抑揚の無い暮し
しかしながら、変った環境に身を置くというのもなかなか悪くないもので、昨日は商店街を見て回るうちに余計な物を幾つか買い込んでしまった。昼間だって、この人は何を買っていそうだとか、この子供はどこの子であろうだとか、足元を駆け抜けた猫はどんな貴婦人に飼われているのだろうだとか、そんなふうな具合に好奇の目をどこかしこに向けていた。ところで本日は篭城戦をと考えていたが、よく考えなくとも飯がない。
ふと、灯りを求めて飛ぶ蛾が目の前を通り過ぎ、街灯に近付き、気に入らなかったのか結局別の方へと羽を向けてしまった。道沿いには春目前、時期相応の風が吹いている。先週に私に風邪を引かせた冷酷たる北風殿にも、
やがて家から掴んで出た袋を膨らませてから、元来た道を引き返す。少し前まで居たよく知る道ならばこう独りで退屈することもなかったのだが、今更それを
というふうなことを
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