第84話
『君がストーブを点けていない間は、俺は闇の中にいる』
床にへたり込んだ私の身体を包みながら、彼はおもむろに語り始めた。
そんな事、初めて聞いた。
私が聞かなかったから、言わなかっただけだろうけれど……。
いきなり、私の知らない彼の世界を明かされて、心の中がざわめき立つ。
「……闇………。それって……いつから……?」
彼の胸から顔を上げて問いかけると、彼は何かを思案するように視線を泳がせ、それから唇をゆっくりと開いた。
『随分と前からという気もするし、そうでもないような気もする。時間の概念が……無いのかもしれない』
時間の概念が無い闇の中なんて……。
そんな怖いところに……一人きりで?
このストーブが消えるたびに、彼はそんなところに引き込まれてしまうの?
「こ、怖いね……そんなの」
思わず漏らした私の呟きに、彼は、ふふ、と小さく笑って、首を振った。
『いや、そうでもない。夢を見ないで眠っているようなものかも』
何でもないことのように言うけれど、もしかしたら、私に心配をかけたくないからそういうそぶりなのかもしれない。
本当は、言いたくなかったんじゃないだろうか……。
なのに、私が、不安だって言ったから……。
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