第4話 新学期
高校2年の春。
あのお姉さんが町を出て、1年が経過した新学期。
眞奈は別クラスだ。
さっさと3組の教室に向かう背中を、ほんの少し見送ってから教室に入った。
俺の座る席は真ん中の最後尾。隣の席は……
有坂って、あの有坂家?
『有坂家に入れば安泰だ』
父さんの言葉が頭の中に浮かぶ。
急いで後ろを覗くと、既に男子数人が席を囲んでわいわい騒いでいる。
「帰りにバスタ寄ってこ、勇人も行くだろ?」
「ゲーセンも行こうぜ、青原さんも誘ってさぁ」
放課後の遊び場所に有坂を誘っているみたいだが、純粋な友達なのか、家の都合なのか分からない。
隣がこうだと非常にうるさい。
とはいえ咎める勇気もないので、こっそりと賑やかな隣に座る。
着席と同時にスマホから通知音が鳴る。
『今日、映画観たい』
眞奈から。映画を観たいと、俺は視線を横に逸らして「ふーん」と零す。
「うん! どこでもいいよ! でも小夏は店番あるから無理かもしんない」
元気の良い、気持ち中性的な声が輪の中から飛び越えて聞こえる。
眞奈に返事をしてからスマホをしまい、隣を覗くがやっぱり姿は見えない。
「はいはい席についてー」
チャイムとともに担任が入ってきた。
クラスにやんちゃな奴はいないようで、みんな素直に返事をして席につく。
ようやく有坂勇人の姿を拝めるようになる。
「う……」
それとなく隣を覗いてみると目が合ってしまった。
担任が進行中だから声には出さないものの、有坂が際限なく輝く太陽のように眩しい笑顔を浮かべている。
咄嗟に目を逸らした。でも微妙に気になるので、結局横目でちらっと覗いてしまう。
俺よりか短めの黒髪で、耳周りと襟足がスッキリとした清潔感溢れる髪型だ。
ブレザーのネクタイをしっかりと締めている。
第一印象は太陽のようなお坊ちゃん。
「それじゃあ今日はこれで終了です。明日から通常の授業が始まるからねぇ」
観察している間に担任の話が終わってしまった。
ウズウズと今にも喋りかけてきそうな雰囲気が、眩しい圧として襲ってくる。
このまま話しかけられたら、さっき有坂を囲んでいたやつらにも絡まれるかもしれない。
俺はかつてないほど手際よくカバンを掴み、滑らかに椅子を机にしまった。
早足で廊下に出たが――
「待って待って!」
「いっ」
追いかけてきた……。
「オレ、有坂勇人! 君は大河で合ってる?」
うぅ、初手からぐいぐい来る。
「あ、あぁうん。三崎大河です」
俺の方が背が高いのに、つい背中を丸めてしまう。
「ねぇねぇせっかく隣同士になったんだから仲良くしよう! よろしく! 大河って呼んでもいい? オレのこと勇人って呼んで!」
眩し過ぎる。人懐っこいオーラに思わず後ずさる。
「あ、あぁー……い、いいよぉ」
愛想笑いってやつを意識してみるが、口周りがビリビリして非常につらい。
「おーい勇人、何やってんの置いてくぞー」
階段近くで固まるグループに呼ばれた有坂勇人は「また明日!」と言い残して笑顔で去っていく。
助かったぁ。なんなんだアイツ、真っ直ぐ過ぎて俺の体力が半分ぐらい減った気がする。
これも有坂家の力とか?
「勇人?」
今度は品のある、優し気な女子の声が聞こえてきた——。
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