第25話

「……す……凄~い……なんか、色々贅沢というか、なんというか……」






どうリアクションをとっていいものか判らなくて、曖昧な言葉を漏らすに留めてしまう。





そんな私の狼狽など気にとめず、おじさんは部屋の中央のテーブルセットまで歩み寄り、猫脚の椅子の上に私のバッグを置いた。





「そちらのドアがバスルーム。空調機の使い方はシンプルだから問題は無いと思うけれど、分からなければいつでも呼びなさい。事前に届いた荷物は全て隣の空き部屋に運び込んである。その部屋で少しずつ荷解きをして片付けなさい。怪我をするといけないから、箱ごと部屋へ運びたい時はちゃんと申し出るように」





あっけに取られて突っ立っている私の前で、おじさんが淡々と何かを言っている。





けれど、彼のその事務的な言葉の殆どは、私の頭の中を右から左へ通り抜けていくばかり。






「色々……どうも……です」





ここはお礼を言うトコロだ、という事はなんとなく雰囲気で判断できたので、私はとりあえず頭を下げた。





そんな私の言葉と態度を、喜びの意と解釈してくれたのか……彼は満足そうに微笑んで、





「……ああ、それから……これを……」





そう言いながら、私に向かって小さな紙を差し出した。





受け取って見てみると、そこには携帯の電話番号とメールアドレスのようなモノが書かれている。





「急遽、連絡先が変わったので。今後は何かあったらこちらの方に連絡しなさい」





「はい」




事前に教えてもらった番号は消去していいのだろうか、と、一瞬迷ったけれど、私は、質問はせずにコクリと頷いて見せた。






「じゃあ、おやすみ」





おじさんはそう言って踵を返し、出口へ向かって歩き出した。





「お……おやすみなさい……」





ぎこちなく答え、メモをポケットにしまいながら、おじさんの後姿をじっと見送る。





そして、閉ざされたドアの音を合図に、私は大きく息を吐き出した。

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