第138話
「あ……あのっ」
私が震える声で呼びかけると、背を向けていた佐々木さんは振り返り、副理事長先生と呼ばれていた男性は伏していた視線を上げた。
「えっ!?や、安原さんっ?ちょっと……どうしたのっ?」
佐々木さんは私が突っ立って涙を流している事に驚いたらしく、ギョッとして駆け寄ってくる。
だけど、私は……。
佐々木さんの問いかけに応える事もできないまま、佐々木さんの向こうに立っている彼を見つめ続けた。
声をかけても……。
じっと見つめても……。
彼は訝しそうに眉をひそめているだけで。
セリカとは、呼んでくれない……。
絶望に慄いた身体からは、急速に力が抜けて。
視界が暗転したと同時に、私は、石畳の上に両膝を打ち付けていた。
何故、彼がケイにそっくりなのか。
何故、ケイにそっくりなのに、私を見ても無反応なのか……。
今は、その疑問をどうする事もできない。
頬にあたる石畳の冷たい感触と共に、漠然と認識できていたのは。
この偶然の連鎖がきっと必然なのだという事。
それは、渇望していた再会ではなく。
ただ、真相を探る道筋の……その遠く険しい事を、私に突きつけただけの。
残酷な符合でしかないという事だった。
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