硝子は見えない
なんとなく、息苦しくなった。乾いたアスファルトの上でタップダンスを踊る。たまに小走りする。飛んでみる。疲れて立ち止まる。座り込んで、また立ち上がる。口の端から小さな水のあぶくが上がった。ふわふわのぼっていって、それは星になった。
大きな水槽の中で、かすかな明かりをたよりに静かに泳いでいる。水圧でつぶれた花が散って流れていくのを時折横目に見る。空はすこし濁っていた。宇宙では雨でも降っていたのだろうか。視線の先の街灯の光もぼやけて見える。空気が汚れているんだろうか。路面は私の影を落としていた。歩き回っているから焼け付くことはないだろう。ふと、大きな音を立てて赤いサイレンが隣を走り抜けていった。なんでもないささやかな不幸の隣にはもっと大きな不幸がある。いっそ、何もないだけましかもしれない。
また空を見上げる。大きな月がぷかぷか浮いていた。左手からぶら下げたポリ袋の擦れる音がしゃらしゃらと無機質に響いている。大きな月は流れに流れて水面の隅へと追いやられた。クラムボンってなんだっけ。あれって、死んだんだっけ。
悴んだ手に息を吹きかけて、月と逆行してまた歩き出す。明日は雨が降るらしい。洗濯物、乾くだろうか。
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