第四話 幕開き
「これで最後、ですよね。っと…………上官殿!
楠音はスリングに繋がれた20式を背面に移してから、事後処理に追われていた。途中参加の彼らも一応は手伝ってくれていたのだが所属がまだ別なので進捗は芳しくなく、リーダーを残して先に帰ってしまった。
ぴくり。屍の山、GSSh-01ヘッドセッドにブルパップライフルといった高級品を身に纏っている男が動いた。バリスティック・プレートのご加護により生き残ったのだろう。懐のRSh-12リボルバーを咲耶に向けた。
「
一発だけ、もうほとんどまぐれみたいな弾丸が咲耶目がけて直進する。着弾寸前で頭を振って回避、射手にお返ししてやった。
「あー、ご無事ですか?」
彼女は軽く会釈する。楠音は自分の目を疑った。なんたって弾丸が射出された後にそれを避けたのだから。現在二人は死体のフリをして抵抗する者がいないか、屍の脳天を穿ち確認する作業中であり、恐れていた最悪の事態に遭遇した。はずだった。それを咲耶は何気なくクリアしてみせたのだ。驚異的な反射速度。もはや人間のそれではない。楠音は彼女のことを、これから人のフリをする化け物だと思って接することにした。
マガジンを引き抜き、遊底を動かしてアンロード。片手でキャッチしようとしたが失敗。拾ったパラベラムを戻すのもなんだか億劫になってきたので、腰上のポーチに捩じ込んだ。ふと敵対勢力が待ち構えていた、廃れたガソリンスタンドの方角を眺める。荘厳なクーリング・タワー。どこからか桜の花びらが迷い込む。目で追っているうちに、ひとつ聞いてみたいことができた。なんてことないように問う。
「木花さん。武官辞める時って考えてます?」
「できなくなった時」
ヘルメットのライナーが割れていないかチェックする咲耶に、楠音は少し経って、意を決したように。
「こんなことばかり続けてると、僕たちロクな死に方できなくなりますよ」
こちらに振り返る。
「負ける気、ないから」
◇ ◇ ◇
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