第5話 望みの果て
第98話
仕事納めにかこつけた有志の飲み会を欠席して、私は終業のチャイムと同時に職場を後にした。
昼間の一件で気持ちは沈んだまま……とても飲み会に出席できるような精神状態じゃなかったというのもあるけれど。
とにかく、1秒でも早くケイに会いたかった。
景山さんにあんな事を言われて気持ちをかき乱されてしまったけれど、ケイに会えば、全て忘れてしまえる様な気がしていた。
この前の夜のように、疑念や不安はとりあえず脇に置いておいて、現実逃避してしまえばいい。
そうすれば、この虚しさからも逃れられるに違いないと思っていた。
部屋に駆け込んで電気ストーブをつけて、いつものように彼が姿を現したのを確認して、私は大きく息をついた。
『お帰り。………走って帰ってきたの?』
「うん、早く会いたかったからっ。ただいま、ケイっ」
なんとか笑顔で答えたけれど、本当は、彼の笑顔を見て泣いてしまいそうだった。
ぐっと堪えて、コートを着たまま彼の身体に寄り添うと、ケイは広げた両手で私を包み込んでくれた。
温かい。
ぬくもりも、眩しさも、いつもと同じ。
大丈夫。
彼は変わらない姿で私の前にいて、私を温めてくれる。
きっと、これから先も……。
春になったって、夏になったって、私は絶対にこのストーブを片づけたりしない。
さすがに猛暑の頃には、会う時間を減らさざるを得なくなるだろうけど、毎日ストーブをつけるつもり。
ケイに会えなくなるぐらいなら、この部屋の室温がサウナ状態になった方がマシだもの。
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