
黒「気を張らないで。固くなったら冷静さを失って逆に不意打ちに遭っちゃうかも。そしたら……」
ああ。分かってる。
恐らく冷静で強い者だ。
交戦に向けて意識を整える。
黒からこの家の地下への避難を促されたが、そうしても見つかるのは時間の問題なだけであるような気がしたのでそっとした。
すると黒は何処かへ急いで向かい、凶器や身を守るようなものやら何やらを持ってきた。いざという時に使えるだろう。
俺は軽いトレーニングをした。
すると家中が途端に真っ暗になった。
黒は驚いている声を少し出した
何も見えない。周りの風景が全て真っ暗だ。何処を見ても何も見えない。
暫くすると途端に明かりが付いて元どうりに明るくなった。
すると少し先に
いた
「本体」だ
土竜だ
フリー「久し振りだな。……土竜?」
黒は目を擦って暗闇から目を慣れさせるとその姿を認識して目を丸くした
土竜「こんにちは。フリー君。元気そうで何よりだよ。追いかけ回してしまって、ごめんな。」
フリー「何かあるのか?」
土竜「僕は元々、君を殺す目的があったんだ。命令された任務だったけどね。そこを殺された。首を切られたんだ。」
フリー「覚えてるよ。殺されたのか?今は霊体で合っているか?」
土竜「それは外れだよ。僕はこのとうりだ。」
フリー「とんでもないものだよね。もしかして、何かのものでもされたの?」
土竜「僕の首を切った中東人はあの後僕の遺体を連れて彼の技で一瞬でエルサレムという所の近辺の遺体保管場へ横にされたんだ。が、何やらこのまま死ぬのは根性が許せなかったのかねえ…。僕は身体で直ぐ上にあった頭に手を付けて首に付けたんだよ。乾いてはいたが、血液がくっついた為か少しだけ、塞がったんだよ。血液を送る為に血の循環が必要だったから、心臓を動かしたんだ。気合いを入れまくったね。そしたら3日間程で多少にくっついてきたんだよ。その間にも脳や体の神経が段々戻ってきて、生き返る事が出来たんだよ。やっぱり病院では無く、薬も無しで完全に遮断された首と体をくっつけるって壮絶な作業だよねえ。」
僕は彼をこの世に無い恐ろしい者を見るような希望に満ちた眼差しを見るような目で彼を見ていた
黒も到底敵わないような感じの目で彼を見ていて開いていた口が塞がらないみたいだ。
首と身体を一刀分断され確かに殺害されたのに自分自身で首を持ち、自らの肢体に無理矢理くっつけて心臓を気合いで動かし血液を循環させ確実に多少でも接着させ全ての神経に意識を戻し生き返ったというのだから
………しかし………
それ以上にこの者はとんでもない存在だと思えないのは何故だろう
その謎は黒も同じみたいだった。どこかぼんやりしたような顔をしている。
土竜「割と単純な理由だよ。君の事を殺して、任務を任せてきた人へ報告をしたい。渡された任務だから。……フフ。」
フリー「分かってないのか?それはあなたの死後に確認させて貰ったが送り主は貴方を騙していたよ。」
土竜「分かってるよ。メッセージの文章の書き方が騙す意識が丸見えだった。」
フリー「!」
土竜「ごめん本当は君と手合わせをしてみたかった。」
フリー「そ、その為に殺人を起こしたり俺の家や夢に現れたりわざわざ警察署の裏側に住んだりする事あるか……?余りの大々的過ぎる貴方の行いには目眩を起こすな」
黒「フリーさん、確かに強いし賢いしかっこいいけどそこまでの事をしなくても……」
土竜「生き返ってからある遊びが出来たんだ。何かの物に僕の意識を憑依させて動かして、何かを取って来させる所から始めて、買い物に迄行かせたり仕事をさせたり出来るようになったんだよ。元々テレパシーから物に意識を与えたりするのは少し出来ていたんだが、体が回復するまでの意識だけの時にそれを集中する事に奮闘しながらやっていたんだ。すると大々的に出来るようになったようだよ。」
フリー「それが、俺が追いかけられていたあの人形か……?」
土竜「そのとうりだよ。君に接触をする為に作ったんだ。声を出す所まではどうも上手く行かなかったようだよ。掠れた声しか出なかったような気がする!低い声になって人形から出たり、高い声になって出たり。」
フリー「生き物の糞は?」
土竜「あれはあると助かるんだよ。意識を宿す時に生命の糞があると、より強い意識で灯しやすいんだ。」
フリー「殺人まで犯さなくても良かっただろう」
土竜「ああ… それか…。日常的にやっていたから特におかしいと思えないのだ。まあ、余分に人様の生命を亡くしてしまって申し訳ないとは思うよ。」
黒「出頭してください。」
土竜「麻薬密売人を仕事としてやっている僕にそれが通用するとでも?」
黒「くうう……」
フリー「では、手合わせをするか?」
土竜「おお、いいのかな?」
この後俺と土竜は軽く身体を使った闘技をこのスバルの家の中で勝手だが交わした。多少に痛みのあるものだったがいい汗の出るものだった。黒も二人を応援した
そして違和感を感じた
土竜「いやあ〜!いい汗だったね!」
フリー「なあ土竜……何か変だと思わないか?」
土竜「ん?何か変……?君の夢の中に出たり、あの警察署の裏で僕の範囲を展開した事かな?あれも君の脳内に意識を憑依させたんだよ。警察署の中で僕の顔を変えたり署内の人間全員の意識を操作したりもしたよ。マアサの意識も操れて、面白かったな。フフ。」
その時、僕の勘は「まだ解決してなどいない」と直感をした
彼の様子からして俺への怨念など考えられなかった
ただ意味無しに殺されたのが理不尽が故に無理にでも生き返ってやった……という、土竜の底強さを圧感させられるものだった。
アイラやスバルも怨念と言っていた筈だった。それは勘違いとは考えられない
俺の気のせいか?
フリー「なあ土竜。俺の夢の中とか家の中でレイを攫った時とかも怨念っぽかった気がしたけど、あれは敢えてそうやって装ってみたのか?雰囲気作り?」
土竜「雰囲気作り?あ、怨念っぽかった?」
フリー「黒色の布みたいなので全身に被っていただろ。あれがそれっぽい雰囲気を出していたぞ。」
土竜「黒い布かあ。それはなかなか雰囲気作りだねえ。僕はそういう信号を身に纏って君に発信した覚えは無いけどねえ。……レイを攫ったのは事実だけどね。」
少し矛盾を覚えた。土竜はレイを攫ったらしい。が、その時の記憶が曖昧だそうだ。チップの映像を見せたら土竜は「これは僕本人だ」と言っていた。しかし何やら不思議な物を見るような目で見ていた。
見るからに僕に対する憎悪が無さそうだ。
前に事件の時には僕を殺害すると言っていたが、あれはやはり彼自身の意志では無かった筈だ。あの後も「不当に死んでしまった」と消化をし切れずにいたのだから。
本当に僕を殺す気でいたのだろうか……
ちょっと擦り傷を与えたかっただけだったのではないだろうか、首を絞めるのは俺が死なないギリギリ辺りまで、など。
フリー「この子の機器にスバルに装って通信をかけたのは?」
土竜「その黒色の丸い霊体みたいな子の機器に?僕が?……… ……………。君への軽い交戦と愛嬌の為にしたものの中にそのような事をしたっけ……?スバルとはそもそも誰だか覚えていないなあ…」
フリー「そういえば貴方は会った事が無かったのだな。おかしいな。それなら尚更有り得ないな」
土竜「そのスバルってもしかして、有名霊能者の少年のスバル君の事?それなら知ってるよ。」
フリー「そうだよ。勘付いたのか。」
土竜「うん。やってないよ。そういうの。」
背筋に冷や水を浴びせられた感覚がした
誰だったんだ 黒の機器に通信をかけたのは
登場する時に真っ暗にしたのも覚えが無くて、ただ呼び出しをしてこの家の中の者に「お客様」認定をされ通して貰ったのだという。彼が言うに、俺達は目に見える距離に来た自分をどうも目視していないみたいだったという。暫くしたら「見えた」ようだったそうだ。
チップを抜いたのは土竜は覚えが無いらしい。枕元に置いたのも知らないとの事だ。しかしメラを掴み攫った映像の人物は確かに自分自身だ……と妙な目で見ながらいう。
レイを攫った目的は「隠さなければならない」と思ったからだそうだ。居場所は自分にしては珍しく、忘れてしまったのだそうだ。死んではいない筈だと。
これらの説明で一貫して確信に至る考え。
「本体」は確かに土竜だった……。この男。しかし。
裏で支配をしている何者かがいる
怨念など知らないと言っているからだ
やはり彼はそのような単純な理由で俺を恨むなどは無かったのだ。プライドを傷つけただろうかと考えたりしたが。「君は強そうだったから気絶させて優位な気分になりたいと思っていたかもしれないけど、殺すつもりは無かったから怨念なんて僕からは沸かないよ。君が僕に対してそういうものがあるだろうなとは思っていたけど予想外にもそうでは無かったと知って安心したな。」と言っていた。
土竜は何者に操られていたのだろうか
俺達に直接干渉をしてきた者は何者か
俺への憎悪がある人物だろう
同一人物で間違い無いだろうか
この家の中に誰かがやってきたようだ
マアサ T スバルだ。「無事だったかフリー!あ!やっぱりお前か!土竜!」と言う。
Tは構えから攻撃体制に入ったが土竜は「ごめんなさい。僕はこの子や貴方達に対して攻撃をするつもりはない」と語った。
俺も自分の考えを話した。スバルは「じゃあ俺がこの人、土竜から感じた怨念は何だったんだ」と言ったが、それこそが土竜か俺達かが何者かに意識を操作されているのだと教えた。
マアサ「操られていたと思ったら、更に裏で操っている誰かが居る訳ね」
と難しそうな顔をした。そのとうりだ。
皆を操っていた土竜を更に裏で誰かが操っていたというのだ。通信の正体もチップを置いたり抜いたりした者も、その人物だろうか。
スバル曰く、今の土竜からは何も怨念のようなものも感じられず感じたものは何だったのだろうかとの事だ。確かに土竜から感じたのだそうだが。
……取り敢えずは、俺は当分また家には帰れないそうだ。何かまた有りそうだとの推測。署へ向かおうかとの事。土竜は裏側に住んで署の皆を欺いてはいたが今はやらないという。「何か僕の居場所が欲しかったから。」という理由だ。
「何なら顔の変化をしてもいいんだよ?あのマアサと話している時の上しか見てないような感じの顔にしてあげようか?」とも言われた。確かに安全なのかもしれない。皆で署に避難するように行く事にした。
黒「土竜さんは怨念付きであそこに住んでいると思っていたんだけどなあー……。外れたか〜」
いや確かにそれは付いていた筈だ。待てよ?そもそも署に着いたからといって皆が安全だという確証は無い。と思ったらスバルが既にレーダーのようなものを張って確認をしているみたいだ。スバルは俺の思索に気付いたのか「問題無い。俺が見張っておく。魂の波長を感じるのは敏感だ。途中であったら何者からのなのかも発見できたら見つけ物だよな。」と言った。そのような彼が居たら安心だ。彼無しだったら署へ行こうがどこへ行こうと同じ罠に掛かる運命だったと考えられるのだが、これを考えるとその全ての原因の者はどうも俺達を 試したい というような意図にも考えられるような…
殺したいのなら騙したりなどせずに一掃していた筈だ。
土竜や俺達を操っている原因人は今、何をしているんだ……?
それが誰なのかも全くも影も視えない。
試しているとしたら、何だ……?
俺達をそもそも当人にとっての腫れ物のように認識をしているのかも分からない。
空は晴れている。が、このどこかに俺達を監視をしている存在がいると考えると妙な気になる。どうしようにもどうする事も出来ないのだ。出来ることはただそれが来ていないかと見張っておくのみ。それをしても騙されるのかもしれない。そしたらどうにも無い事になってしまうだろうか。
当人は俺達を監視してるとしたら一体何がしたいのだろう
俺達は会った事がある人だろうか
無くともその理由というのが見当たらない。俺は名前が無いから「フリー」というあだ名が付いているだけだが出来る事はかなりやれているとの事だ。後は、美形な顔立ちと言われる事くらいだろうか。それ以外は普通の男だ。皆も同じような筈だ。
人物の心当たりを探ったが、誰も出てこない。
気を四方などに付けながら署に着く。
「あ!」と土竜を見て怯えられた。彼を認識しているようだ。「ごめんね。今は何もしないよ。前はちょっと騙していたけどその目的が果たされたからねえ。」マアサが「大丈夫よ。多分……?彼は私達を騙す目的が果たされたわ。それが何ともしょうもない理由だったし、彼の生命力の恐ろしさが理解されたけどね……」と青くなりながら言う。
そしてマアサの説明が繰り広げられる。
全員は打つ手無しだとした。そして得体の知れない恐怖に身を震わせた。誰が自分達を操っているのかも分からないのだ。
スバル「土竜の生命力の凄まじさやそこから成る俺達への意識の干渉も身が震えるが、その土竜をも操っていたという存在がそれ以上に恐ろしい。土竜に限らず、この中の誰かが操られるかもしれない。その綱が無いかを俺は六感から監視をしているんだ。今の所は……無いな。何も。」
マアサ「油断は出来ないのよ。皆も気を付けて…と言っても、どうする事も出来ないのよね…。スバルが頼りしかない。」
スバル「俺に任せるのは結構だが」
スバルに任せる、か。確かに今の頼りの綱は彼だ。誰が俺達に怨念を抱いているのか、突き止められたらいいな。
T「俺も分かる範囲内でならやるわ。流石にスバル程感知出来ないが。」
土竜「この僕の意識まで操られていたとされるからな。君じゃ不可能に近そうだ。スバル君でもどうかな……」
スバル「………。」
T「ん?ちょっと、場が張り詰めているな。仕方のない事だが。」
フリー「何かを感じたのか?」
T「ちょっと耳貸してくれ。……一人だけ、フラフラしたような者を発見……」
俺達はその者を目視して確認した。
警官で真顔なのだが目は剥き出しで口を開けて何処かを見ている。
この緊迫した場の中、一人だけ異様な人物が居る。
恐らくあの人が「操られている」のだろうか?
スバル「俺では分からなかったな…!何でTに感じれて俺には無かったんだ?!」
T「お前はその勘が強過ぎるんだよ。冴え過ぎているんだ。あんな風なのを感じる為には気が抜けている方が出来たりする。あと、緊迫し過ぎ。仕方無いが。」
スバル「……あれこれの手口でやってきているようだな… あれは怨念というよりは自分が抑えられて壊れた何かだな… これはいずれ怨念に変わるのかもしれない。勿論操っている本人のな。土竜。」
土竜「分かるよ。僕の場合はフリー君の目の前に来たら何故か僕の意識に戻っていたんだ。」
スバル「……俺に出来るだろうか?」
フリー「気を付けた方が良さそうとは思う。君にも感じさせなかった程の手際の立つ力の持ち主だろうから。」
スバルは戸惑っている。懐から札を出す。それをその人に向かって放った。周りの皆が「居たのですか!?」と驚いたような顔をする。札はその人へと向かっていき、貼りつき、炎が出た!その人を囲む。
すると炎の勢いが上がった。炎の中から何かが現れる。何やら透明で何なのかはよく認識出来ないもののようだが何かがある。それは上に上がっていく。同時に炎もそれと一緒に上がって行き、その人の体からは炎が無くなった。炎を身に纏ったそれは上へ上へと上がっていき、署内から消え去ろうとした所をスバルは急いで向かい、それの出先を六感で逆探知する。
スバル「………何も見えない……」
スバルは落胆としているようだ
「もう一度!」と言いもう一度する。しかし見えなかったようで疲れて疲弊してしまい、倒れてしまった。黒が「スバルさま!」と駆け寄る。「あ、ああ…。すまないな……」
「この俺でさえ視えなかったんだ。相手は相当だぞ……」
フリー「なあ、あれは 怨恨 で正しいか?」
スバル「そうだよ。それだよ。発信元が全く視えなかった……」
残念そうに顔を沈めている。スバルはよくやった。怨念を飛ばせたし、見るとその人も何が何だかよく分からないような顔をしている。戻ったのだ。スバルは少しだけ笑って真顔になり、空を見つめた。
フリー「お疲れ様。スバル。よくやったよ。君のお陰だ。しかし水を差すようで悪いが、今の怨恨を取り除いてもまた近くの誰かが取り憑かれるかもしれない」
すると皆が一斉に凍りついた
また場は緊迫をしたものになった
皆で周りを見回す。誰か、取り憑かれていないか……?辺り中の顔を見回して、何かおかしな表情をしている者は居ないか、妙な雰囲気をした者は居ないか、言動がおかしな……
とあれやこれやと気になる場だ。一人一人が、緊張をしている。それ過ぎで疲弊をして目眩もしそうなものだ。中には疲れて倒れてしまった者もいた。
スバル「…………………。」
スバル「そこだ」
スバルは冷静に声を発した
そしてある一点を見つめてそこに向かい、手を合わせた
すると宙から何かが降りて来た
そしてそのまま下に落下をした
……花だ。固形物の花だ
植物なのだが、花弁や根が太くて固そうなものだ
しかも花弁の色が見た事の無い色合いをしている
赤、白、紫、黒、黄色、などが真鱈状になって不適当に色合いを帯びている
それが根にも到達をしていて緑の部分は下の方だけだ
フリー「なあスバル。この花のようなものこそが…?」
スバル「そうだよ。怨恨そのものだ。そして発信元の痕跡が少しだけ確認出来たぞ。」
!
これは何という事か彼の才能だ
皆一斉に驚く
そして安堵の声が署の中で発生した
スバル「これは持つだけで怨恨が侵入するもので間違い無いと思う。俺が持つ。」
彼は口から氷の息を吹き、花を凍らせた。
花を手に持ち、粉砕する。
花は砕け散った
スバル「暫くはあれは来ないようにした。俺が逆探知で逆にバリアを張っておいた。が、壊されるのも時間の問題だ。発信元の道筋のようなものが掴めている。皆はいつも通りの仕事に戻ってもいいぞ。フリー、T、土竜。お前達は俺と共に来て欲しい。……願えるか?」
フリー「俺は勿論だ。」
T「俺も勿論行くに決まってるさ。」
土竜「僕も行くに決まってるね。」
スバル「ようし。これから皆で行ってくる。マアサ。後は頼んだ。」
マアサ「ええ。良いわよ。本当は私も行きたかったのだけど……そうなるものよね。」
スバル「お前が来てしまうと危ない可能性がある。」
俺達は一筋の希望を持ち、署を後にした
皆でスバルの後を従く。
彼は何かの波長を手掛かりにしているみたいだ。彼の六感の感知だろうか。
暫く歩いてバスターミナルへ来た
「乗れ」と言われた
バスに乗り、何処かへ向かう。
このように普通に行けるものなのか。スバルがバリアを張ってくれたお陰なのだが
交通の仕方が普通に、何も警戒をしなくても良いものなのだ。一時的なものだが。
それが平和的で驚いた。これから全ての原因に会いに行くとは思えないようだ。空は晴れていて穏やかな日差しだ。人々は今は少し穏やかに活動をしている。心地の良い眠気のようなものが唐突に襲ってきた
瞼が重くなってくる…
この関東の街並みを暫く楽しみたかったが…
あと何停くらいあるのだろうか
暫しの間、眠っておきたい…
僕はそのまま眠ってしまった。ようやく安心して眠れたような感じだ。もう暫く寝ておきたかったがスバルから「降りるぞ。よく眠れたか?悪いが起きる時間だ。」と声をかけられて起きた。余りにも心地が良かったのでもう少し寝ておきたかった。精を出す為にバスを出た後に伸びをする。
スバル「おおー!お前も結構縦幅あるよな。俺と同じくらいだもんな。」
T「おい、今はそういう事を言えるような余裕なんて無いだろうが…」
何の事かは分からなかったがそのように感心だか何だかをしている場合では無い筈だ
やはりある意味緊張をしているから別の話題で気を紛らわそうと思っていたのか
スバルはまた付いて来いとして歩みを進ませる。
辺りは少し簡素な街並みだ。
そういえば、バス停の降りた所のバス停名を思い出せない
そもそもここは関東だっただろうか…?
フリー「なあスバル。ここはどこだ?俺達が降りたバス停名、何て言った?」
スバル「ああ、覚えていないか?ここは「東涌袮(とうわな)だ。」
フリー「関東なのか?ここ……」
T「違うんじゃないか?俺も今まで色んな県とか国行ったけど、そういう名前のバス停は聞いた事ないな……」
スバル「関東だよ。一応。ちょっと東海寄りだけどな。」
!
俺達は並行世界に迷い込んだ可能性は無いか
スバル「言いたい事は分かる。その顔、別世界の日本に迷い込んできたって言いたいんだろ」「残念だが……
当たりだ」
やはりか
いつ、どのタイミングで迷い込んだのかも不思議だ
スバルは何食わぬ顔で進むが
土竜「まあ、君がそんな風に悠々としているのだから、言葉の違いは些細な違いの世界線なのだろうね?」
スバル「うん。そうだよ。」
フリー「並行世界線からこちらの世界線に怨恨を飛ばすなど可能なのか……?」
スバル「力があれば可能だ。俺からの逆探知を遮った者だ。相当な力があるぞ。」
土竜「待った。君は感知を頼りに向かっている筈だ。何故異世界線までの言葉の違いというものも知っている。ここの世界線に来たのは初めてでは無いのか?」
スバル「それも感知だよ。怨恨の逆探知をした時、丸々俺達の世界と同じような感じの日本と言語だが妙に違うようなものが視えたんだ。」
土竜「……言ってはおくけど、君は取り憑かれてはいないのだろうね?」
スバル「勿論。俺は俺だよ。さ、そろそろ着くぞ。」
目の先に妙な屋敷が見えてきた
大正や明治と呼ばれた時の我が国のような建物の造りだ。モダンな安心感や優雅さがある。
その瞬間、何かとリンクしたような気がした。
スバル「さて。気を引き締めろ。これから全ての元凶に会うぞ。」
俺達は気が整えられる
屋敷の目の前に着き、呼び出しをする。
表札には「ツナダマル キリサメ」と読めたような気がした。漢字も少し妙に違った所があって読めなかったのだろう。
暫く待ったが何も無い
誰も出る様子もない
もう一度スバルは呼び出しをする
しかし、いくら待っても反応は無かった……
スバル「おかしいな」
土竜が「僕に任せな」と言い、扉の鍵を何やら触っている。カタカタと音が鳴り、開く音がした。
気が整えられる
入る
……誰も、居ない。
静かだ……
中は綺麗に整えられた部屋だ。少し高級感がある。
中央奥に更に大きな扉があったのが気になった。
一つ一つ、部屋を確認して回りたいがそのような余裕というものが無かったような気がした
皆で奥の中へ行ってみる事にする
床下の敷物が歩きやすさを醸し出している。少し雲に乗ったような感じだ。
扉の前に着くと瞬間的に異様な雰囲気を察知した
皆も同じみたいだった。警戒をしている!
この中に、何者かが居るのだ
スバルの掛け声でもう一度、気を落ち着け、整えた。そして気を入れ
そっと開ける
少し暗い
が、何者かの影を確認した
倒れている何者かと……
立っている者はこちらを振り向いた
その者は影で覆われていて顔はよく見えない
が、同じ男であるのがハッキリとしてて、男である俺でさえも射止められた。
背丈は俺や土竜よりも遥かに有ってとにかく「美青年」だ。言葉は失うし声も出なくなる程の。
が、それは何処かで見た事のある顔である気がした
今目の前に起こっているこれは何事だ
倒れているのは、女性だ
こちらは光が当たって顔がよく見えた
その瞬間、何かとリンクをした
アイラだ。
容姿がほぼ、同じだ
背格好もよく似ている
俺達は目の前にあるこれを理解出来た。
言葉を共有してないが皆、頭がいいので理解出来た。
そして……
この男こそが
元凶人なのだろうか?
男はこちらに向く。
手には大型の刃物を持っていた。手首から足元まである長さだ。
スバル「貴方が、元凶人では……無いよな?」
男が口を開いた。
「残念だが、外れだ。それはこの者だ。」
その声は聞き覚えのある声だった。
「俺が殺害した」と言った。
少し前に殺したので感知していた怨恨はやがて途絶えるとの事だ。
彼曰く、俺達へそのような事をしていたから殺したとの事だ。怨恨を送って俺達を操る。その目的はこの男への攻撃の為だったのだそうだ。「この者の意識から見せて貰っていたが、かなり大変だったな。君達に危害が加えられる事は無くなった。解決だ。全てがな。帰るといい。」と全ては元に戻ったのだという説明だ。
しかしこの女性が気になる。この者はどうも…
スバルもそのように思ってるようだ。「この人はアイラですか?」と問うた。
男は「双子の姉だ。」と答えた。
アイラには双子の姉が居たらしい。名はサナダジョウ キリサナというらしい。スバルが驚いた。アイラの苗字もサナダジョウと言うらしいのだ。
二人は生まれた時にそれぞれ少し異なる世界線の我が国に分離したらしい。生き別れ、だ。それぞれが力をかけて世の中の為になる為だ。
キリサナは、この男に対して謎の恨みを持っていたらしい。怨恨は俺達の世界線にアクセスをした際に何処かへ送り込まれる。
自分の世界では無く、何故俺達の世界へなのかは俺達という強い存在を感じたかららしい。
これで、事態は終わり。全ての要因に解決を指した。
男は優しく帰る事を促した。
全てが終わったように僕達は館の外へと出る。楽しかったな。そういう矛盾したような感じの事を内のどこかで思ってもいた。
皆は… 皆もどうやら何かしらで悶々としているようだ。全てが終わった、か
あの女性、キリサナと言ったか。あの人があの男を何かしらの理由で恨んでいたので力のある俺達を操って武器にしようとしていた…。
そしたら殺されるのは俺達だろうに。一連はそういうものだった。何か腑に落ちなさがあるのは気のせいだと思える訳は何だろうか
気にしないようにするがいいだろうか
同じような事を考えながら俺達は館の外で来た道を戻る。スバルが覚えていたようなのか、悩む事無くバス停まで着き、乗って帰れるそうだ。これで元の世界に繋がる道に行くのだと。そうしたらバス停名が見知った名前になり、戻れたのだと直感をした。
それぞれが元に帰った。元の日常だ。やっと戻ってきた俺の日常だ。仕事が溜まっていた。それをこれから消化させていく。そして偶に思索に耽ったりゲームをしたりなどをして俺の日常は成っている。
世界はすっかりと元の日常になっていた。ただ、偶にあの男の事が過るような気がした。何かどこかで聞いた事のあるような声や背格好だったような気がする。それだけならいいが、不穏さが伴うのは何故なのだろう。確かに以降何も無いが。
-タイムショッピングへようこそ!今回ご紹介をするのはこちら。バウムクーヘン型の、水遊びの玩具。お水を入れて、カラフルボールを入れると……このように!水圧が出来てボールが動くんですねえ!これはお子様も大喜びの…-
子供向けの玩具か。そういえば俺も子供の頃はやっていたな。こういうの。水が泳いで物も動くものだ。中に入ると丁度いい水温と水流が心地よい。泳ぎやすさもある。偶にぶつかってくる物がまたくすぐったかったな。こういうものをまた今やったらどんな感じになるのだろうか。久しぶりに泳ぎでもやろうか。そう考えると海に行きたくなった。
何か魚介類でも序でに捕まえられたらいいものだな。少し微笑をする。
準備に取り掛かる。外出をして歩行で行く。街並みの空気が平和で美味い。色取り取りの街並みを楽しみながら歩きで海へと着く。服は着たままで海の水へ浸る。水圧や水温が心地よい。行く景色が青緑だ。小魚が少し泳いでいたのを手掴みした。程よい冷たさが心地いい。上へ上がって一呼吸をする。海上の空気が心地いい。水平線が向こうに見える。あの海の向こうにはどのような島があるのだろうか……そのような想像にも耽る。これは生きている事自体が喜びを感じている証だ。周りの人々も楽しそうに海で遊んでいる。このまま地球が平和な世界線へ移動をして行くような……そんな気もして心躍る。何気にサーフィンまでしてみたくなった。ボードを取りに向かうと信じられない、いや信じたく無い姿を見た。
体全体が真っ青な人を確認。立っているが目玉が出ており虚な表情を確認。見るからに倒れそうだ。身体がフラフラしている。暫くすると倒れた。そして目玉が飛び出た。口から血も出た。身体中が即座に紫色になって行く
何が起きたんだ!?
直ぐに救急が呼ばれた。
遺体となったこの人を運んで行く。
この海での遊びは暫くの間禁止となった。当分の間は海開きが無い。
遺体は警察署に連れて行かれたらしい。マアサへ連絡入れた。俺は何か不穏な予感がして遺体が連れて行かれた警察署を聞くとマアサの務める所では無かったので署名を教えて貰った。直ぐに向かう。俺は直接現場を目視した証言人でもある筈だ。見たままの事をそのまま教えてあげよう。靴のボタンを押して少し早めに滑って署へ向かう。
警察官達に事情を話したら立派な証言人として受け入れてくれた。話をしたら皆の顔色が青くなっていった。「中から刃物が……?」
遺体が全て紫色になった後、その腹部から小型の刃物のようなものが現れたのだ。
以前にもこのような事があった筈だ。それと全く同じような事が起こっているのだ。その時はその根源を考えたが、今回は何も考える事が出来ない……
が、何かしらの妙な気はこれなのだろうか
その時は根源と思われる者の可能性が提起されたが今回は未だ分からない
今回も何者かの根源のようなものがあるのだろうか?
しかし俺はこの者が死亡する前のものを見ていたんだ。重要人として覚えておかれる事となった。この件はニュースでまた報道されるそうだ。マアサからも後で返事が来て事件を知ったようだった。俺がその場で見ていたのも。いずれTからもメッセージが来た。「また妙な事に巻き込まれたものだな…フリー。俺も調査するわ。医者だけど遺体も調べたいし、起きた現場も独自で調べたい。マアサはよくやるが、それ以外は正直信用はあまりしていなくてな……。」
彼は賢いのだ。自分の方がそこらの警官よりは出来ると言いたいようだ。俺は一旦帰った。
やはり、事態は解決していないのかもしれない。そもそもあの女性、キリサナは何故あの男を恨んでいたのだろうか
あの男自体がそもそも異様な雰囲気を纏っていた事は確かだ。何かをしていてもおかしくないかもしれない。とすると気を付けるべきはあの男や関係していた人々だろうか。
どう気を付けたらいいのかも分からない。また、この感覚だ。
どうする事も出来ないこの感覚。
俺には何とも無い。今の所は。
こうして今の所は、とする所も俺に何らかの事が被る可能性をそもそも考えているという事なのだがな。どうも事件は異様だった。前回と同じようにまた腹部から刃物が現れるなど…… 前回は土竜かキリサナが挿入させたものだろう。今回は?単に物理的に起こった殺人や自殺だったらよい、と言ってしまったら不謹慎だが安心感がある。考えても流石に分からないので、普通に生活をしているしかなかった。辺りは夕方だ。
特に何かをする気にもなれない。仕事は終わった。そもそも外に出ない方が良いのか出た方が良いのかも今は不明だ。
マアサに聞こうと思ったが警察でも分からないだろうか。それを考えると俺は俺なりに行動をした方がいいような気がした。
身動きが取れないというのはあからさまに苦しい。何かあったら俺が攻勢を取ろう。外に出る事にした。図書館へ向かい、読書をする。このような気分の時こそ何か物語を読んで気を紛らわすべきだ。
カテゴリーの中から読み物を選ぶ。神秘や伝説、雑学や楽しい話や動物の事など、何でもいい。色々、見たい。そうやって色々と探って行くと中に気になるものを発見した。
-どうしても、やってみたい?-
そのタイトルに惹かれて中を開けて見てみる。
-チャイはダンといっしょにお茶をのみたかったけど、ダンはどこかとおいいくにへとひっこしてしまった-
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