第23話 盗賊を迎え撃った

「それをこれら説明する。黙って聞け」

俺は中断された話を続けるために村人の方に向き直った。そして、足元の地面に木の棒で一本の線を引く。

「まず10人。この線に沿って一列に並べ」

村人たちはガヤガヤ言いながら12人が一列に並んだ。2人がはみ出して列の後ろにいる。

「10人と言っただろう。そこの2人、はみ出しているから、列から離れて元に戻れ」

はみ出していた2人は不承不承、列から離れた。村人達には全員2メートルほどの長さの木槍を持たせている。節くれだっていたり、反りや歪みがあったりして見てくれが良くない木槍だが、横一列に並んで構えれば、たとえ村人達の隊列とはいえ、正面から突破するのは難しいだろう。

「全員、同じ構えにしろ。そこの奴、脇が空き過ぎだ。もっと体に近付けて持て」

右手で、後ろから3分の1位の処を持ち、肩幅位開けて左手で前側を持たせる。

「体は左側を前にして腰だめで槍を持て。そのまま腰を落として、突撃しろ」

10人の村人が槍先を揃えて突撃する。しかし、慣れない事をすると、足の速さがまちまちなので、あっと言う間に列が乱れ、槍衾でなくなってしまう。

「最後まで横一列を維持しろ。でないとカンタン に抜かれてしまうぞ」

その後、何度も繰り返してやっと横一列を維持したまま突撃出来るようになった。

「これから作戦を伝える。皆、集まれ」

村人たちが集まると、

「いいか、この槍衾は横に避ける敵には強いが、上下に避ける敵には弱い。だから、槍衾隊は、前列10名、後列10名で構成する。後列の槍衾隊は、前列の攻撃から上か下に避けた敵に穂先を当てるように動け。後列は、前列の間から槍を突き出すだけでいいぞ。上に避けた奴は向こうから刺さって来るし、下に避けた奴は、動きを止めたら後はみんなで突け。これから、その訓練をする」


こうしてみっちり槍衾の訓練をした数日後、盗賊が村にやって来た。

「来た。来た。奴らが来た」

門で見張りをしていた二人の村人が、大声を上げながら村の広場に駆け込んでくる。

「よし、出るぞ」

俺たちは村長の家から広場に出た。

まず、俺が中央の先頭に立つ。

俺の右斜め後ろにトゥデラ、左斜め後ろにドゴーが控える。

50人の村人もそれぞれの家から出てきて、トゥデラとドゴーの直ぐ後で、それぞれ10人の槍衾隊2列になって待機する。村人は全員が粗末な木槍を持っている。


俺たちの前に50人ほどの男達がやって来て、30メートル程手前で足を止めた。

「ふん、用心棒を雇いやがったのか?」

盗賊の先頭に居る奴が、ふん反り返ってなんか言ってるが、俺はお構いなしに奥の手の見えない矢で、そいつを射た。俺の最大戦力である弓のスキルはレベル7、熊をも倒す見えない一撃を受けて、そいつは後ろに倒れた。


「突撃」

まず俺が、鉄の盾を前に付き出し、見えない武器を全て体の前に出して、盗賊達に突っ込んだ。

そのすぐ後を、トゥデラとドゴーが駆け出し、それぞれ2列の槍衾隊が続く。

スレイは、村長の家の屋根の上から、魔法が使える盗賊の後衛を優先的に矢で倒していく。

俺は盗賊の集団に飛び込んで、敵の前衛陣を押し込みながら、盗賊の集団の真ん中まで血路を開き、そこで仁王立ちになって、盗賊達の攻撃を引き付けた。

もちろんその間に見えない武器で攻撃しまくっている。実際の鉄の盾と、2つの見えない盾で身を守りながら、まず、見えない槍で前方の2人を同時に貫き、見えない剣で右側の敵の太ももを斬り、見えない戦斧で左側の敵の腕を斬る。見えない弓矢で、中衛、後衛の魔法使いを射抜き、威力が増したウィンドカッターで、無差別に顔や首を斬り裂いていく。

盗賊の数人が俺の後ろに回り込もうとして動いたが、そこに、左右から、トゥデラとドゴーが、村人の槍衾隊を率いて突っ込んで来た。

村人を舐め切っていた盗賊達は、俺の横をすり抜けて村人に斬り込んでいったが、数人は、訓練を重ねた槍衾の餌食になった。

盗賊の何人かは上に跳び上がったり、槍の下を潜って、槍衾を避けたが、後列の槍衾の餌食になった。

後列の槍は、突き出す威力はなかったが、飛び上がった奴等は、ことごとく避けることが出来ずに、自分の勢いで槍に刺さって大怪我をして地面に墜ち、槍の下に潜った奴等も槍に当たって動きの止まったところを村人の槍の餌食になった。

トゥデラとドゴーがそれぞれ4~5人を倒し、村人の槍衾隊は7~8人の盗賊に大怪我を負わせた。

トゥデラとドゴーとその後続の槍衾隊を避けて後ろに回り込んだ盗賊は、スレイの矢とルージーとその槍衾隊に手こずっている。

俺が、盗賊の中央で武器を振るっている間に、盗賊達で立っている者は僅かに10名程になっていた。それに気が付いた盗賊の生き残りは、慌てて逃げ出したが、スレイの弓と、俺の見えない弓で、全て倒した。

大怪我をしている盗賊達は、トゥデラとトゴーの指揮で、村人達に縛り上げられていった。

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