スケッチ:十月某日の夢
夢の中で、俺は葬列を見た。
あるものは生きたまま吊るされ、ある者は磔にされて事切れ、ある者の下半身は朽ちて無くなっていた。暗闇の中、僅かばかりのガス灯に照らされたその情景は地獄と呼ぶに相応しいものだった。乾いた路面を悠然と進む馬車の車輪の回るこれまた乾いた音と、滴り落ちる血の溜まっていく様などは見るに絶えなかった。
次に神は俺を呼んだ。眼前に立って、俺に生きる意思を尋ねた。
いくら冷たい目で人生を見ていたって、俺は痛いのは嫌いだ。だからスプラッタ・ホラーを直視できても、己の四肢にそれが食い入る様など想像したくない。水面に沈められた恐怖は今も消えない。だからと言って、生きていたくもない。生きていく上で受け続ける責め苦を、死んでゆく最中に感じるそれと較べてしまう程には息苦しくて痛くて苦しい。
だから俺は楽に死なせてくれと答えた。
神は暫く俺を覗き込んだ後、赤黒く汚した口角を上げて悍ましい笑みを浮かべた。それで、俺の頭を両の手で潰した。
そこで目が覚めた。まだ時計は一刻も回っていない。
取り返しのつかない過ちを以て、今少し苦しめというのが神の思し召しなんだろう。
楽に死ぬには、俺の贖いは足りていないらしい。
ああ、本当に気分が悪い。
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