第91話
あの日以来、面と向かって景山さんと会うのはこれが初めてだった。
もう一週間以上も経っているというのに、私の潜在的な部分には、彼から受けた侮辱的なダメージは深く刻まれたままで。
景山さんを避けていれば、どうにか封じる事ができていたそれが、一気に私の脳内にしみ出てしまって。
私は、配布物の入ったファイルをきつく抱きしめ、身体を強張らせながら通路の端を通り過ぎるのがやっとだった。
「彼氏……出来たんだって?」
すれ違いざまに声をかけられ、思わず身をすくめて立ち止まる。
無視して立ち去るべきか、頷くべきかを迷って、身動きがとれない。
強張った私の顔は、多分、能面のようになっているだろう。
ファイルケースを抱える両手の掌が、緊張の余り汗ばんでいる。
何も言わない私を訝しく思ったのか、彼は、ふっ、と鼻でせせら笑い、私の前に回り込んできた。
「嘘……なんじゃない?」
「な……っ、違いますっ」
私は裏返った声で、景山さんの言葉をすぐさま否定した。
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