第81話

彼が楽しそうで私も幸せなんだから、そんな事はどうでもいいって、そう思う自分と。





この非現実的な現象がいつまで続くのかが不安で、真相を突き詰めずにはいられない自分と。





頭の中では、それらが同じ割合でせめぎ合って、結局、彼に訊ねられずに終わってしまう。





それがいつものパターンだけれど、今日はなんとなく後者の気持ちが強まっている。





彼から話をしてくれるのを待った方がいいとギリギリまで葛藤しながらも、私はついに唇を開いた。




「ねぇ」




ローテーブルを挟んだ向かい側でテレビを観ていた彼は、画面から私へと視線を移す。




『ん?』




「……まだ……何も思い出せない?」





私の突然の問いかけに、彼は、一瞬眉をひそめると、




『……どうしたの、いきなり』




そう、苦笑しながら聞き返してきた。

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