第101話

『何かあった?』





私の視界の隅で、ケイがベッドの上に頬杖をついた。





光に伴うぬくもりが、私の鼻先と枕元を微かに温め始めて……。





その方向に恐る恐る視線を移すと、彼は心配そうに私を見つめていた。





不意に感情が高ぶって、泣いてしまいそうになって……。





私は、それを紛らわすべく勢いよく起きあがり、ベッドの上にペタリと座った。





「別に。……ただ、そういう事、言ってみたい気分だっただけ」





そう私が答えると、ケイはおもむろに立ち上がり、私の隣に腰を下ろした。




彼のその静かな行動が、私の気持ちを煽り立てる。





何かあったのか、なんて、訊かれたら……胸の中にため込んだ不安をぶちまけてしまいそうになる。





どうすることもできないような不満まで、彼にぶつけてしまいそう……。





『やっぱり……何かあったんだろ?……凄く思い詰めた顔をしていたし』





「…………っ」




顔をのぞき込まれ、私の心音が大きく跳ねた。




『話してくれないと、俺も不安だよ』




真剣な眼差しと声音で、そう、責められて。




心の中の様々な負の思念が堰を切ったように溢れ出し、私は堪えきれず唇を開いていた。





「……すごく……くだらない事なの……」

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