第11話 キラーベアは金になる
キラーベアは、この世界で目覚めて間もない頃に出くわして、一目散で逃げた相手だ。あのときは機転を利かしてなんとか仕留めたが、成長した大きな奴とはまだ正面から戦っていない。
あれから俺の奥の手には、癒し魔法のスペルブックを持つ手が増えている。
スキル 奥の手(短剣、盾、戦斧、弓、剣、槍、大盾、癒し魔法)、短剣術4、盾術2、戦斧術2、弓術5、剣術2、槍術1、大盾術1、癒し魔法1、気配察知5、生食5、身体強化4、
スキルが増えて、それぞれレベルも上がっているが、あまり使わなかったスキルは上がっていない。当たり前か。それと新しい奥の手が生まれにくくなっている。
かなり離れたところから、奥の手の弓で射る。弓術のレベルが5に上がった矢は、キラーベアの厚い毛皮を貫いた。
キラーベアはいきりたってこちらに突進してくるので、すれ違うように相手の突撃を避け、奥の手の槍で首を突く。以前はリーチのある奥の手がなかったが、今は槍がある。身体強化レベル4で繰り出した突きは、キラーベアにかなりのダメージを与えた。さらに戦斧、短剣、長剣で首に集中攻撃を加え、盾と大盾で爪による攻撃を防ぐ。
反撃を抑え込み槍で首を5〜6回突き刺すとキラーベアの動きが鈍る。その首を戦斧と長剣で一気に切り裂いていく。遂に首の骨が見え、その骨を戦斧で断ち切ると大きな頭がガクッと垂れ、巨体が地面に崩れ落ちる。そのまま攻撃の手を休めることなく、遂に首を完全に切り落とした。
ようやくキラーベアを倒したが、キラーベアは持ち帰るのは時間がかかった。
キラーベアを運ぶには普通なら荷車が必要だが、そんなものを森の中には持ち込めない。若木を数本切り倒して蔓で縛り上げて担架のようなものを作り、それに乗せて、片方だけ持ち上げて引きずって運ぶ。荷車がない場合、1トンを超えるキラーベアを森の中から運び出すのは、その方法しかないらしい。
それでも俺が身体強化を持ち、ルージーがドワーフ特有の怪力でなければ、運べなかったところだ。
俺とルージーで、右と左で分けて持ち、何とか引きずって運んだ。
幸い、キラーベアの臭いがするだけで、他の魔物は近寄ってこない。
街に戻ってきたのは夜になったので、街の門が開くまで門の前で夜を過ごした。
翌日になったが、魔石と素材を合わせて金貨1枚で売れた。これで手持ちの金が、金貨2枚と銀貨40枚になった。
早速、武器屋に行き、ルージーに手に合う武器を選ばせると、先端にスパイクが付いた鉄のメイスと鉄の丸盾を選んだ。金貨1枚と銀貨50枚が飛んだ。残りの金では胴鎧が買えなかったので、胴を保護するコルセット型の簡易鎧を買った。残りの手持は銀貨20枚にまで減った。
宿に戻り、身体を拭いた後、ルージーを抱き枕にしている。
「手持ちの金がほとんど無くなった。明日から、また、頑張って稼がないとな」
「はい、武器と鎧を買ってもらった分働きます。あっ、うんっ」
俺の愛撫にルージーが色っぽい声を上げる。疲れていても、そんな声を聞くと元気になってしまう俺がいる。
次の日も朝から森に入る。今日の課題はルージーが新しい武器に慣れることだ
気配察知にゴブリンが引っ掛かった。新しい武器の試運転にもってこいだ。
6匹のコブリンにルージー一人で突っ込ませる。ルージーはメイスと盾を上手く使って、またたく間にゴブリンを殲滅した。
「ホントに強いな。素でやり合ったら俺より強いんじゃないか?」
「何を言ってるんです?旦那様の方がずっと強いに決まってます」と、ルージーは取り合わない。
俺の奥の手はルージーには見えないから、そんな風に思うのも仕方がないかもしれない。とはいっても俺のスキルを説明する気はない。このスキルは人に知られるとヤバいと直感的に感じるからだ。
ゴブリンの魔石を取り、森の奥へと進む。
今度はグレーウルフだ。15匹以上の大きな群れだ。
今度は俺も手伝う。
まず、ルージーを群れに突っ込ませる。ワンテンポ遅れて俺が突っ込んでいく。
ルージーは左手に持った盾を正面に掲げて先頭のグレーウルフを弾き飛ばすと、周囲の奴の頭をメイスで叩き潰していく。
すぐ後に続いた俺が、ルージーの後ろに回り込もうとする奴らを奥の手で叩いていく。
ルージーの右側から足首に噛みつこうとする奴がいた。
ルージーは左側と正面のグレーウルフに手いっぱいで気付いていない。俺は奥の手の剣でそいつを払う。
ルージーも足を狙われたことに気が付いて、すぐ後方に移動して俺の横に並ぶ。
そこからは俺が左側のウルフを、ルージーが右側のウルフを分担して倒していった。
「ちょっとヒヤッとしたな。数が多いと立ち回りに気をつけないといけないな」
「足元に気が付かなくてすみません」
「謝らなくていい。無理をさせたのは俺だ。ルージーのことは俺が守るから安心しろ」
「はい、ありがとうございます」
ルージーが俺を称賛するまなざしに、
「こうして実戦の課題が分かったのは成果だ。連携の実験だと思ったらいい」
と、照れ隠しに言葉を続けた。
出発までまだ3日あるので、もう一度キラーベアを倒し、金貨をもう1枚稼いだ。
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