十七日目 眠り姫

『おはようございます! デイリーボーナスが更新されました!

漂流物:24』


「おはよう、声の人って、なんか多いね!?」


小屋の外のベッドで目覚めて、声の人が教えてくれた漂流物の数に驚いて飛び跳ねる。


「ん~……? もぅ朝なのぉ~……ふぁ~……」

「起こしちゃってごめん! でもなんか漂流物が凄いんだ!」

「なんのはなしよぉ、って、あ! なんで置いてくのよ!」


僕を抱き枕にして寝てたシーラちゃんも起こしちゃったけど、さすがに気になるもんね、しょうがないよね!

慌ててベッドから飛び降りて、小屋の裏手に回る。


「うっわぁ……なにこれ、ゴミの山?」

「ゴミじゃないよ! お宝だよ!!」


シーラちゃんは顔を顰めてるけど、これはすごいよ!

明らかに船の残骸なんだけど、大量の木材が流れ着いてる!!


「これだけあれば小屋も大きくできるよ!」

「あー……アンタの【錬金術】視点ならそうなる訳ね。それなら海底に沢山沈んでるわよ?」

「ホント!? とって来られるかな!?」

「アンタの細腕じゃ無理ねぇ。といってもさすがのあたしも、船の残骸は引っ張って来れないわ」

「そっかぁ、残念だなぁ。船の残骸を組み合わせれば、船自体も【錬成】できると思うんだけど」

「船なんか作っても、どうせ大渦を超えられないわよ?」

「あ、そっか……で、でも、お家は大きくなるよ!?」

「この狭い敷地に大きな家なんて建てられるの?」

「そ、それは……無理だけど。で、でも、滞在者も増えたし、さすがにあの小屋じゃ住みづらいよね!?」

「……あたしは狭くても、アンタが近くにいる方がいい」


そう言いながら、僕の腕に絡みついて上目遣いで見てくるシーラちゃんが可愛いです!


「朝からお盛んじゃのぉ。昨日は何もしなかったようじゃが」


そしておばばさんが現れて、ものすごい勢いで離れて行った。


「ふぁ!? なんでおばばが来たの!?」

「なんでも何も、儂の工房の前でいちゃついていたのはお前達じゃろう?」

「い、いちゃついてなんかいませーん!」

「ほぅ、船の残骸か。何か有用なものは残っておるかの?」

「ちょっと、聞きなさいよ!!」


とりあえず三人で調べてみたけど、壊れた船体の前部が3割くらい流れ着いただけで、特に積み荷っぽい物はないかな。

ただし、ロープが沢山巻き付いていたのと、錨が一個残っていたよ!

ロープはブツ切れだけど、【錬成】すればすぐ直せるし、何より錨だよ! 砂鉄を集めるより全然おっきな鉄が手に入ったのは大きいよ!


いつものルーチンついでに、船の残骸を纏めて板材に【錬成】しておく。

もちろん千切れたロープも【錬成】し直して繋げて新品同様だよ!

碇はまだ手を付けてないけど、これだけ大きいなら色々考えちゃうなぁ。


「い、今のはなんだ!?」


そして物音に警戒しながら小屋から顔を出したレンジさんが、大量の板材に加工されて行く船の残骸を見て、あんぐり口を開けている。


「おはようございます、レンジさん!」

「あ、ああ、おはよう……それで、なんだこの神の御業みたいな状況は……」

「ただの【錬金術】ですよ?」

「れ、錬金術!? 俺の知ってる錬金術は物は浮かばないし、ここまですさまじい規模の物じゃないぞ!?」

「そうなんですか? うちではこれが普通でしたけど?」

「いや、おかしいだろう!?」

「ん~、でもお師匠様とかそのお友達は、僕の何倍も規模が凄いし、錬成速度だってあっという間でしたよ?」

「どこの異界の話だよ、それ……」


どんどん積み上がっていく板材を見つめて、はぁっとため息をつくレンジさん。


「それよりお姫様の容態はどうですか?」

「あ、ああ、落ち着いてはいるのだが……目覚める気配は一向にない」

「あの娘はダメージがでかすぎたからのぉ。生存本能がまだ目覚めるべきではないと警鐘でも鳴らしておるのだろう。その前に坊主よ、大切な事を忘れていないか?」

「な、なにがでしょう?」


しょんぼりするレンジさんの肩をポンとたたき、おばばさんが僕をじーっと見つめてくる。


「飯を喰わねば儂等も死んでしまうぞ!」

「あ!」


おばばさんに言われて、この場の4人全員が一斉にお腹を鳴らす。


「そう言えばお腹すいたわね! ちょっとあたし、潜って獲ってくるわ!」

「そうだね! 僕もパンを焼かないと! おばばさん、ふんわりパンじゃないけどいいですか?」

「もちろんよいぞ。坊主の飯は美味いからのぉ。ほら、お前も突っ立ってないで準備せぬか!」

「え、お、俺か?」

「火ぐらい熾せるであろう? 美味い飯が食いたければ手伝わぬか!」

「あ、ああ……」


というわけで、みんなでご飯の準備を進めるよ!

いつもは僕一人でやってる作業も、三人もいれば楽ちんだね!

あとシーラちゃんがこんもり獲ってきたお魚さん達の下処理も、レンジさんが凄い手際でこなしてくれて助かります!


「く、串打ちならあたしだってやってるわよ!?」

「それはほぼ全部お前の腹の中に行く奴じゃろ?」

「う、ぐ……」


おばばさんに反撃できずに、黙り込んで串打ちを始めたシーラちゃんと、パン生地をこねている僕を見て、レンジさんがふと笑う。


「この程度、騎士の下っ端ならしょっちゅうやってる」

「それって炊き出し的な奴ですか?」

「そうだ。戦時では誰でも手の空いたやつが手伝う事になっていた。騎士団長も芋の皮むきに参加していたぞ」

「戦争かぁ……」


僕には対岸の火の子的な感じだったけど、お師匠さんがたまに教えてくれる戦況は無残の一言だったんだよね……。

やれ今日は何処の村が全滅したとか、流民が押し寄せて城壁で追い払われて酷い有様だとか、戦場近くでは、飢えて死んだ遺体がそこかしこに転がってるとか。


「……戦争なんてするもんじゃない。苦しむのは民草だと姫様はいつも嘆いていた」


お魚さんを捌きつつ、火の番をしながら、レンジさんがぼそりと呟く。


「その姫様をお助けするために、飯を食え。お主までぶっ倒れたら、誰が眠り姫を護るのじゃ?」

「そうだな。……それではいただこう。エスティア様に感謝を」


レンジさんが十字を切って、ぺこりと頭を下げる。

あれはエスティア教の神様の名前だね。

エスティア様って言うのは、僕のいた国の周辺で信仰されている、太陽の神様だよ。

そう言えばザツ国も国を挙げてエスティア様を信仰していたね。

僕は神様とかいまいちピンとこないけど……。

でも僕が今いるのは神獣の上だし、神様はときおり本当に奇跡を起こすから、いるのは間違いないんだけどね。


みんなで準備をした朝食を終え、満腹になったところで、次はお姫様の容態だよ。

僕が視てもさっぱりわからないけど、ゆっくり息をしているし、生きているのは分かるよ。

シーラちゃんは興味が無いと言って、夕食の食材を獲りに行ったよ。

まだ朝なんだけどね?


「ふむ。だいぶ落ち着いたのぉ。やはり坊主の作った薬が覿面だったようじゃ」


姫様の容態を確認して、ふぅっとため息をつくおばばさん。

それを聞いて、あからさまに安堵するのはもちろんレンジさんだよ。


「このまま姫様が目覚めれば、もう大丈夫という事か?」

「そればかりは経過観察せねば何とも言えぬが、大きな後遺症はないと思うぞ。それ程坊主の施術が見事だった。感謝しておくがよい」

「そうか……本当に感謝する」

「や、やめてくださいよ! 錬金術師としてやれることをやっただけなんですから!」

「禁忌に足を二三歩踏み入れておったがのぉ」

「そ、そうなのか!?」


苦笑するおばばさんの言葉を聞いて、レンジさんが青褪める。


「なんかそうらしいんですけど、うちの工房では普通の事なんですよねぇ。でもいけない事らしいので、黙っておいてくれると助かります」

「それは無論。騎士の名誉と我が名に懸けて必ず守ると誓う」

「助かります。それじゃ今から見る事も一応内緒でお願いしますね?」


姫様のシーツや包帯がちょっとお見せできない状態になってるし、女性を脱がすわけにもいかないからこのまま【錬成】しちゃおう。


「な、なんだこれは!?」


姫様のシーツや包帯が綺麗になっていく様を見て、レンジさんがお揃いてるけど、さっき見せたのと同じですよ?


「【生活魔法】を先にかけると、血液成分が無くなっちゃうしね!」

「まぁたお主は、気軽にひょいひょいとその禁忌を使うのぉ」


にじみ出た血液から生成した「血漿分画製剤」をおばばさんに渡したら、ものすごく苦笑されてしまった。


「若いの、何度も念を押すが、この事は他言無用じゃぞ?」

「あ、ああ……もちろん、だが……【錬金術】とはこんなものだったか?」

「お主とは気が合いそうじゃのぉ」


なんか二人がため息をついてるのがよく分からないけど、うちの工房では本当に普通の事なんだけどなぁ。


その後、何度か経過観察しながら、小屋の中をレンジさんに任せて、大量に積み上げた板材の前で思案する。


「これからどうするのじゃ?」

「小屋が小さいと大変かなぁって思っている所です」

「増設でもするのか?」

「それでもいいのですけど、土地が足りないんですよねぇ……」


今のこの島は、小屋を中心にちょっとは大きくなったけど、それでも畑の問題であまり土地が無い。

こうなるとやれることはただ一つなんだけど、材料不足と強度、地盤に問題がなぁ。


「いっその事二階建てにしようかと思ってるんですけど、砂地に二階建てとか大丈夫だと思います?」

「あまり宜しくないとは思うのぉ。アーケロン様が動いたら即倒壊じゃぞ?」

「やっぱりそうですよねぇ……」


こればかりはどうにもならないんだけど……。

と思っていたら、なんか声の人がこんな事を言ってきた。


『3名の滞在時間が規定時間を超えたため、3名を住人に指定できます。住民に指定しますか?「Y/N」』


え? おばばさんとレンジさん達の事? この人達、別に住人じゃないんだけど。


『トピック:住人数が5名になると、島の規模が拡張されます』


「なんですと!? もちろんYですY!!」

「坊主は何を言ってるのじゃ、ってうぉ!? 地面が揺れておる!?」


喜んで答えたら、なんか地面がものすごい揺れ始めた!

これは前に感じたアレだね! やったよシーラちゃん! 島が大きくなるよ!


揺れと共に、島が浮き上がり、波打ち際がみるみる遠ざかっていく。

そして揺れが収まったと同時に、なんか島がまた大きくなったよ!


「こ、これはなんじゃ!? アーケロン島が大きくなった!?」

「いったい何が起こった!?」


おばばさんが驚き、レンジさんも小屋から飛び出してきて、周囲を見て何も言えなくなっちゃった。


今の島は、なんというか土地が優に倍になった感じだね。

小屋があった所を中心に、周囲が一気に広がった感じ。

そして小屋があった所の地面が、砂じゃなくなってる!?

あれはどう見ても土だね! しかもなんか堅そう!


海岸近くに接舷していたおばばさんのシャコガイの工房も、今では打ちあがって砂浜にある。


『状況の更新を行いました! 島の規模を「2DKニーディーケー」から「一戸建て」に変更します!

「畑」の設置が可能になりました!

新たな実績が追加されました!


・三部屋以上ある家を作ろう! 0/1

・畑を配置して作物を植えよう! 0/2

・ベッドを配置しよう! 2/5

・次の報酬までの実績の解除数 0/3

・住民を増やそう! 5/10


島の規模の変更に伴い、島中央部分に「土」を追加しました。

中央部分は地盤が安定しています。「畑」はこの土部分にのみ配置できます。

そのため、家の配置には十分注意してください』


「なんか色々増えた!」

「だからお主は一体何を言っておるのじゃ?」

「ちょっと! あたしが海にいるのに島の規模を弄ったでしょ!? すんごい遠くまで流されたんだから!」


おばばさんが呆れ顔で僕を撫でていたら、なんか海から物凄い形相のシーラちゃんが飛び上がって怒ってる。


「あ、ごめん! 大丈夫だった!?」

「大丈夫なわけないでしょ!? いきなり変な声が聞こえたと思ったら、なんかもう渦が凄くて死んだと思ったわよ!?」

「マーメイルが海で死ぬのは恥じゃのぉ」

「なんか言った!?」

「なにも言っとらんぞ馬鹿娘。さっさと上がってくるがよい。なかなかすごい事になっとるぞ」


人魚形態から元に戻ったシーラちゃんを見て、レンジさんが慌てて顔を逸らす。

そうだねぇ。シーラちゃん、スカートは身に着けてるけど、お尻が丸見えだもん。


「お前はもうちょっと【地上移動ランドムーブ】の訓練をした方がよいのぉ」

「ふぇ? 何の話?」

「坊主以外に尻を見せるなと言ってるのじゃ!」


すぱんっ!


「いったーい! なにすんのよ!?」

「下着はどうした? どうせのその辺に脱ぎ散らかしたままなのじゃろ?」

「あ!? そう言えばパンツ!」

「そう言えばじゃないわ! もっと淑やかさを身に付けんか馬鹿娘!」


すぱんっ!


「いったーい!? なんで二回も叩くのよ!?」

「騎士殿が困っとろうが! さっさと探して穿かんか!」

「うー、わ、わかってるわよー!」


……こればかりはおばばさんの言う通りなので、僕は何も言わないよ!


シーラちゃんが砂浜に落ちてたパンツを拾って穿いたのを確認して、とりあえず全員で小屋に戻る。


「なんか地面になってるわね?」

「声の人が言うには、畑が設置できるらしいよ?」

「声の人って、目覚まし声の人の事?」

「うん。さっき色々教えてもらったんだよ。あとで小屋も大きくしないとね!」


実績解除の報酬欲しいよ、報酬!


「先程も言っていたが、声とはなんじゃ?」

「朝になると聞こえるんですよ。おはようございます!とか」

「儂には聞こえんかったが?」

「俺もだな?」

「え? あたしには聞こえるわよ? ……でもあれ、初日には聞こえなかったかも?」

「もしかしたら、住民指定された人にだけ聞こえるのかな?」


とりあえずこの島の仕様を、今一度全員に説明する。


「勝手に住民にしてごめんなさい!」

「いや、構わぬ。それが島の発展に必要なのだろう?」

「そうだな。いつまで世話になるか分からない以上、発展に貢献するのはやぶさかではない。姫もそうおっしゃるだろう」

「ありがとうございます!」

「……あたし一人のがいいのになぁ」

「え? シーラちゃんなにか言った?」

「な、何も言ってないわよ!?」


なぜか真っ赤な顔になったシーラちゃんに背中をビッターンとかされてとても痛い!


「まぁ、馬鹿娘のやきもち焼きは置いといてじゃ」

「やきもちってなによ!? でも多分焼いてない!!」

「畑の設置が気になるのぉ」

「聞きなさいよ!!」


ぷんすか怒るシーラちゃんには悪いけど、それば僕も気になるんだよね!


「畑の開放はもう終わってるんだけど、どうやるんだろ?」


そう思って地面を見たら、例によってなんか縁どりされた区画が視線の先に浮かぶ。

視線を動かすとそれも動く。なんかとっても不思議。


「これで畑を設置するのかな?」


とりあえず地面と砂浜の境目くらいに移動して、この辺りかなーと思ったら、枠が消えて、なんというかこれは畑だなーという感じの地面が現れた。

大きさは大体綿花畑と同じくらいかな? それよりはちょっと大きい気もする。

と思って綿花畑を見たら、なんかちょっと大きくなってる!?

島の規模が大きくなると、畑の面積も増えるのかな!? 前回椰子の木も増えたし!


「儂は今、白昼夢でも見てるのかのぉ」

「畑が生えましたな、いきなり……」


おばばさんとレンジさんは信じられないものを見たような顔をしてるけど、この島って毎日綿花と椰子の木が生え揃う、不思議な島だよ?


「畑が出来たのはいいけど、何を植えればいいんだろ?」


植えられるものって、麦かお芋か、腐った蜜柑から出てきた種くらいしかないんだよね。

とりあえず麦を一粒掴んで畑を見てみる。

すると畑に小さく枠が浮かんだよ。この中に一粒植えればいいのかな?

お芋の枠は麦の4倍。蜜柑は麦の8倍は大きい。


『トピック:畑に植えられる作物は、作物により必要区画が決まります。成長速度は「区画の幅=日数」です。収穫後、再度植える事でリセットできます』


どうしたもんかと悩んでいたら、声の人が畑の仕様を教えてくれた。

つまり収穫まで、麦は1日、お芋は2日、蜜柑は4日かかるって事ですね! ありがたいです!


「い、今の声はなんだい!?」

「お、俺にも聞こえたぞ!?」


そしておばばさんとレンジさんが驚いて空をきょろきょろ見てる。


「あたしにはしょっちゅう聞こえるけど?」


『トピック:ガイド音声は住人登録された人に漏れなく届く仕様になっております』


「へぇ、そうなんだ? だからシーラちゃんは途中から聞こえるようになったのかな?」

「朝の挨拶みたいなのしか、基本聞こえなかったけどね!」

「なんだか不思議だねぇ。声の人の声の主ってなんだろうね? たぶん女の人の声だけど、これがアーケロン様なのかな?」

「いやぁ、どうかの? 儂の時の信託の声はもっとこう、無機質というか、性別を感じさせぬ声じゃったからのぉ」


そう言えば、おばばさんはアーケロン様の声を聞いたんだっけね!


まぁ、声の人の声の主なんて、考えても分からないし、教えてもくれないだろうからとりあえずこっちに置いといて。


「せっかくだから植えちゃいたいけど……これは悩むなぁ。収穫がどうなるか分からないけど、この不思議な島なら綿花みたいになるかもしれないし、うーん」


そういや、あの綿花畑の綿花に種が付かないような気がするなぁ。

あの状態なら、普通は種があるものだけど、僕は一度も見てないや。

毎日わっさり生えるから、いらないと言えばいらないけどね。


「ふむ? 坊主よ、なにを考えておるのじゃ?」

「ああ、いえ。畑にどうやって植えようかなぁって」


地面に畑のサイズと、作物のサイズを書いて説明する。


「ほほぅ。縦24マス、横24マスの区画に、きっちり植えれば無駄が無いわけじゃな?」

「そういう事になりますね」

「話についていけてないのが正直な所だが……ともかく、半分麦にしてはどうだ? 麦は沢山あればあるほどいい」

「マーメイル的には蜜柑や芋も捨てがたいのぉ。もちろん麦は必須じゃ! パンは素晴らしいモノじゃぞ!」

「蜜柑! 食べた事ないから食べてみたいわ!」


そしてどれをどうやって植えるか話し合いが始まった。

おばばさんもレンジさんも計算ができる人なんだね。

図形を見てうーんって唸ってるシーラちゃんは……包丁技術と一緒に特訓だね!


結局、蜜柑を1区画、その下にお芋、空いたところは全部麦という感じになった。

ひとまずこれで様子を見て、必要に応じて入れ替えをしていこうって感じだね!

麦を全部粉にしなくてよかった! これで後々食いつなげるね!


こうして畑の実績もクリアしたし、あとはお家の拡張と、ベッドの制作だね!

でもさすがに材料が足りないかな? ちょっと図面を引いて考えないと駄目かも。


「あと必要なのは、3部屋以上のお家の制作と、ベッドを人数分なんだけど……」

「今ある材料で足りるの?」

「作ってみないとわかんない」


ベッドを人数分は多分無理かな?

今のところベッドは2つあるけど、それにだって綿が足りなさすぎる。

寝転がると身体が痛いからもうちょっとまともな奴にしたいよね。

それとも、別のクッションを考えた方がいいかな?

そういえば、お師匠様のベッド、なんかぽよんぽよんするんだよね。あれってどうやって作ってるんだっけ。なんか聞いた記憶があるけど思い出せないなぁ、うーん。


「よし決めた! まずは簡単に図面を引くところから始めよう!」

「あ、あたしはアンタと同じ部屋でいいからね!?」

「できれば姫様に一部屋ご用意して差し上げたいのだが……」

「儂は別に工房でも良いのじゃが。ベッドが作ってもらえるなら有り難いのぉ」


地面にお家の図面を書いては消して、こうして皆でワイワイ悩むのはなんだか嬉しい。

お家の材料は、平屋ならあの船の残骸の材料で多分足りると思う。

でも小屋を大きくしただけじゃ格好悪いよね! もうちょっとおしゃれ……な才能は僕にはないから、みんなの知恵を借りよう、うん! そうしよう!


お家の間取りの話し合いは、結局日が暮れるまで続いた。

辺りが暗くなって、慌ててご飯の準備をし始めたくらいは熱中してたよ。

え? パンの生地?

もちろんキノコみたいに膨らんでたよ! 今日の夕食も無発酵パンだね!

い、いいんだ! イースト菌はたくさん獲れるから!


……しょぼん。

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