第118話

「そっか……何か分かるかも……っ」




なんで今まで思いつかなかったんだろう。




膝を抱えてストーブの前に座っていて、ケイが再び姿を現すのを待っている事しかできないと思っていて。




自分からケイの素性にアプローチする事をすっかり失念していた。




実在する生身の人間ではない以上、単純な人捜しというわけにはいかないだろうし、その努力の殆どが無駄になりそうな気はするけれど。




ケイが『君の傍に』と望んで、偶然ではなく私の前に姿を現していたとするなら……ケイと私には接点があったのかもしれない。




調べることに限界はある。分かっている。




だけど、このまま何もしないよりは行動を起こした方がマシだ。




『え、なに?……どうかした?』




意味不明な呟きと共に黙ってしまった私を、電話の向こうの亜里沙は訝んでいるようだ。




「ううん、なんでもないよ。ホント、ごめんね、折角誘ってくれたのに。彼にもよろしく伝えてね」




言いながら、いてもたってもいられなくて。




私は携帯を耳にあてがったまま、急いでクローゼットの前に歩み寄り、そのドアを開けていた。




早くアルバムと名簿を探したい……。




『うん。じゃあ、またメールするからね。良いお年を~』



耳と肩で挟んだだけのアンバランスな携帯電話から、亜里沙の元気な声が響く。




「亜里沙も良いお年を……。じゃ、またね」




彼女の声の調子に合わせて言いながら、私は、無理な体勢のままプラスチック製のケースを引っ張り出した。

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