第79話

「残ったら明日も食べるからいいのっ」




わずかに下降したテンションと、それに反比例するように浮き上がった胸の痛み。




それを払拭する為にわざと口調を強めて言い放ち、私は、ケーキの箱をローテーブルの上に置いた。




『太るよ?』




「大きなお世話だよ。それより、外、すっごく寒かったんだけど……」




彼の皮肉めいた笑顔を睨み上げ、ムッとした顔で訴える。




真一文字に結んだ口元は、すぐさま綻び始めてしまうけれど……。




あえて機嫌を損ねたフリを続けてしまうのは……彼に甘えたいという小さな我が侭。





彼は、そんな私を窘めもせず……。





この上もなく優しい笑みを湛え、いつものようにその両腕を大きく広げて、




『おいで』




優しい声で私を招いた。

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