滋瑠との付き合いかた 視点――篠宮美緖
「
朝練後のロッカールームで既に制服に着替え終えた六海ちゃんが、突然よく分からない事を言ってきた。私は何のことを言ってるのか分からないよと首傾げながらシャツのボタンを止める。
「いや、石川さんのことなんだけど」
「ん、滋瑠ちゃんのこと?」
つまりは滋瑠ちゃんとあたしがどうやって友達になったのかって言いたいようだけど。ウ~ン、どうやってと言われてもちょっと困るなぁ。あのジョイフルでのドリンクバーの一件辺りからと言われても今度は六海ちゃんの方が首を傾げちゃうのではと少しだけ考えてから応える事にした。
「いやぁ〜ぁ、普通に友達になれたとしか言えませんね」
「答えになってねえなぁ」
六海ちゃんは苦笑混じりに首を横に振る。いやいや、そうは言っても私だって嫌われてるて勝手に勘違いしちゃってたけどさ、普通に友達になれたて言うしか無いんだもの。
「ていうかさ、どうして急にそんな事を聞いてくるのか不思議さっぱりなんだけど聞いていい?」
「あぁ、いやさ、あの子とは同じA組じゃんかよあたし」
そうだね、滋瑠ちゃんと六海ちゃんは同じ進学クラスのA組だよ。普通科B組で成績もクラスど真ん中くらいな私よりも特別難しい勉強をしているんだろうなて考えると二人をかなり尊敬な眼で見てしまうよね。
だけど、同じA組だって事とどうやって友達になったかて話とがどういう……あ。
「もしかして、六海ちゃんも滋瑠ちゃんと友達になりたいてこと?」
「まぁ、友達の友達ならさ、あたしも友達になれるんじゃないかなって軽く思ったわけなんよな」
なるほど、合点がいったて言うのはこの事だね。うんうん、二人も友達になってくれたら私もとっても嬉しいよ。
「でもなぁ、石川さんは話し掛けようと思ったらいつの間にか教室から消えちまってるし、いざ見つけてもなんか近づかないでくれオーラが凄いというかなんというかさ。妙に近づけないんだよね」
「ん〜、近づかないでくれオーラとかそんなの私は感じた事は無いんだけどなあ」
どうも、滋瑠ちゃんの事を誤解してそうだよね六海ちゃん。滋瑠ちゃんはとってもいい子だから、誤解されたままていうのはちょっともったいないよね。よーし、ここは私が一肌脱いで。
「だったらッ、私が間を取り持って――」
「――いやぁ、それはやめた方がいいと思うよぉ」
仲良くなるきっかけを作れたらって、仲良し計画を提案しようとしたら隣で制服に着替え終えた凛ちゃんが
「え、なんでどうして?」
「う〜ん、その子と同じ卓球部の子と溶接とかの実習授業でよく一緒になるんだけどぉ」
凛ちゃんはこのフワフワとした間延びした喋りとギャル寄りな見た目からはまるで想像できないけど
凛ちゃん意外にC組で目立った友達はいないから、C組での交友関係はまるでわからないんだけど、どうやら滋瑠ちゃんと同じ卓球部の友達がいるらしい(ニュアンス的にクラスメイトてだけかも知れないけど)。それと滋瑠ちゃんとの仲良し計画をやめた方がいいというのとは何の関係があるんだろうか。
「この前、その子になんとなぁくその石川さん? の事を聞いてみたんだけど「アイツにはアイツの
「じ、ジー……てなに?」
「そこもよくわかんないけどぉ、その子も何か好きなゲームに例えて会話するから聞き出すのも頭で翻訳しながらだから難しいんだよねぇ。あの子もあの子で独特な世界観を持ってるて感じかなぁ。その子ぽく言ったらシャドウミ――いけない一瞬影響されかけてるぅ」
凛ちゃんがよくわからない事を口走りながら頭を抱えている。その卓球部の子も何だか凄い子ッぽそうだね。何となくだけど。
「とにかく、その石川さんには自分の世界があるから、あまり入り込まない方がいいって言ってたんだと思うんだよぅ。だから、六海ちゃんが無理に近づこうとすると、反発心が強くなって近づくなオーラてのが出るんじゃないかなぁって、そんな予想」
身だしなみがいい感じに纏まったのか、ロッカーミラーの前で頷きつつ凛ちゃんはあたしと六海ちゃんに顔を向けて人差し指で顎を触りながら予想だよと強調して言った。
「ま、今はヘタに近づかない方がいいて事ね。そう考えると、美緖があの子と友達になれたのって凄いんだな」
「す、凄いのかなぁ」
「ん〜、でもシバちゃんの話からすると石川さんの方は友達というより――」
「――コラおまえらッ! いつまでダラダラ鍛えてんだ朝礼サボる気かッ!!」
話を続けていると、扉の外から山中先輩のカミナリが飛んできてあたし達は身体をビクリとさせて時計を見て目を丸くする。
「すいません、すぐ出ますぅッ」
「美緖悪い、お先ッ」
「ああっ、裏切り者ッ」
二人はまだ完全に着替え終えていないあたしを置いて、ダッシュでロッカールームから出ていく。あ、あたしも早くしないと遅れちゃうし、何より山中先輩のカミナリ二発目が落ちてきちゃうんですけどッ!?
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