第87話

「……呼んでるって、誰が?………他に、何も言われないの?」





たたみかけるような私の言葉を受けて、彼は1つため息をつき、その顔に優しい微笑を浮かべた。





『分からない。闇の中での記憶は曖昧で……。この程度の話だから、あえて言わないでいたんだけど……かえって不安を煽ってしまったなら……ごめん』





「ううん、ううん、そんなことないっ。話してくれてありがとうっ!」





穏やかな表情の彼とは対照的に、私は平静ではいられなかった。





ストーブが消えている間の彼がどういう状態でいるのかを、知ることが出来て。




彼の名前が【ケイ】かも知れないと分かって。




でも、彼を呼んでいる【誰か】は、謎のままで。




彼を闇から引き上げる人は、私じゃ無くても良かったのかもしれなくて。




この現象も、いつまで続くのか解らないままで。





驚きと、不安と、寂しさが一度に押し寄せてきて、私の頭の中をかき乱す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る