Ya, world was mine

 例えば街灯の下でふと後ろで自分ではない影が動いた気がしたとか。例えば側溝から聞きなれない音が聞こえたとか。例えばシャワーの吹き出した水滴が重力で叩きつけられている間、後ろに誰かの視線を感じたとか。

 いつだって誰かが私を見ている。誰かの家の塀の裏側、カーテンの向こう側、太陽が照りつけて見えない星の隙間、視界に収まらないどこか、可聴領域の外、可視光線の範囲外、目の前。

 閉じこもっても無駄で、耳を塞いでも耳鳴りがして、眠っていても夢にまとわりついてくる。信心なければ神も悪魔で、星の明かりが点に空いた覗き穴に思えて仕方がない。たしかにこの人生は私のものであったのに、いつの間にか足がついた、監視下に置かれた、私のものではなくなった。

 世界が世界であるうちに、私の居場所はどこにもない。逃げたって所詮は檻の中で、常にどこかしらから目が行き届いている。いつだって誰かが私を見ている。嘲りも憐れみも持たず、ただじっと見ている。私にはそれが不愉快で堪らない。

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