第134話
「あんな高いところから……。捻挫で済んだのは……なんていうか、不幸中の幸いですよね。その、お友達の方は大丈夫だったんですか?」
「友達の方は転んだけど落ちなかったし、手すりの部分におでこをぶつけただけだったみたい」
佐々木さんの言葉に、一気に肩の力が抜けた。
「良かったですね……2人とも軽い怪我で済んで……」
私の言葉に、にわかに顔を曇らせて、佐々木さんは俯いた。
「……うん。うちの子の方はもっと大きな怪我をしていたはずなんだけどね。階段の下が深い茂みになっていたというのもあるけど……その時偶然下にいた副理事長先生が受け止めてくれて、頭と腰を打って即入院……。もう、私、自分の子の事より、副理事長先生の事が気がかりで、頭がおかしくなりそうだった」
しみじみ悩ましそうにぼやいた佐々木さんの横顔を見て、私は既視感に襲われていた。
……ああ、そうだ。
給湯室で佐々木さんと話をしていた時に、彼女が見せた浮かない表情。
子供の怪我が治ったと言っている割りに悩ましそうだったのが、ちょっと気になっていたけれど。
それは、下敷きになった先生の容態が心配で、心が晴れなかったからなのだろう。
「その、先生は……今は……」
私は最悪のケースを想定しながら、恐る恐る問いかけた。
すると、佐々木さんは、両目を閉ざして深く頷き、口元を微かにほころばせた。
「うん……幸い怪我は軽かったみたいで、年末には退院できたんだって。だから……今日、改めてお詫びにうかがったの」
「そうだったんですか、良かったですよね~」
小学校一年生の男の子の平均的な体重が何㎏なのか解らないけれど、少なくとも20㎏ぐらいはあるだろうし……。
そんな重さの人間が降ってきて、それを受け止めて、軽い怪我で済むなんて……本当に奇跡的。
階段下の深い茂みに、グッジョブ!って言ってやりたいぐらいだ。
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