第14話 再度の襲撃

ルートヒルト視点


国境の砦ヤヌツンクを目指した商隊は解散した。一見すれば今回の遠征は失敗だったが、それはあくまでも正面から見た場合だ。今回の遠征にはもう一つの側面がある。他の2人の商人と違って、私はヤヌツンクの領主から招聘を受けていたからだ。こっちの面では、まだ失敗していない。

盗賊の襲撃は予想されたので、腕利きの護衛を雇ったまでは良かった。問題は盗賊の規模だ。人数が多過ぎた。

リュート殿がいたから生き延びたが、他の護衛だったら助からなかっただろう。しかも、護衛の数を絞ることを提案してきたのは、他の2人の商人、サドカイとメンデラだ。その上で、サドカイの護衛隊は2人も死んで壊滅した。自滅としか言いようがない。

このままクライムの街に戻っては、ヤヌツンクの領主様の怒りを買いかねない。かといってこのまま進むとしても、リュート殿の護衛料を1日銀貨5枚という訳にはいかなくなった。そういえばアールという弓使いは、メンデラに雇われていたと言っていたな。料金がいくらだったのか聞き出して、その料金と合わせるか。アールも雇うと負担が大きいが、盗賊がまだいるなら戦力としてぜひ欲しい。

私はまた馬車を降りてリュートとアールと話し合うことにした。



「アール殿、少し込み入ったことを聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」

「内容にもよるけど、どんなこと?」

「実はリュート殿の護衛料を検討し直さないといけないんですが、その参考に貴方がメンデラからいかほどの料金を貰っておられたか教えてほしいんです」

「メンデラとは、1日銀貨15枚の契約よ」

「高いですな。他の者はいくら貰っていました?」

「他の者は、1日銀貨3枚ね」

「随分と開きがあるんですね。他の者から不平は出なかったのですか?」

「護衛は互いの契約を知らないものよ。雇う方も教えたりしないのが常識でしょう」

「今まではリュート殿とルージー殿を併せて1日銀貨5枚でしたが、先ほどの戦闘で評価を変えざるをえなくなりました。そこへ、あなたを雇うとなると。私の懐もそれほど余裕があるわけではではない。リュート殿は1日銀貨20枚、アール殿は1日銀貨15枚、これが私が提示できる限度です。後はリュート殿がどう考えるかです」

「彼が銀貨5枚?それはいくら何でも安過ぎるわね。先の戦闘での働きを見ると銀貨30枚は必要じゃない?」と、アールが俺に代わって答えた。

「銀貨30枚。そんなに支払っては、私の利益がなくなってしまう」

「サドカイとメンデラが抜けた今、ヤヌツンクと商いすれば、言い値で商いできるはず。大きな利益が出るのではなくて」

「どうやら、商いに通じておられるようですな。確かにサドカイとメンデラが抜けた今、競争相手がいない分大きな利益が期待できます。分かりました。リュート殿とルージー殿、合わせて1日銀貨30枚、アール殿は1日銀貨15枚で契約しましょう」


ルートヒルトは、再びヤヌツンクを目指す決断をした。

俺達は、直ぐに、盗賊に襲われた時の作戦を立てる。盗賊の攻撃で怖いのは矢なので、倒した盗賊達の鎧から鉄製の部分を集めて、全員の防具を強化する。俺が囮になって前に出るので、特に俺の鎧を鉄で補強した。また、俺は、戦利品の中で一番大きくて分厚い盾を選んで持つことにした。

更に、馬車の前部と側面に盾を並べ、身を隠す場所を確保した。

これだけの準備をして、翌朝、再び宿場村を出る。

馬車にアールが乗り込むと座席が足りなくなるが、ルージーの席を詰めて、女二人で一つの座席に座っている。

一昨日、盗賊に襲われた場所まで来たが、もう盗賊は出ず、次の宿場村に無事に着いた。

ここまで来れば行程の半分を超えたことになる。

次の日は、昼になる前に気配察知が働いた。

今度もかなり居る。

馬をやられると困るので、馬車から馬を外し、サリデンとガレックの2人に馬を任せて、かなり後方へ下げる。

俺以外は馬車の前面に並べた盾に隠れる。

俺は大きな盾を左手に持ち、囮となって前に出ていく。

馬車から100歩程前に出たところで矢が飛んで来た。

俺はしゃがみ込むように盾の後ろに身を隠し、奥の手の弓で応戦し、後衛の射手や魔法を撃ってくる魔法使い達を倒していく。1対数十の戦いだが、盾から身を出さずに矢を射るアドバンテージは凄まじく、一方的に相手を倒していく。

盗賊の前衛たちが、接近戦なら勝てると勘違いして突っ込んでくる。すると俺の後方からアールの矢が飛んできて前衛たちを倒していく。

盗賊の前衛たちは犠牲を出しながらも俺の所まで辿り着いた。俺は盾を身体の前面に引きつけて矢と魔法を防ぎつつ、奥の手を全開にして盗賊を倒し始める。


スキル 奥の手(短剣、盾、戦斧、弓、剣、槍、大盾、癒し魔法、風魔法)、短剣術4、盾術3、戦斧術3、弓術7、剣術4、槍術3、大盾術2、癒し魔法1、風魔法1、気配察知6、生食5、身体強化5


離れての戦闘では奥の手の弓があり、近接戦では見えない剣、槍、戦斧を身体強化レベル5で繰り出し、接近しすぎた相手は見えない短剣で対応している。

更に、現実の大盾と、見えない盾と大盾で防御しており、反応できない攻撃はない。


この前の戦闘で奥の手が増えている。今度の腕もスペルブックを持っていて風魔法が使えた。攻撃魔法が使えると戦闘の幅が一気に広がるが、まだ試していない。




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