第125話
辛うじて、新年早々休暇を取るような事態は避けられたけれど、病み上がりの身体にムチ打って出社したのはさすがにキツかった。
それでも、職場にいる間はケイの事を考える暇もなかったので、家に居るときよりは元気に振る舞えていたような気がする。
そんな状況だったからか、景山さんとすれ違う事があっても、何の感情も覚えなかった。
ケイを失ったのも、元はと言えば景山さんがあんな事を言った所為だって、短絡的に逆恨みをする事もできるけど……。
例え、怒りや恨みという感情であっても景山さんを頭の中のどこかに住まわせる事を、私自身の本能が拒絶しているという感じだった。
会う人会う人から心配されて、同期の男の子からは「死相が出てる」とすら言われた私だけれど、熱が下がってから一週間が経過した今は、体力も大分回復してきている。
主任や矢野ちゃんに心配かけまいと、食堂であえて栄養価の高い食事を摂っていた事が、功を奏したのだと思う。
ケイと会えなくなってからは、夕食を抜いてしまう事が多くなったけれど、無理矢理でも昼食をしっかり摂っていれば、なんとか生きていられるものだ。
なんかもう、仕事と社員食堂と職場の人達に生かされている、という感じ。
私の負ったダメージなんて知らず関せず、当然のことのように私を真っ当に生かし機能させようとする。
勤めている会社にそんな威力があったなんて……ビックリだ。
……というか、今の私が、殊更そう受け止めてしまうだけの事で、会社も会社の人達も何も変わってはいないのだけど。
それでも、私にそう思わせるだけの影響力は、確かにあった。
事が事だけに、誰に相談できるわけでもない現状で……私をここまで立て直してくれたのは、仕事と社員食堂と職場の人達である事は事実だ。
身体の方が立て直されると、不思議と気力もついてくるもので。
このままではいけないという、いくらか前向きな思念が心の中を占めるようになって。
ついに、とある決意を抱くまでになっていた。
その決意とは、電気ストーブの前の持ち主を探す事。
今の私に残された、真相に近づく為の最後の道だった。
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