第131話

「えっ、佐々木さんっ?」





「うわ~、びっくりした……何で安原さんがいるの?」




「あら、お知り合いですか?」





小野先生と呼ばれた女性は驚いた様子で、私と佐々木さんの顔を交互に見比べている。




佐々木さんはコートを抱えたまま、私の前まで進み出てきた。




「私と同じ会社なんですよ~。安原さんに似てる人がいるな~と思ったら、本人なんだもん、ビックリ~。」




「わ、私も……驚きました。えと……佐々木さん、どうして……」




「えっと……ちょっとご挨拶に、ね。うちの子、この幼稚園の卒園児なの。安原さんこそ、どうして?」




「あっ、えと……バザーの事で……でも、もう、失礼するところだったんです。じゃあ、本当にすみませんでした。失礼いたします」




私は矢継ぎ早にまくし立てて、小野先生と佐々木さんに向かってヘコヘコと頭を下げながら、じりじりと後ずさりをしていた。




なんだか良く解らないけど、とにかく今は、退散するに限る。




後ろ手にドアを開けて、満面の笑みを浮かべて退出しようとしたその時、佐々木さんが私の傍に駆け寄ってきた。




「あーっと、ちょっと出口のところで待っててよ、私もすぐ帰るから……」




そう、親しげにいわれては、断れるわけがないし……この状況じゃ断る理由もない。




私は強張った笑顔のまま、カクカクと頷いた。




「あっ、はい……ええっと、じゃあ、先に外に出てますねっ。失礼します」




小野先生に会釈をして逃げるように事務室を後にすると、背後からは、佐々木さんと小野先生の話し声が聞こえてきた。




けれど、今の私には、それに聞き耳を立てている余裕なんてなかった。

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