第100話

『…………それは夏になってから考えよう。……とにかく、手、洗って、うがいを………って、あっ、おいっ?』





私は、ケイの保護者ぶった指示を無視して、彼の身体を強引に通り抜け、べッドの上に倒れ込んだ。




別に、手洗いとうがいをするのがイヤだったのではなく……。




頷いてくれない上に、話をうやむやに終わらせようとした彼が、少し腹立たしく感じられたから。




伏せた視線とその言葉が、遠回しに拒絶を表しているような気がして……ショックだったから。





『セリカ?』





無言で枕に突っ伏している私の耳元で、ケイはそっと囁いた。





「……も、いい。……帰るなり、変な事言ってごめん」





枕の上に頬を預けて、うつろな視線はケイの顔からそらしたまま、私は抑揚のない声を漏らしていた。





ごめん、とか言って、全然気持ちがこもっていないのが……自分の言葉ながら幼稚で呆れる。




客観的に誰が見ても、彼を責めているとしかいえない態度だ。





こんな事、彼を不快にさせて、困らせるだけだって解っているのに……。





止められない……。





消えない不安が、私の理性を蝕んでいく……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る